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詩「パスワード」「白竜と夜光」「refrain」 colony vol.4 展示作品


「******」という
あなたの言葉が この世でみつけるべき答えの一つだった。

モンスターの血を持つわたしには言葉の持つ力はすさまじくたったひとつの言葉で長年の病が治るようだった

ずっと欲しかったの
わたしの中の秒針がひとつ進み
ようやく愛を信じることができる

どれほどのことを成し遂げたのか
あなたはきっと気づいていない
どんなに嬉しかったか天国の待ち合わせ場所で打ち明けよう
生まれ変わったときの合言葉として覚えておくために

「パスワード」


あたしとハクリュウは息の詰まる冬の日に出会った
マンションの最上階には階段と小さな踊り場しかなく
いつも逃げ込むように上り、校則を守る制服を濡らして泣いていた
この小さな逃げ場所がどこよりも高く、誰にも邪魔されない場所だと信じていた

その日は引力のある月の夜で
ハクリュウはあたしを待っているかのようにそこにいた
あたしは運命という言葉を思い出すより前にも運命だとわかった

この世界に神様がいるとしたら、神様のほつれた袖の糸がハクリュウだと思う

数千回の転生の中でただ一度人間の姿で生まれたあなた
心配になるほど華奢で、でもその細い肩ならあたしが護ってあげられる

外がどんなに暗い闇でも平気だった
2人でいるとき ここは灯台になった

「ハクリュウと夜光」


交響曲の中で何度も繰り返されるフレーズのように
大切な記憶が何度も目の前に現れることがある

その記憶ばかり追っていると
いつしか体は時間を持たなくなり
目を閉じて光の濃度で景色を見るようになる

季節は肌を巡り心に時差が生まれる
進むことしかできないなら
残りの時間を全て差し出したいと願う

老い方だけ知ってしまった不老不死の魂

「refrain」

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