インターネットの「ギャルを論破したい」「ギャルに認めてもらいたい」という2つの欲望

黒ギャルとオタクが宅飲みしたら意外と相性が良かったことが判明という記事が公開されバズっています。この記事は、アニメやフィギュアが好きな二次元オタク男性3人と、黒ギャル(?)3人に宅飲みをしてもらい、その様子をレポしたもの。

最初は警戒バリバリだったオタクたちが、案外気安くて楽しくお話してくれるギャルに心を許し、ギャルたちのほうも「つまんないギャル男と飲むより楽しい」と認めてくれるこの記事は、twitter上ではおおむね「いい話」として消費されました。

でも、私はこの記事がかなり苦手です。記事自体はとても面白い。でも、この記事をもてはやすインターネット上の空気がかなりつらいと思ってしまう。そこには、ギャルを特別なものとして見なし、色眼鏡で見るいっぽうで、その反転でギャルに仲良くしてもらいたいと思う欲望が透けて見えるからです。


インターネット上の「ギャル」は、二面性を持っています。

ひとつは、リア充やDQNの象徴としてのギャル。

2ちゃんねるのような場所では、ギャルは「俺らの敵」側の存在。そこで求められるのは、「敵」であるギャルを「俺ら」が成敗する物語。ギャルを論破したり、完膚なきまでにうちのめすエピソードが好まれます。

(こういうまとめが一番うまく機能しているのは生活板・既婚女性板なので、その辺りから引用します。同人板から拾ってこれたら一番いいので、もうちょっと探してみたいところ)

ギャルが「旦那の子どもをみごもったから、卒業と同時に結婚したい。別れてくれ」と家に突撃してきた(2012年)

ギャルに迷惑をかけられた話。バカで迷惑をかける存在としてのギャル描写。

【修羅場】娘の運動会に元嫁が来襲。31歳にもなってまつげバサバサのギャル系化粧の変な女になってた元嫁を撒くため猛レース(2011年)

困った女、こちらを困らせてくる存在としての「ギャル」要素。

B美「私ね、A彼君と寝たから!」 A子「そうなんですか。とりあえずお会計お願いします」 B美「馬鹿にしてんの?!彼、私の事が好きってよ!」(2009年)

清楚な美女が派手なギャルに勝つという一番典型的なパターン。

駅で迷惑ギャル四人が床に座り込んで騒いでた!すると一緒にいた友人Aがいきなりダッシュしてギャルのカバンに全力蹴り!!ギャル「なにしてんだテメーーーーー」(2014年)

ギャルの迷惑行為→「俺ら」の勇気ある行動→ギャルを成敗、というポイントをしっかり押さえている文章。


迷惑をかけてくる存在である、という一方で、ギャルには「普段自分たちが言えないこと、やれないことをあっさりとやってくれる」という「超越者」としての役割も求められています。

怖いギャルたちが友人を救ってくれた(2004年)

マジメ系の女子によるいじめ行為→ギャルが成敗。この書き込みの最後の文「実はおとなしそうにしてる人ほど性格が悪くてギャルの方がいい人だったりするなーと実感しました」は、超越者ギャルを見るうえでとても重要な見方。

イビられていたら「なにあれ、嫁いびり!?」 「うっわ、マジうけるんだけど!ドラマだけじゃなかったし!」(2009年)

見かけはギャルだけど喋ってみると意外と丁寧な言葉づかいをしている、というところもポイント。姑をぎゃふんと言わせるためにギャルが登場するケースは多い。

【ギャルママGJ】放置親子にロックオンされ即返品→目の敵にされ児童館でギャルママに愚痴られたが…(2012年)

迷惑行為をしてくる困ったママをギャルママが完全論破する。論破要員としてのギャル。

図々しいキチママをギャルが・・・(2009年)

いわゆるキチママ(キチガイママ)をギャルたちが論破していく。ギャル=情にアツい、上下関係に厳しいなど、ヤンキー賛美に近い理論が後ろに走っている。

満員電車に乗っていたら、近くのギャルが悲鳴をあげた。(2014年)

応用編。ギャルをDQNが成敗する、ひとつでふたつ楽しめる構成。

ネットの修羅場話やおかしな人報告は、「スカッとする」感じが求められます。つまり、迷惑行為をされた場合、その被害を報告するだけでは報告者が叩かれる(「なんで言い返さなかったの?」など)。そこで、言い返す、迷惑行為をぶちのめす「力」としてのギャルが求められます。

(この反論要員としての他者は、他では美人なオタ友、超有能な弁護士である幼馴染、実は仲のよかった豪邸に住むママ友、寺生まれのTさんなどといった形で現れます)


インターネットでは、ギャルは「怖いもの」とされる一方で、「あこがれるもの」として描かれることもある。鬱屈や屈折のある人々の気持ちを「スッキリ」させるために、ギャルは大活躍しています。

オタクとギャルものの中でもっとも欲望に忠実なのが、かなりバズった入ったサークルの「オタサーの姫」がウザかったからギャル投入した(2014年)でしょう。

これは、「俺らを翻弄する性格が悪くてブスのオタサーの姫」を、「性格がよくてかわいくて優しいギャル」が完全に崩壊させてくれる話。

ここには、「気に入らないものが成敗される(しかも最近アツいオタサーの姫)」要素と、「ギャルが成敗してくれる」要素と、「ギャルと仲良くできた」という要素がそろっていて、そりゃーインターネットではウケるだろうなという見事な出来でした(右往左往するカワイイオタクたちという要素もありお見事)。

「オタク」の層が広がったということもあるでしょうか。「入ったサークルの~」に限らず、インターネット上では「俺ら」という共同体はあまり機能しなくなっています。オタクはみんな仲間ではなく、むしろオタクだからこそ嫌悪する存在がいる。そのとき、同ヒエラルキー内では彼/彼女を批判する力が足りず、ギャルの力が借りられるのでしょう。

また、ヒエラルキーが上の存在である(ように見える)ギャルがこちらの味方をしてくれることは、自分の価値が認められる/高くなることにつながります。つまり、自分は何もしていないのにもかかわらず、ギャルがこちらの味方になってくれるだけで、自分の正しさが保障されるしくみになっているのです。


さて、話は最初に戻ります。大変話題になった黒ギャルとオタクが宅飲みしたら意外と相性が良かったことが判明は、まさに「怖いけどあこがれのギャル」が「オタクを認めてくれる」話。そうすることで、相対的にオタクがよいものに見えてくる仕掛けもあります。

これを面白いと感じるのは(もちろん記事の面白さ、6人の会話の面白さがベースにあるのは当たり前なのですが)、ギャルへの欲望をインターネットが持っているから。それは悪いことではありませんが、無批判にこれを消費する光景を見ると、じわじわつらさを感じます。


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インターネットの「ギャルを論破したい」「ギャルに認めてもらいたい」という2つの欲望

青柳美帆子

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