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『ApartmentBand』が好き

 日テレで5月1日より放送を開始した『Apartment B』。SKY-HI日高さんが率いるBMSGの所属メンバーを中心としたアーティストやクリエイターが集う音楽番組で、セッションライクでラフなライブ演奏パートが一つの目玉としてアナウンスされている。

 全国放送では無いが、日テレでの放送が終了した直後にTVerでの配信が開始される為、エリア外でも観る事ができる。初回放送の5月1日は日テレでの24:59~の放送が終了後、25:29から配信されたので、本放送から遅れること30分後には視聴可能だ。

 普段滅多にテレビを観ない(なのでTVerの視聴方法も分かっていなかった)のに今回この番組が気になったのは、番組の目玉であるライブパートのハウスバンド「ApartmentBand」のバンマスを、ゴンドウトモヒコさんが務めるとのアナウンスがあったから(因みに本noteの直近の記事は全てゴンドウさんのお話です・・・)。
 ハウスバンドのメンバーは、ドラムがオータコージさん、ベースがLÄ-PPISCHのtatsuさん、ギターが松江潤さん、と、ゴンドウさんが普段から活動を共にされている顔ぶれ。私から見ると、ゴンドウさんをきっかけにその演奏に触れる事が出来た方々ばかりだ。

 ハウスバンドと共に、アパートメントを舞台にBMSG所属メンバーや、ALIのLEOさんや荘子itさんがセッションを繰り広げる・・・どんな様子なのかさっぱり見当がつかないでいたが、放送直前に日経クロストレンドに掲載された日高さんのインタビューを読んでいると、『tiny desk concerts』のイメージとのこと。分かりやすい例えだった。

 とにもかくにも、こんな機会でも無ければ地上波の音楽番組を観ることもBMSGのアーティストに触れることも無いかもしれない。ゴンドウさんをはじめとしたハウスバンドの方々を毎週という頻度で映像で観る機会だって、とても貴重だ。
 そんな訳で5月1日の初回放送、24:59から日テレでの本放送を観ていた他のゴンドウさんファンの、動揺を隠し切れないリアルタイムのメッセージやポストを眺めつつ、首都圏より遅れること30分、TVerで視聴を開始。

 ・・・これは、かなり面白いかもしれない。というか、ApartmentBand、思ってた以上に映る(そりゃあリアルタイム視聴組が動揺する訳だ)。かっこいい!

 ということで、前置きが長くなりましたが、ライブパートを観た感想(というか、ApartmentBand 良い!という呟きに過ぎないのですが)をこちらに書くことにしました。まずは初回分。どうやら全20回あるそうなので毎週は書ける気がしませんが、気になる回があれば追記していく形にします。
 あと、毎月アップしている他の記事よりもライトに書くつもりなので、かっこいい、好き、良い、の連発になりそうです。


第1回 2024年5月1日 BE:FIRST「Boom Boom Back」

 初回放送はBE:FIRSTが登場。放送当日にtatsuさんやオータさんがBE:FIRSTの曲をセッションした旨をポストされていたのだが、放送開始直後、Xで「#ApartmentB」のタグを追っていたら、演奏パートが冒頭にあること、そして曲が「Boom Boom Back」であることが分かった。
 改めて、まずは原曲を。ライブの締めの定番曲なのだろうか、ライブ映像もかっこいい。

 さて、実際のセッション。冒頭、JUNONさんの生の口笛でスタートした時点で驚いてしまった。皆がいる場じゃなくて、離れた所から口笛を吹きつつ歩いてきて、輪に入ったところで(ALIの)LEOさんがこなれた感じで手拍子でリズムを取り、そこにBE:FIRSTのメンバーも手拍子で入ってくる。最初のたった10秒弱のこのパートだけで、ラフにその場のノリで音楽が始まる空気が伝わってくる。
 そこからカウントで曲が始まる瞬間オータさんが映る。ここから全編通して、オータさんの臨場感溢れるドラムを捉えたカットが多い。「わ、今のオータさん、かっこいい!」と思う場面が何度もある。そして、松江さんのギターのリズムが始まり、音源では口笛になっている部分を荘子itさんのギターとゴンドウさんのフリューゲルのユニゾン(じゃない気もしたが細かく音取り出来なかった、すみません…)で重ねる、というイントロ。おお、バンドサウンドだ、と目も耳も釘付けになる。ゴンドウさんは、今回はミュートやエフェクターは使っていない。
 Aメロからtatsuさんのベースも入ってくるが、音源にもある4小節目に来る1音ずつ下がっていくフレーズのかっこいいこと。このフレーズの時に一瞬映る、下から捉えたようなカットにも目が行く。Aメロ後半は全パートでのセッションになるが、原曲同様、リズムの軸はしっかりしつつも、ボーカルが自由に歌える余白がたっぷりあるように聴こえる。
 ここからBメロに向かう部分もtatsuさんから目が離せない。Bメロの一音目に向かってグッと入っていくところと、そのペースのまま他のパートよりも前に出て全体をリードしていくように見えるのがかっこいい。ここから、リズム隊がソリッドさを保つ一方で、ボーカルと共に横の流れを作っていくのが音源には無いフリューゲルのオブリガートだ。思わず「これはめっちゃゴンドウさんっぽい!」と叫んでしまった。一度聴くと、原曲にもあるんじゃないかと錯覚してしまうほど耳に残る。
 そして、またもや「オータさんかっこいい」ポイントが。Bメロ終わり、8小節目の2拍目でクラッシュを一発鳴らす部分がばっちり映る。その2拍後、サビの入りでバスドラと、RYOKIさんのボーカルが重なったところの重さも堪らない。この重さがあるからこそ、サビで再びAメロと同じラフさに戻る緩急差も楽しめる。
 2回目のAメロ冒頭はアカペラで歌い繋ぐSHUNTOさんとRYUHEIさんの姿に息を飲む。そして、その直後の松江さんがかっこいい!今回、松江さんは全編通してあまりアップで映らない為、ここは何度も再生してしまった。そこから引き継ぐようにAメロ2周目に入る部分のオータさんのドラムがバシッと決まるのも気持ち良い。
 そこからBメロ、サビと進んで、Cメロへ。Bメロ同様にフリューゲルのオブリガートが入ってくるが、ApartmentBandにはキーボードやシンセが無いので(今後ゴンドウさんが弾く可能性も無いとは言い切れないが)、こういった横の流れや音の広がりを作るにはホーンの響きが効いてくるのかな、と感じた。
 ラストのサビは全パートが一段上の盛り上がりを見せるが、特にアウトロに向かう最後の1拍でのオータさんのフィルがめちゃくちゃかっこいい(ここはALIのLEOさんのキメ所でもあったので映像では映らなかった)。こういうのも勿論音源には無いし、セッションならでは。
 アウトロは松江さんと荘子itさんのギターソロにゴンドウさんも負けじとフリューゲルで応戦していて、あと1周聴きたい、と思わせつつも原曲通りの尺で終了。

 原曲はしっかりと大きなステージで歌う事を前提に作られているように聴こえるが、ApartmentBand版は、「生っぽさ」は勿論だけどそれ以上に、もっとスケールをコンパクトにして「身近さ」を引き出せるようなアレンジになっていたのかな、と思う。

 ゴンドウさんのこういう音楽番組でのアレンジというと、やはり『ムジカ・ピッコリーノ』を引き合いに出すべきなのだろうけど、私は同作の音楽については全ては聴き切れておらず(少しずつ聴いていこうと思って、ゴンドウさんが担当されていないシーズン1、2を含めて全作品のサウンドトラックを購入しているが…)。むしろ、ムジカにおけるゴンドウさん流のポップスのリアレンジや再解釈みたいなものをまだ理解できていなかったので、それならば今回のApartment Bで少しずつ見ていきたい、という想いもある(というか本来はそういう記事を書けたら、と思っていたのだが、自分にそこまでの力量が全然無くて、かっこいい、の連発に留まっているというのが本記事だ)。
 ただ、朧げではあるがムジカの音楽に対する印象こそ、音楽やアーティストがすぐそこに在るという「身近さ」だった。ムジカの場合は教育番組だったが、Apartment Bもまた、音楽をラフに楽しむ、というムジカと少し似たコンセプトがあると思うので、その点については今後も着目していきたいと思う。


余談: 愚音堂流の tiny desk が観たい

 番組の話から離れてしまうのだが、冒頭の日高さんの記事で挙げられていた tiny desk concerts 。このイメージでふと思い浮かんだのが、ゴンドウさんのスタジオである studio no-nonsense で、ApartmentBand がセッションをしているような様子だ。このスタジオ、ご本人のSNSや各種記事などで写真や動画を見る限り、所狭しと様々な機材や楽器が並んでいて、此処で 撮影されたtiny desk っぽい演奏動画があれば面白そうだなと思う。

 ゴンドウさんのソロでも良いのかもしれないが、数名で集まってリラックスしてセッションする、みたいな空気感が観てみたい。ApartmentBand とか、愚音堂所属の他のアーティストとか。言うだけならタダなので、観てみたいなあ、と呟いておく。


第3回 2024年5月15日 BE:FIRST 「Grow Up」

記: 2024/5/26

 第3回は、第1回と同様にBE:FIRSTの楽曲が演奏された。曲は、2023年9月13日リリースのシングル『Mainstream』のM-3「Grow Up」。元々タイトルトラックしか知らなかったのだが、本番組の初回放送前にBE:FIRSTの曲を幾つか予習がてら聴いてみた際に、この曲かっこいいなあ、と思っていた曲だった。

 トラックがかっこいいと思ってクレジットを探したら、リリース当時、X上で公開されていた。また、放送当日に荘子itさんがポストされていたが、プロデュースを務めたMONJOEさんと荘子itさんは同級生らしい。UK Garage、2step、といったところだと思うのだが、バンドサウンドだとどうなるのか。今回は放送直前に曲を知り、ああ、あの曲か!と思いながら翌日にTVerで視聴したのだが、事前に曲が分かっているのであれば、バンドサウンドだと何処が見せ場になってくるのか予想したうえで視聴するのも楽しいのかもしれない。
 そういえば、この曲はシングルの3曲目だからなのか、YoutubeにはオフィシャルのMVやパフォーマンス動画がアップされていないように見受けられる。今回、このようにライブ演奏が放送されたのはファンの方にとっても嬉しいものだったのだろう。  

 原曲はスマートな始まりだが、オータさんのカウントから始まるセッションは、松江さんのギターもゴンドウさんのフリューゲルホルンもギラギラとしている。1小節毎にはっきりと鳴らされるギターの音色に、トランペットほど鋭利では無いフリューゲルのミュート音の厚みが重なることで、たった20秒足らずで原曲とは正反対の印象を決定づける。また、このギターの音色によって私は、原曲のトラックで聴き逃してしまっていた4小節目と8小節目のコードの差を知った。
 そのイントロに重なるように(BE:FIRSTの)LEOさんが歌い始めるが、こちらも原曲と比べると、バンドに呼応するかのように深みを増しているように聴こえる。原曲ではAメロの2周目もコードとボーカルだけの静かなパートが続いた後、Bメロでがらっとスイッチングするかのような展開だが、今回はRYUHEIさんのボーカルを下支えするかのようにtatsuさんのベースが鳴り始め、Bメロに向かってサウンドを推し進めていく。
 Bメロからはオータさんのハイハットとスネアのリズムが細かくなり、松江さんもリズムへとシフト、ゴンドウさんのフリューゲルも入ってきて次第に盛り上がり、疾走感のあるサビへと突入する。そこから先は、とにかくtatsuさんのベースがかっこいい!原曲は重心が低めでベースが目立つが、バンドアレンジも主役はベースだと言っても過言では無いだろう。そして、原曲ではボーカルに沿うように鳴っているアルペジオはゴンドウさんのフリューゲルで奏でられる。原曲とは対照的に短めの音価で渋く鳴る音は、(ALIの)LEOさんのリラックスしたボーカルと共に、JUNONさん・RYOKIさん・SHUNTOさんのファルセットにスパイスのようなアクセントを添えているように思う。 
 2回目のAメロ冒頭は、バンド側はサビの勢いを引き継ぎつつ、そのうえで口火を切るようにSOTAさんのラップがハマっていくのが気持ちいい。因みに、初回の「Boom Boom Back」同様、Aメロ1周目終盤のキメのところで松江さんを捉えたカットがあるのだが、このアングルの映像はもう少し増えても良いのに、と細々と思う。
 このAメロ部分は、「一時代築く深夜一時台」という番組そのものを象徴するリリックを含む、本セッションオリジナルの荘子itさんのラップパートも見どころだ。初回放送時のセッションは原曲の尺通りで終わっていたが、こういうコラボが観たかった。原曲の構成からはみ出したセッションやソロパートはもっとあっても良いとも思う。
 この辺りは原曲同様、8小節単位で緩急がしっかりつくアレンジでBメロ、サビと進んでいくが、サビでの松江さんのアルペジオやゴンドウさんのオブリガードは、「前しか見ていない」(セッション後の荘子itさん談)筈のこの曲に抒情的な揺らぎを醸し出している。そういう風に受け取るならば、この後のCメロのMANATOさんのパートは揺らぎを振り切る決意表明のような8小節間なのだが、ここに向かうまでのサビのラスト1小節で入ってくるtatsuさんのベースラインも聴きどころ。原曲ではこの2番サビからCメロへの切り替えはかなりスムースなものだが、本セッションではこのベースで勢い付けているのが特徴的だ。
 そこからCメロのブレイク部分に入る冒頭1拍目は上述のtatsuさんのベースを皮切りに、オータさんのドラムを土台にバンド全員の音圧がグッと上がるのだが、これがMANATOさんのパートをリードする役割のように聴こえた。Cメロ後半、疾走感を取り戻しつつも再度静かなBメロへと着地するラスト2小節間での松江さんとtatsuさんそれぞれのフレーズも聴き逃せない。
 終盤は、Bメロ、サビ、アウトロと「前しか見ていない」サウンドだ。サビのラストのオータさんをもう少しアップで映してほしい、等とも思いつつ、やはりベースがどんどん前へ出るうえにしっかり映るので最後まで見逃せない(特にアウトロの3、4小節目が好きだ)。この人数でしっかりアウトロまで締めた後、たった一人でラストを担うRYOKIさんの歌いっぷりにも拍手。

 原曲がスマートで、小節、パート単位でスパッと切り替わっていく曲なのに対して、セッション版はギラついたサウンドであり、段階的な場面転換も多かったように思う。それによって同じリリックでも曲の印象がガラッと変わるので、好き嫌いが分かれるのかもしれない。原曲が好きだっただけに、かなり別物だな、と思いながらもバンド演奏ならではの1つ1つのフレーズや音に注目出来たのが面白くて、私はこちらも好きだった。
 最初は、え、この曲バンドでやるの?とも思っていたのだが、第1回とは違い、原曲との差が如実に出る曲だったので、その点でも良い選曲だった。

 次回辺りからBE:FIRST以外のアーティストもセッションパートに登場するのかなと期待している。予習、しておかねば・・・。