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古川麦【「Xìn」Release Tour 2022】(2022/8/12 三条木屋町 UrBANGUILD)

 記憶も朧げだけど今さら少しだけ書く、去年のライブの感想シリーズ。

 2022/7/6にリリースされた古川麦さんの3rdアルバム【Xìn】。前作【シースケープ】から4年ぶりの新譜で、その間に作られた楽曲たちは夏の曲だけではないはずなのにどれも涼しげで、まるで避暑旅行のような効能がある気がして夏の間のサウンドトラックの如くずっと聴いていた。
 その【Xìn】のリリースツアー京都公演をUrBANGUILDで観る。1か月間よく聴いたアルバムのツアーであることだけではなく、SSWとしての麦さんのライブを観るのが初めてだったので、とても楽しみにしていた。

 手元に残っているメモと記憶が正確ならば、アルバムと同様に[Angel]からスタート。アルバムを聴いている時は、とても繊細に描かれているのに難しく感じず優しいという印象だったのだけど、ライブはもっと直球を受けるように感じた。目の前にいるオーディエンスに真っすぐに届く歌い方をされるのだな、とも思う。
 【Xìn】のリリースツアーではあるものの、既存曲も織り交ぜながらライブは進む。アルバムの中でも一番好きだった[Weep]が前半のハイライト。特に(今回のリアレンジ版で追加された)ラップ部分の、たった16小節間の中でリリックだけではなくメロディ、声色、サウンドも含めて感情が遷移していくような様子は、何度聴いても飽きない。音源では淡々とした吐露から始まり、メロディの輪郭が出てきた辺りから次第に冷静さを失っていくように感じていたが、ライブで聴くともっと展開がスリリングで、切々と語りかけられるようで目が離せなかったし、最後のサビからアウトロまでのグルーヴ感もライブならではのものだった。歌詞を見ると冬の曲、夏に聴くと、蒸し暑い夜の繁華街で一瞬冷房の効いた建物の前を通る瞬間のような涼しさ、そんなイメージだったけど、ライブ版は涼しさよりも寧ろ熱っぽさの方が伝わってきた。

 中盤は「(音源ではメインボーカルを取る)角銅(真実)さんになったつもりで歌います」と始まった[Why]が、麦さんのボーカルだと新鮮だったのを覚えている。この曲の杉本さんのピアノソロはずっと聴いていたい。
 セトリはアルバム通りの曲順だったのかは忘れたが、同じく中盤では、[雪]でUrBANGUILDに居るのを忘れてしまいそうになったのが記憶に残っている。夏の京都なのに、雪景色。音源では麦さん自身がコーラスもされているが、ライブでは田中さんがコーラスをされていて、麦さんのボーカルと重なる瞬間がとても綺麗だった。
 あと、[Town of Light]も良かったなあ。千葉さんの跳ねるようなウッベの音が好き。
 
 終盤に差し掛かった頃、「アルバムのリリースツアーなのに、アルバムの曲を置いて新曲を」という嬉しい時間も。新曲から、アルバムラストの曲[Gomennasai]、最後は(これもアルバム収録外だが)[smile]と優しい曲が続いて本編終了、だったと思う。麦さんの曲たちは色んな音楽のエッセンスがそっと埋め込まれているので何曲続けて聴いても飽きないのだけど、[smile]はそんな印象を一曲にギュッと詰めたような曲だな、と思いながら聴いた。
 アンコールは夏の曲とのことで[シースケープ]、だったはず…([Summer Song]だったかもしれない…覚えてなくてごめんなさい、【シースケープ】からどちらかだったはずなんだ…)。後からTwitterで他の公演の感想を観ていると、毎回曲順を入れ替えていたらしく、京都ではこれがアンコールだったけど本編でやっていた公演もあるらしい。
 どんな終わり方でもなんとなく幸せで嬉しい帰り道になっただろうけど、その嬉しさも少し色が違ったはずだから他の公演も行きたかったな。特に、海辺のポルカ。どうしても都合がつかず見送ったのだが、海辺のポルカ公式アカウントが「神戸の海辺で、特別な一日を」「とても大切な一日です」という言葉と共にこのツアーの事をアナウンスしていたのを覚えている。

 終演後、全然言葉がまとまらなくて感想を何も伝えられず、「この夏、アルバムをずーっと聴いてます」というぐらいしかお伝え出来なかったのが心残り。因みにこの2か月後に十三で弾き語りのライブを観ることになるのだけど、その時も同様だった。
 麦さんのライブ、なかなかこちらに住んでいると観に行ける機会も少ないのだが、来月は偶然東京に行くタイミングで観れそうで、楽しみにしている。