共通テストに纏わる報道に触れて

 2月17日に,共通テストの問題作成委員が記述式問題に関する例題集を出版し,その後,複数の問題作成委員等が辞任していたとの新聞報道がありました。同日,大学入試センターから発表がありましたが,情報の機密性を理由に具体的な説明がありません。また,2月18日に行われた萩生田文部科学大臣の記者会見において,この件に言及がありましたが,大学入試センターの発表をなぞるだけでした。大学入試センターの発表には「作成途中であった第1回大学入学共通テ ストの記述式問題の内容を類推できるような情報は記載されていないことを確認」したとの記述がありますが,そのような見解の表明自体が入試問題に関する機密の暴露に相当します。公平性が大きく損なわれています。
 文部科学大臣(文部科学省)も大学入試センターも事の重大性を認識していません。あるいは,あまりに重大であるがため真実を公表できずはぐらかすしかないのでしょう。
 しかし,共通テストの問題作成委員が共通テストの問題集を民間業者から出版するなどの所業は前代未聞の不祥事です。大学入試センターおよび共通テストの信頼は地に墜ちたと言わざるを得ません。現在までに作成された共通テストの問題は破棄して作成し直す必要があります。
 共通テストについては,英語民間試験の活用と記述式問題導入が破綻し,既に実施の前提が大きく崩れています。さらに,問題作成委員が利益相反行為を犯すようでは,共通テストは実施を中止するしかありません(その間は,現行のセンター試験を継続するしかないでしょう)。これまでの作問体制を明らかにして,問題点を検証し体制を作り直す必要があります。
 共通テストの試行調査の問題には,明白な出題ミスや学習指導要領の範囲外の設問が含まれています。作問には民間企業が関与しているのではないかとの疑義もあります。
 共通テストに関しては,見送りになった記述式問題についても関与する民間企業の利益相反行為がありました。今般の入試改革に関しては,利益相反行為を目的に行われているのではないかと思わざる得ないほど過度の民間企業の関与があります。共通テストに限らず,主体性評価の利用を目的に設置されたJePの運営にも民間企業が関与しており,不正行為の懸念が指摘されています。入試改革(高大接続改革)そのものを中止して,日本のこれからの教育を考え直す必要があります。

                            文責:吉田弘幸

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?