延びきった襟首のTシャツを着た小さな女の子は、何を思うのだろう

今日は外の曇り空と気温のギャップに困惑していた青鳥(あおどり)なのです。
曇っていれば寒い、そう思うのです。
が、今日はねっとりといやーな暑さなのです。こう、さっぱりとした暑さが好みなので、今日のお天気と暑さは結構、アンバランスだなー、なんて。

ふと、アンバランス、で思い出したのです。
夏の夜の蒸し暑い駅のホーム。
鑑定が終わって電車に乗り、乗り換えのホームで降りたのです。
皆一様に暑くて、どこかだらりとしたものがそれぞれの肌に張り付いているのです。
それは、汗、かもしれないし、遠くから見られている視線、かもしれない。
それとも。
まったく別の「なにか」に張り付かれているのかもしれない。
そんなムワッとして、不快な湿度と苛立ちのある、とある夜。

一組のカップルが目の前を歩いていたのです。
どこか遊びに行ったのか、有名なテーマパークの袋をぶら下げて、楽しそうにしているのです。
傍目からすると、まあ、鬱陶しいのです。
暑いのです、今。
汗が吹き出すのです、この夜。
ただ駅のホームの移動だというのに、外気にさらされている空間にいるのです。

じゃれあっているカップルに、視線を奪われるのです。
違和感を覚えながら。
なぜだろう、この二人は、おかしい。
その理由が、少し観察していてわかったのです。
すぐ側を、小さな女の子が、後れ毛をたくさん飛び出させている小さな女の子がいたのです。
体の割りにピンクの大きなリュックを背負っている小さな女の子。
その子が、そのカップルから少し離れて歩いているのです。
真後ろにいたり、斜め後ろにいたり。
前にいるカップルを気遣うように、窺うように、何度も視線を二人の顔に向けて歩くのです。

けれども、カップルは、一顧だにしないのです。その子が何をしていようが自分達の世界には存在しない、そんな態度なのです。

でも、なのです。

そのカップルと小さな女の子は、同じテーマパークの袋を持って歩いているのです。
もうひとつ気になったのは、男性の方が、その女の子を意識しているようなこと。
きっと、他の人は気がつかない。
その男性は、敢えて小さな女の子を見ていないこと。
見えないハズがないのです。これだけうろちょろして、小さな女の子は何度も顔をあげて見つめていたのですから。
そして、女性の方は、視線こそ寄越さないけれども、結構気配を察知している動きかたをしていることを。

男性は階段の手前に来て、女性の持っている袋を手にしました、自然に。
小さな女の子は、自分で袋をしっかりもって、一歩ずつ力強く登っていくのです。
誰の手も借りずに。

その女の子のTシャツの襟元は、延びきってダルダルで、正面のキャラクターのイラストも少し掠れていたのです。

関係性、なんてわからないのです。

でも、女の子がもう少し大きくなったら、今度はもっと軽々と階段を登っていけるはず、なのです。
何も気にせず、自分の思い通りに。

落ちもなにもない、そんな夏の夜の蒸し暑い日があったことを、こんな変な天気の東京の生息地域で思い出した青鳥、なのです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?