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「愛情=ケア」と考え行動してしまうことの功罪

上野千鶴子「女ぎらい」にガツンと殴られたので、最近はそのことについてばかり考えている。大きな本題とは逸れる部分になるのだが、現代社会において「女性」と「ケア」はあまりにも密接に紐づけられているため、女性たち本人もその価値観にのっとって行動してしまう。具体的には、「この人のことを愛していると伝えたい」と思ったときに、料理や掃除などでもって相手を労わってしまうということなど。(※メチャクチャなピンポイント要約なので詳しくは本を読んでください)

で、私はこれ、本当によくやってしまう。今は恋人と一緒に住んでいるが、その恋人が現在死ぬほど忙しく、私はまあ普通に忙しいくらいのレベルなので、なんとなく部屋をきれいにしたりなんとなく洗濯機をまわしたりする、部屋の維持をほぼ私がやっている。ベランダの草木の水やりもほぼ私である。相手の疲れがマックスになると、なんとごはんを作りはじめたりもする。

※ここからの話は、家事がほとんどできないカップルの話として聞いてください

※お互いだいたい帰りが遅い(飲み会、仕事などで)ので、基本的に朝昼晩家で食べてません。というわけで毎日発生する家事ルーティーンみたいなものがなく、洗濯はドラム式洗濯機が、掃除機はルンバがやってくれます

ちなみに私は小学校5年生くらいから母子家庭で(小学校に上がるころくらいに父が海外で仕事を始めたので実質は小1から母子家庭)、女3人で15年くらい暮らしていた。母が死ぬほど疲れて「もうやだ~~~」状態になっていたときも、私や姉は荒れ狂った部屋の状態をまあ普通レベルに戻すことで、母の爆発を防ごうとしていた。

こういう行動を、自分は「相手への思いやり」的価値観でやっていると思っていた。しかしこと我々カップルの話に限定して戻すと(男女というくくりで話すのには適さないと思うので)、私と相手の立場を逆転したとき、つまり私が死ぬほど疲れているとき、相手は私と同じようなことをしてくれるだろうかと思うと、たぶんしてくれないだろうと結論が出る。

そもそもスキル差がある。私も家事は得意なほうではないが、恋人はさらに得意ではない。そしてこれは彼の労働問題の話だが、彼は常に死ぬほど忙しく、私が死ぬほど忙しいときは彼も死ぬほど忙しい。以前「どうして私がこんなに疲れてるのにそんなトゲトゲした言い方をするの?」とケンカをしたことがあるのだが、結果「私が疲れているとき、お前も疲れているのだな…そしてお前はいつも疲れているのだろう…」という深淵をのぞき込む結果になった。

話を戻す。私たちふたりの間では、ピンポイントで見ればハッピーだ。相手は労わられてうれしい、私は好きな相手を労われてうれしい。しかし、これは繰り返せば固定化してくる。人間は慣れる生き物なので、愛情のつもりだったケアが、家庭内の役割として当たり前のものになる。そうしたときに、愛情もまとめてなくなってしまうのではないか。そしてそれって単純に性別役割分業の再生産なのではないか。それはやだなー。

また、「ケア=愛情」という価値観を内面化している場合、そして相手がそうではない場合、感情が逆転する。つまり私の側が、「相手は(私が望む)ケアをしてくれない」=「愛情がない」と判定する可能性があるということ。私の性格上全然ありうる。

それを防ぐにはどうするのか。(1)愛情を示すためのケアをやめる、(2)相手に愛情の意味のケアをしてもらう――ということになるだろうが、(1)は短期的に見るとカップル間の幸福は低下する。そして(2)は長期的な仕事になるうえ、その時間を確保できる人間なのか?と考えるとかなり疑問である。

書きながら思いついた(3)掃除や料理などのケアを、相手への愛情ではなく自分への愛情として行う というのはいいかもしれない。なんだかんだ自分だって、きれいな部屋だと気持ちよく過ごせるし、たまに野菜いっぱいのごはんを食べるとほっとする。ただこれは、本心から思えていればいいけど、たまーにやせ我慢的になる可能性があるな。

そして書きながら今答えにたどり着いた。(4)猫を飼い、愛情=ケアを猫に注ぐ これめっちゃよくないですか? 愛情が返ってくるのを期待しない相手(存在しているだけでいい存在)には、愛情という名のケアを注いでもつらくならないのではないか。現実問題、今の部屋が猫を飼えるかどうかはわからず、現実味のある話かはちょい不明だが、いま光明を得た気分です。

最近さまざまな「男性の生きづらさ」みたいな話を見聞きする機会が増えていますが、女性嫌悪や鬱屈から抜け出せた(あるいは抜け出す一歩を踏み出した)人のそばには常に猫がいた。「猫をなでる」ことの重要性をひしひしと感じている。これは猫をケアすることで、自分のケアもできているからなのでは…(これは逆もあって、猫がケアされていない環境ではセルフネグレクト状態になるんだと思う。ゴミ屋敷の多頭飼い崩壊とかはそれなので安易に勧めることはできない、できないが…)。猫、本当にすごいな。

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青柳美帆子

編集・ライター。現在はアイティメディアという会社で「ねとらぼGirlSide」というメディアを担当しています。好きなものは少女革命ウテナと麻雀。noteでは「よく暮らすこと」「Webメディアの話」を書いていきたいと思っています。

アオヤギさんたら読まずに食べた

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