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知る・愉しむ~日本の器 in TOKONAMEイベントレポート 準備編

2020年に「一般社団法人 知る・愉しむ~日本の器」を設立し、作り手と使い手を繋ぐ様々な企画で大いに盛り上がろうと思っていた矢先に直面したコロナ禍・・・
とはいえ、リアル対面イベントが出来なかったからこそ、オンラインイベント「うつわのわ」を企画開催し、日本中の作家さんや器ラヴァ―さんと交流が出来たり、ずっと構想していたオンライン講座も背中を押されるかのように実現出来た事は、不幸中の幸いだったのかもしれません。

さてそんな中、先月の事ですが様々なご縁が実を結び、急須の名産地「常滑」にて、知る・愉しむ~日本の器 in TOKONAMEを開催し、素敵なゲストの方々と共にリアルイベントを開催しました!

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急須と言えば「常滑」、常滑と言えば「急須」という事はかなり前から色々な方から聞いていて、いつか訪れてみたい場所の一つでした。
愛知県の知多半島に位置する常滑は、瀬戸、備前、信楽、丹波、越前と並ぶ六古窯の一つであり、土管や甕などの工業用品を多く作っていました。
他の産地は山に囲まれているのに対し、常滑は知多半島の海に面しているので、海運で日本全国に運搬が可能だった事や海外との交流も盛んに行われた事でその文化を築き上げてきたと言えます。
今でこそ「急須の常滑」として有名ですが、常滑の街を歩いているとその歴史を目の当たりにします。

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常滑を代表する観光名所となっている「土管坂」
これは、意図して作られた物ではなく偶然、両隣の住居が甕と土管を積み上げて壁にした結果、この坂道が出来てしまったという・・・・(笑)
街にはいたるところに土管や甕などが転がっていたり、積まれていたり、ちょっとクスっとしてしまう場面に出くわします。

土管

さすがにこの壁は意図的に作られてたと思いますが、こんな風景に囲まれている街、それが常滑です。

また、トイレやタイルで有名なINAX創業の場でもあり、創業者伊奈長三郎の先祖はかつて常滑の陶工の一人でした。フランク・ロイド・ライトが設計した帝国ホテル旧本館の外装タイルも彼が監修し常滑で焼かれたものです。今も常滑の街にはLIXIL(旧lNAX)の工場が多数あり、タイルやトイレなどが作られてる工業の町とも言えます。

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常滑で急須が盛んに作られるようになったのは、実は江戸末期で歴史は200年程度と意外にも浅いのです。
急須では世界最高峰と言われる中国・宜興(ぎこう)から伝わり、常滑の田土が煎茶との相性が良い事で急須が盛んに焼かれ始めたそうですが、この時期上流階級が中心だった煎茶文化が、庶民の間にも広まったことも所以しています。
その後、量産化に成功した萬古焼に一時的に生産量が抜かされるものの、常滑焼もその品質を保ちつつ量産化することで、現在の地位を築いています。

今回、不思議なご縁で常滑に関するお仕事が何故か複数重なり、この秋にかけて何度か常滑を訪問させて頂きました。
様々な産地に行く度に毎回感動するその街の歴史と文化ですが、常滑も例外ではありませんでした。
 

まずは、急須を轆轤で挽くその伝統工芸士の技は大げさではなく涙物の神業です。轆轤で急須の身、蓋、注ぎ口、取っ手を挽き、それをピタッと合わせるその技術を間近で見れた事、また常滑の作家さんの多くは、お茶の事をよく熟知されていて、日本茶に限らず、茶文化に深い中国茶の事までも研究されています。

作家さんが淹れてくれるお茶

作家さんが振る舞ってくれるお茶は、本当に見事なお点前でしかも絶妙な味わい…
そして、お茶を淹れながらのトークがとても巧みで博識で面白過ぎる。これは常滑の一つの文化と言えると思います。

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下見をさせて頂いた中で、この2点、急須の轆轤挽きの見学と、職人さんが振る舞うお茶のお点前、これだけでかなりレアで満足度の高いイベントになると確信しました。
また、常滑散歩道の何とも言えないレトロな可愛さもなかなかの必見です。

また、今回の企画は常滑散歩道の立役者でもある、常滑屋オーナー伊藤悦子さんのお陰で成り立ちました。彼女の常滑愛と人脈、そしてバイタリティがまた素晴らしく、彼女がいれば大丈夫!と安心して企画する事ができました。

つづく