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引き返すということ

新しい物ばかり追いかけていると、時々振り返ることが怖くなる。

今、未来だけが見えているとしたら、それは過去を、無意識の中に押し込めておきたいという思いの裏返しではないのか。

そんな仮説を秘めている。

できるなら、過去を意識的に振り返りつつ未来への理解を深めたい。

少しずつ。

忘れてしまわないように。そして過去から学ぶことができるように。

大切な物事を過去に忘れ置いたまま、小手先の未来を語る資格などないのだ。

往きつ戻りつの深化。これが物事を理解する上での私の理想的なスタイルだ。

漫画も。

「ブルーピリオド」という漫画を読んでいて、6巻まで来た所で1巻に戻ろうと思い立った。

6巻の巻末にあった作者氏直筆の文章に心が震え、あえて振り出しに戻る。作品をより豊かに感じるために。

1巻。主人公の目覚めと苦悩。対象を見ることと、対象を絵に描くことの間で懊悩する主人公を自分に重ねてみる。


一度読んだだけでは思いつくことのなかった試みだ。

表現ってきっと、ありのままとデフォルメの2択なんかじゃない。対象を壊さずに自分を極限まで表現していく、究極の追求なんだ。

二度読んで初めて、そんな悟りにも似た境地が、作品から浮かび上がってきたように感じた。

漫画の中で美術の先生は言う。
「努力できる人は強い」と。

私は努力しか出来ない。それは本当に強いのだろうか。

ここから先の人生で、そのことを証明したいと思ったりしている。




万事がマイペースの私には、先を急ぐより、こんなじっくりとした読み方が合っている。

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