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モノクロフィルムで撮ってきた

フィルム大幅値上げ

 大型連休明けの5月9日、富士フイルムが「写真フィルム製品の価格改定について」とのニュースを発表しました。各製品30%以上の値上げです。

 デジタルカメラの普及と携帯電話・スマートフォンに高性能カメラが搭載されるに至り、写真フィルムを使用して撮影する人は激減。

 フィルムで写真を撮り続けている人はまだまだ存在していますし、最近写真を始めた若い方の中には、フィルム写真の柔らかな描写(特にカラーネガフィルム)やモノクロフィルム写真の粒状性に惹かれてフィルムを使い、ブログ・SNS等でフィルム写真を公開しています。

 このような事象は大変心強いものの、やはり現在のフィルム市場を支え、これまでの価格を維持できるような量の消費は難しいでしょう。

 上記富士フイルムのニュースリリースに対するフィルム写真界隈の人たちの反応は、「がっかり」「残念」というよりは「フィルムをどう看取るのか」と達観していたように感じられます。

最初のカメラ

 私が写真を始めたのは11歳の時。修学旅行に行く前に父がカメラを購入してくれて撮影を教わったのがきっかけです。
 カメラは コニカC35 Flash matic でした。

 今で言うコンパクトカメラで、特筆すべき性能もなく、レンズは38㎜、最短撮影距離は0.9m、露出はEE(プログラムAE 自分で露出の調製ができない)という普及機でした。望遠機能もないですから憧れの人(いませんでしたが)を背景をぼかして綺麗に撮る・・こともできません。かといってグイグイと近寄ることもできない。それでも写真の基礎をこのカメラで覚えてきました。

 このカメラが最初のカメラで良かったと思えるのは「二重像合致式」によるピント合わせ機能を持っていたことです。

 実際には上記で紹介されているほどの性能ではなく、もっと簡易的なものだったのですが、それでもこの方式でピント合わせに習熟したことは二十数年後に役に立つこととなります。

モノクロ(白黒)フィルム

 その後も細々と写真を続けていましたが、本格的に再開したのは長女が誕生した直後からです。ご多分に漏れず「子供写真」(親バカ写真)です。当時(20年以上前)はまだまだフィルムカメラが健在でしたから、フィルム購入→撮影→現像(自家現像又はお店任せ)→印画紙に焼き付け(プリント作業)の繰り返しでした。

 使用頻度が高かったフィルムは次の3種類でした。

富士フイルム ネオパン 400 PREST (プレスト)

Kodak トライX

Kodak T-MAX

 いずれも当時は入手しやすいモノクロフィルムで冷蔵庫に5~6本は常備していました。特にKodakのT-MAXが好きでしたので、実質的にはプレストとTーMAXの2種類で回していました。なおこの頃の親バカ写真はコンタクトプリントとネガで保管しています。

テーマを決めて撮る

 月刊カメラマンの「我ら写真部」という連載 *1 の番外編で、「読者を募ってテーマを決めて撮影散歩をする」という企画があり、参加してみました。学生時代を除けばテーマを決めて集団で撮影をすることはなかったので、思い切って申し込み、そこから写真仲間ができました。

*1:全国の学校の写真部にプロカメラマンが訪問して部員と一緒に撮影し、その作品を掲載するというコーナー

 その後、そこで知り合った方々と「撮影散歩」や、共同での暗室作業、さらに富士フイルムなどのワークショップに参加することで、写真に対する様々なスタンスを学んでいくこととなりました。

 当時は「撮りたいものは特にない。どちらかと言えば機材(カメラ)に興味がある」という私でしたが、次第に写真撮影そのものに熱心になっていきます。しかし一方で「何が撮りたいのか」と自問自答してもぼんやりとスナップ写真かな・・という意識であり、何かはっきりした熱意があったわけではありません。ワークショップでの課題提出などにも迫られ、否応なくはっきりさせる事が必要でした。

28㎜相当

応援している人を撮影する

 私は写真の重大要素である「光と陰」に対する感覚を、残念ながら充分には持ち合わせていないようで、日常の風景にある光(と陰)を見極めてそれを画像に落とし込む、という意識や技量が欠けていると自覚しています。どちらかと言えば構図を作ることに対する意識が強く、そこ(目の前)にある光景を「構図の中に(熱量を奪って)納めてしまいたい」という欲求がありました。

 スポーツは、それをする人も観る人も「高い熱量」を発していると考えているのですが、その熱量を3:2(通常のフィルムにおける横と縦の比率)の構図の中に封じ込めて淡々としたものにしたかったのです。

 スポーツを撮影するにはそれなりの機材(特に望遠レンズ)が必要ですが、私は焦点距離50㎜ *2 より長いレンズを持っていません。

*2 焦点距離50㎜のレンズは「標準レンズ」と呼ばれ、このレンズで撮影された写真は肉眼で見たときの視野に近いと言われています。

 50㎜レンズ中心に撮影したい私は、サッカーを応援する人(サポーター)を撮影してみることにしました。2003年2月のことです。その前年、日本でワールドカップが開催されましたが、ドイツ対アイルランドでのロビー・キーンが決めたゴールを観た私はサッカーの魅力にとりつかれました。

 その経験からサポーターを撮ってみよう、という考えに至るのは自然な流れでした。しかし当時常用していたのはモノクロフィルムです。サッカーでは「色」が重要な要素です。日本代表であればブルー、ブラジル代表ならカナリヤイエロー、スペインは赤、国内リーグ(Jリーグ)でも浦和レッズは赤、東京ヴェルディは緑・・・などと色とチームは強く結びついています。モノクロでサポーターを撮影するとことは、これらの要素を無視してしまうことになります。

 一方モノクロであることで、(サッカー好きであれば)その色によって一瞬で判別できてしまう「(チーム等の)属性」を剥ぎ取ることが可能であり、ある種の先入観(当該チームに対する正負などの感情)を取り払う事ができるのではないか、その結果としてフラットな気持ちで「応援者たる自分(達)自身」を捉えてもらえるのはないか、と考えました。
 スポーツ観戦の経験が殆どなかった私は、チケットを購入することから調べ始め、スタジアムに通うことになります。

撮影準備

 機材はカメラ2つ。メインには50㎜F2.0のレンズ、もう一つは28㎜f2.8レンズ固定のコンパクトカメラを使うこととしました。フィルムは夜間の試合も対応できるようにとISO感度400のもの。プレストかT-max400でした。
 T-max400の方が粒状性に優れ好みに近いフィルムでしたが、若干価格が高いためプレストを標準として使用してました。

 ゴール裏(応援専用席と考えていただければほぼ正解です)に行ってその姿を撮影するのですから、周囲になじまなければ迷惑を掛けます。撮影に行く試合のチームのチャント(応援歌)を事前にネットで学習し(当時はmidi音源などが主流でした)覚えて、かつ、当日は当該チームのグッズ(レプリカユニフォーム:高いので余裕があるときのみ購入)やタオルマフラー(首に巻くなどするマフラー:そこそこの値段なのでお手軽)を購入して、ゴール裏にいても浮かないようにして撮影に臨みました(当時はJリーグのチームの代表的なチャントはだいたい歌えるようにし、タオルマフラーは10数本所持していました)。

 50㎜をつけたメイン機はマニュアル機(機械式カメラ:ピントも露出も全部自分で設定するカメラ)でしたから露出計を使用しました。もっとも日が落ちてしまえばスタジアム内の露出はほとんど変わりませんし、何より当時の写真のお師匠さまからは「F2.0で60分の1で写らないモノはない、あとは気合い」と言われておりましたから、概ねその組み合わせで押し切っていました(本当になんとかなっていました)。

 ピント合わせも事前に見当をつけて撮影直前にファインダーをのぞいて最終調整ができていたので(今はできません)、露出・ピント共にマニュアル機でも不便を感じることはありませんでした。むしろサブ機の28㎜固定のコンパクトカメラの方がAF(オートフォーカス)で自動巻き上げでしたので、シャッターのタイムラグに慣れるまで使いにくい・・と苦しんだ記憶があります。

スタジアム写真(サポ写真)

 以下は「大四つ切」(11×14インチ)にプリントした写真を複合機でスキャンしています。自分でプリントした写真を見本としてプリンターさんに渡してプリントしていただきました。

 国立霞ヶ丘競技場 50㎜
すでに取り壊されてしまった国立競技場。球技専用ではなくトラック付きのフィールドですが、観客席での撮影がしやすかったスタジアムでした。競技場自体に緊張感があり、良いスタジアムでした。取り壊しが熟々惜しまれます。

埼玉スタジアム2○○2 28㎜
浦和レッズのホームスタジアム。サッカー専用スタジアムで客席の傾斜も角度が付いているため観戦しやすさはトップクラス。ちなみにスタジアムの名称は「2002」ではなく「にーまるまるにー」です。

国立霞ヶ丘競技場 50㎜
試合開始前の一コマ。Tri-Xでしたので少し粒状感が目立ちます。屋根の照明が特徴的で目立つのでこれをどのように画面に取り込むかを考えていたことを思い出します。

ヤマハスタジアム 50㎜
静岡県磐田市にあるスタジアム。撮影初期はこの「大旗」を綺麗な形で写し込むことに苦労しました。旗が綺麗に広がる・重なるタイミングを予測するようになりました。

国立霞ヶ丘競技場 28㎜
スタジアム内の通路です。ほぼ室内ですので露出の切り替えを忘れて失敗作を量産したことがあります。徳島ヴォルティスの決起集会。

NACK5スタジアム 28㎜
ゴール裏に大きく広げられる幕の中。初めての経験だったので新鮮な体験でテンションが上がったことをよく覚えています。シャッター速度を遅めにしてブレるよう撮影しました。後に日本代表ゴールキーパーとなる川島選手がまだ所属していた頃の大宮アルディージャ。この頃の川島選手はパントキックの時にちょっと跳ねる癖があったように覚えています。

 都内を中心に、やや遠方のスタジアムまで足を伸ばし、撮影を続けていくこととなります。1回の撮影で36枚撮りを4本使うペースでした。

 50㎜レンズは標準レンズであることは書きましたが、これが使いやすいかというとなんとも微妙で、様々な写真ブログでも50㎜は(好きなんだけど)使いにくい、という趣旨のことが書いてあります。使用する状況にもよりますが、私自身も「画角が狭すぎる」と感じることもあれば逆に「切り取りにくい」と思うこともよくありました。
 しかし、スタジアム内では50㎜が意外とハマることに気づきました。人工的な建築物の内部では、画角が狭すぎるとも切り取りにくいとも感じることは少なく、1m~5m程度の距離ではかなり使い勝手が良いのではと感じました。

 最短撮影距離が1mのレンズでしたから人や物のアップを撮ることは難しいですが、当時参加していたワークショップにおいて講師の写真家の方から「1m以内に近づいて写真を撮ることは(スナップなどでは)あまりないよ」と言われていたので割り切ることができていました。基本的にお願いして写真を撮らせて頂いていたので、1m以内の距離に入り込んでいくことは被写体の距離感からも不要だったこともあります。撮りたい写真によっては数十cm以内に寄れないと困るよ、となるのは理解してますが。

 撮影済みのフィルムは当初は自家現像していたのですが、時間が限られることと失敗したくなかったのでラボに出していました。自分で現像した方がプリントしやすいネガを作ることはできますが、サッカーの試合は週末=週末に撮影ですから、その間に現像まで終えることは負担が大きかったのも原因です。

 当初は新鮮な光景ばかりで撮るものはいくらでもあるとテンションが上がったのですが、撮影ポジションや時間帯が限られてくるのでバリエーションを広げることに頭を使うことになります。基本応援リスペクトの姿勢で臨んでいたので、撮影は試合開始前か終了後、試合中は自分もサッカーの試合を観る、ということで時間帯による変化を記録していくことに苦労しました。

 もっとも、サッカー観戦はスタジアム内だけではありません。スタジアム周辺でおこなわれるイベントや「スタグル」と呼ばれる飲食店の出店ブースなど、スナップとしての撮影対象としては様々なモノがありました。一方で写真仲間からは「スナップ」なのか「ドキュメンタリー」なのか、などの批評・感想をもらって、自分の撮影スタンスに悩むことにもなりました。(続きます・・)

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リュックを背負ってオーケー・オオゼキ・ハナマサを縦走。長ネギリュック刺し普及協会会員。 Alec soth/Alejandro Chaskielberg/トレラン/Mozart/J.S.Bach/ Max Richter/Perfume/マンガ/るるるの歌
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