高タンパク質ゴリラ食

「キング・コング」のような凶暴なイメージも流布していますが,ゴリラは比較的おとなしい草食性の霊長類です.たしかにオスもメスも筋骨隆々としていますが,ゴリラは肉を食べず,メインの食べ物は果実と葉です.

あれ,でもちょっと待ってください.果実と葉がメインの食べ物なのに,ゴリラはどうしてあんなに筋骨隆々なのでしょうか…? ただでさえ野生動物はぎりぎりの栄養状況で生きていそうなのに,どこからタンパク質を摂っているんだろう.

東山動物園 (愛知県名古屋市) のオスのゴリラ「シャバーニ」*1


タンパク質の豊富な葉

実は,植物の葉は比較的タンパク質に富む食物です.果実はカロリーが高い一方,タンパク質をあまり含みません.その不足分を埋めるのが葉のタンパク質です.実際,植物の葉のみを食べて生きるサルを広く調べた研究では,多くの種で十分な量のタンパク質を摂取できていることがわかっています*2.


ゴリラの食べ物

では,果実と葉をどちらも食べるゴリラでは,タンパク質は足りているのでしょうか? それを調べたのが今回紹介する研究です*3.Rothman博士たちの研究グループは,ウガンダのBwindi国立公園に暮らす野生のマウンテンゴリラについて,どんな栄養をどのくらい摂取しているかを調べました.

Bwindi国立公園では,マウンテンゴリラの食べ物のレパートリーが,行動観察によってすでに調べられています.果実の摂取量は季節的に変動し,ある時期には水分を含む重量で40%を超えることがありますが,別な時期には10%以下になります.残りの分は,タンパク質に富む葉が大部分を占めています*4.


マウンテンゴリラの食事は高タンパク

野生マウンテンゴリラの食べ物を栄養分析し,栄養バランスを検討した結果,果実が多い時期には,摂取エネルギーのうち19%程度がタンパク質から得られていましたが,果実が少ない時期には30%程度になりました.

現代人では,摂取エネルギーのうち15%程度がタンパク質から得られると良いとされ,この値が26−29%になると,栄養バランスが崩れてむしろ体重が減少してしまうと言われています*5 (参考: タンパク質の毒).果実が少ない時期には,マウンテンゴリラはむしろ過剰なほどのタンパク質を摂取していると言えそうです.


まとめ

野生動物は厳しい環境に暮らしており常に栄養が足りていない,といった印象を抱きがちです.しかし,タンパク質に関しては,十分かむしろ過剰な量を摂取できている場合も少なからずあるようです.葉という,一見すると栄養に乏しそうな食べ物にも,タンパク質が比較的たくさん含まれていたりするのです.

ただし,ゴリラ属のなかでも,今回紹介した研究の対象であるマウンテンゴリラは特に葉を多く食べ,ニシゴリラなどでは果実の摂取割合がもっと大きいことがわかっています.ですので,今回紹介した研究の結果がすべてのゴリラにあてはまるわけではない点には注意が必要です.

(執筆者: ぬかづき)


*1 本文で紹介されているのはマウンテンゴリラ (Gorilla beringei beringei) ですが,こちらの写真の「シャバーニ」はニシローランドゴリラ (Gorilla gorilla gorilla) という別な種です.ニシローランドゴリラはマウンテンゴリラに比べて,ずっとたくさん果実を摂取します.

*2 Ganzhorn JU, Arrigo- Nelson SJ, Carrai V, Chalise MK, Donatti G, Droescher I, Eppley TM, Irwin MT, Koch F, Koenig A, Kowalewski MM, Mowry CB, Patel ER, Pichon C, Ralison J, Reisdorff C, Simmen B, Stalenberg E, Starrs D, Terboven J, Wright PC, Foley WJ. 2016. The importance of protein in leaf selection of folivorous primates. Am J Primatol. DOI: 10.1002/ajp.22550.

*3 Rothman JM, Raubenheimer D, Chapman CA. 2011. Nutritional geometry: gorillas prioritize non-protein energy while consuming surplus protein. Biol Lett 7:847–849.

*4 Rothman JM, Dierenfeld ES, Hintz HF, Pell AN. 2008. Nutritional quality of gorilla diets: consequences of age, sex, and season. Oecologia 155:111–122.

*5 St. Jeor ST, Howard B V, Prewitt TE, Bovee V, Bazzarre T, Eckel RH. 2001. Dietary protein and weight reduction. Circulation 104:1869–1874.

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

9

記事一覧

これまでの記事をアーカイブしています。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。