見出し画像

ゴンドウトモヒコさんのソロアルバムが好き(Vol.17)

 音楽家のゴンドウトモヒコさんのソロアルバムについての感想文、Vol.17編です。リリース直前に少し驚くようなお知らせも挟みつつ、無事リリースされた作品ですが、公式情報は以下からどうぞ。


Vol.17【17】

配信リンクはこちら

 2023年10月6日リリース。ギタリストの今泉仁誠さんをフィーチャーした作品であることが事前にアナウンスされており、アコースティック楽器によるアンサンブルが主体のアルバムだ。ポストクラシカルやミニマルな作風が好きなリスナーは勿論だが、ゴンドウさんのテクノやエレクトロ作品が好きな方にも、そのような作品を生み出す音楽家がアコースティック楽器を使ったアプローチをした結果どうなるのか、という観点での導入作品としてお薦めしたい。

 そんなアルバムのイントロダクションの役割を果たすM-1[扉~open]は、チェロやギターの音色が暖かく、朝晩の涼しさで少し冷えた心身に優しく寄り添ってくれる。ここではユーフォはあくまでも脇役で、暖かさの中に微かな物悲しさを添えているように聴こえる。続くM-2[太陽の城]はエレクトロ作品だが、M-1に引き続きチェロが曲を引っ張ることで有機的なサウンドとなっているように思う。
 M-3[Belvedere]はミニマルなアンサンブル作品。ギター、ドラム、ベース、ピアノ、と順番に各自が引っ掛かりのあるようなリズムを刻むが、離散と集合を繰り返すような各パートの音の重なりを聴くと、窓の外で雨が降り始める様子が目に浮かぶ。縦のリズムが雨音だとするならば、途中から入ってくるチェロは天候悪化を予感させる風といったところか。風が吹くと雨は次第に強まり、チェロの旋律によってそれまで刻まれていたリズムが途絶える瞬間は、まるで落雷のようだ。雨も風も弱まることが無いまま曲は終了するが、次のM-4[Sweet Dew]では先程までの悪天候が嘘だったかのように、光が差すような明るい空間が広がっていた。
 だが、M-5[Pure Serenity]では再び曇り空が訪れる。インタールードのように短い曲だが、少しだけ強い風の中で枯れ葉が舞うような様子が描かれている。M-3やM-4は自らの感情とは関係無く目の前で変わりゆく光景を眺めるような印象だったが、この曲はメランコリックなギターの旋律が中心に据えられているからか、落ち葉を踏みしめるような憂鬱さがある。
 M-6[subtle harmony]は本作の中間部のスタート地点のような曲だ。中盤からはチェロの牽引により盛り上がっていくが、序盤の1分強ほどのイントロのようなパートこそ聴きどころだと思っている。ピアノとドラムの無機的なリズムと、それとは対照的に、最初は効果音のように鳴らされ、次は少し表情を加えるようなフレーズを奏でるギター、このコントラストが美しい。
 本作は全編を通して秋のサウンドだと思っていたが、M-7[Sweet Dew2]だけは夏の終わりのような音だ。ピアニカのメロディや、少し和風なフレーズのギターが終わってしまった夏を思い出させるが、Vol.14【Autonomy】に収録された曲と近い感触があり、改めてこのアルバムも聴き返したくなった。
 M-8[扉~ajar]はチェロがM-1と同じテーマを奏でるところからスタートするが、M-1を含めた他の曲よりも穏やかで、まるで寒暖差や天候に振り回されることの無い落ち着いた秋晴れのようだ。ただ、穏やかな時間は長くは続かないと言わんばかりに曲は突然終わってしまい、次のM-9[Pistatio for Euphonium and Flamenco Guitar]が始まる。M-5と似た哀愁を帯びたギターが特徴的なインタールードのような曲だが、それ以上に、ここまで出番があまりにも少なかったユーフォの音色に耳を傾けたい。ギターやチェロの弦の響きが前面に出たアルバムだからこそ、ユーフォの空気を含んだような音の厚みを再確認できる曲だ。
 M-10[bare necessity]もミニマルな始まりだが、ドラムの入り方や曲の展開を聴いているとVol.8【anonymous lounge】のM-9[Dear Material]を思い出す。曲のアウトロ部分には秋の夜の虫の声が入っており、これがそのままM-11[Forlorn Town]のイントロへと繋がる構成だ。M-11もユーフォやギターをはじめ、ベースやキーボードの音も秋の夜の寂しさを描くが、何よりもピアニカがその寂しさを加速させる。M-7でのピアニカは過ぎ行く夏を惜しむかのような音に聴こえたが、いずれも何処かで孤独に嘆くかのような響きだ。
 M-12[Drink with Mr.Okubo]は8分超えのフォークトロニカ作品で、タイトルにあるMr.Okuboは恐らく、湯島の「MUSIC BAR 道」の大久保さん、なのだと思う。本作の他の曲とは趣が異なるが、むしろ馴染みの良いサウンドだ。終盤のコーラスがキャッチーで、直ぐに覚えて何度も口ずさんでしまった。
 ラストはM-13[扉~close]。ユーフォのフレーズはM-1と同じだが、M-1ではオブリガードだったものがこの曲では主旋律となっている。本作の中心となっていたギターもチェロも無く、開けた扉を一人で締めるかのような幕引きだ。センチメンタルに揺れ動いた感情は次第に落ち着きを取り戻し、季節は静かに秋から晩秋へと移り変わっていく。

 幾度となく感情を揺さぶられるようなアルバムだったが、そこには必ずギターの音があった。アコースティックな部分が色濃く出ているとはいえ、anonymassやムジカ・ピッコリーノなどを彷彿とさせるのではなく、それらとは違った情感豊かな1枚となっているのは、本作がソロ名義では無く今泉さんとのコラボレーションによるものだから、なのだろう。
 勿論(いや、むしろ)、例えばアコースティック色が強いという面で言えばanonymassのような飄々とした作風は大好きなのだが、今回のように一味違った作品を聴いてみたいという点では、フィーチャリングアーティストがいるアルバムはまたリリースしてほしいと思う。プロデューサーでもあるゴンドウさんならではの、そのアーティストの魅力の引き出し方がそこにあるはずだ。

Vol.18【Euphobient Music】

 11月4日に最新作がリリースされた。タイトルからして興味深いが、引き続き秋のアルバムといったところだろうか。聴くのが楽しみだ。



 私事で恐縮ですが、小声でのお知らせを…。こちらのZINEにてひっそりと、ゴンドウさんのソロ作品についてのレビュー(だなんておこがましい、いつも通りの感想です)を寄稿しています。何処かで見かけた際は手に取って頂ければ嬉しいです。