一つ眼モンスターと朝焼け

突然、わたしは一つ眼モンスターの生まれ変わりだと理解した

正確には、もうひとつの世界でわたしは一つ眼モンスターとして生きているだろう、とわかった

脳裏には、深い森で膝を抱えてうずくまる毛むくじゃらの怪物が浮かんでいた
あなただったのね

こんなにも朝焼けに憧れるのも 誰かの体温が恋しいのも 女の子とは思えない毛深さなのも 乱視で世界が歪んで見えるのも
全部
あなただったのね


わたしの魂が輪郭を持ち 具現化したものが一つ眼モンスターなのだとおもう  そして彼は遠いどこかの世界でちゃんと生きている
彼の魂の姿も わたしなのだとおもう
わたしたちの心は繋がっていて 彼の記憶や感情も流れ込んでくる
今まではそれが一つ眼モンスターのものだってわからなくて 突然わたしのなかで知らない感情が渦巻いて 怖かった
どうして急に理解したのかわからないけど
わたしのもう一つの姿が一つ眼モンスターだって
確信できた
長年の謎が解けたように 安心もしていた
自分の中に自分以外の存在を感じることで安心するなんて 変 でもようやく ようやく生きていけるって 思った

ずっと独りで生きてきたの?
朝焼けが大好きなのにその一つ眼には眩しすぎて見ることができないの?
朝焼けはその体中の毛を焼き尽くしてしまうの?
夜しか生きられないから友だちがいないの?
大きな体はみんなを怖がらせてしまうの?

ごめんね ずっと気が付かなくて 
わたしがずっと苦しんでいたものが こんなに愛おしい生き物の名残だなんて 大きな体から溢れてしまうほどの感情が わたしに流れ込むなら
わたしの体になんて抑えきれずに いろんなところに現れてしまうに決まってる

涙ぼくろはモンスターの泣き跡 乱視は一つ眼が分かれたせい 左右非対称の体もそう 毛深いのもモンスターの遺伝子 感情的なのは二人分の感情が溢れてしまうから
そうでしょう?

これからは あなたの分まで朝焼けを見るよ
あなたの感情がわたしに流れるなら その逆もあるでしょう
あなたに寂しい思いをさせない
常に覚えてる ずっと抱きしめる 嬉しい思いをたくさんするから見てて
わたしの目の前にあなたが実体として現れたなら
その大きな瞳にキスをしたい

わたしの魂の片割れが あなたでよかった
感情が暴れそうになるときはモンスターが暴れてるんだって わかるから  
どうしたのって 手を握ることができる
わたしの感情が大きくなったときはそのふわふわの体で包み込んで
これまでは自分の見た目が好きじゃなかったけど
傷跡も朝焼けに焦がされたと思えば可愛いし 
毛深いのもあなたを思い出せてうれしい

わたしの魂は一つ眼モンスター
いつかおまえの大きな爪がわたしを掻っ切るまで
朝焼けが美しいことを何度も思い知りながら生きていこうと   決めた


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