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心とは裏腹に

ラノベのような装幀に驚いて、久しぶりに東野圭吾さんの作品を本屋で手にした。
パラパラとめくり、購入を決める。

前半は、美月の物語。
美月のテーマは性同一性障害。
しかしテーマとは別に私には、本当の自分じゃいられない苦しさが、文字を追う毎に迫ってくる。

どうか美月が心から笑える場所を見つけて欲しい。そんな切実な願いが心の底から湧いて来て、読むのを止めることが難しい位だ。
(予約していたメガネやさんもキャンセルした)

どうもその願いは、私自身のものらしい、と読み終えた今、気づき始めている。
嫌いなのに好きという。興味がないのにあるという。
ママ友地獄。
やっと抜け出したと思ったら孤独との戦いが待っていた。
心から笑える場所が見えなくなりそうな時は美月を思い出そう。行動力を。そして一途さを。

後半は友情の物語。

私はどうも友情というものがわからない。
わからないから、本や映画で、いいな、と感じた友達っぽい人の繋がりを、友情だと勝手に思っている。
友達もいるけれど、見せているのは自分の一部だ。

この本を読んで、私の考える友情の定義がまた一つ増えた。
それは、
「その人のために嘘をつくことができること。嘘が大きければ大きいほど、友情は深い。」

心とは裏腹の生活を強いられている人に、そして友情の多面性と共に生きる人に、是非読んでもらいたい小説です。


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