感染防止を取るか、繋がりを取るか
バタバタした金曜午前の話の続き。
前半はこちら。
じゃあ帰るか、と車に乗り込み、上司が道端で売ってるおばちゃんのバナナやオレンジを物色するのを待ち、私たちは出発した。
が、車の向かう先は事務所のある市の中心部とは反対方向である。
―え、どこ行くの?
「副市長のお見舞いだよ。」
ねぇねぇ、そういうのは行く前に教えて。
そして続く言葉に耳を疑った。
「今チクングニア熱で休んでいるからね…」
チクングニア熱とは今私の任地でとんでもなく流行している感染症だ。
これを書いたのが約1カ月前で、まだ収まる気配がない。予防注射も特異療法もないしなぁ。
致死率は0.1%と低いが関節痛や発疹があるらしい。あと手足の麻痺。
帰国の為に首都に上がる直前の先輩隊員が罹って入院し、病状を聞いたのだけど、ホームステイではない自宅で、手足麻痺が出たら私詰むぞと思って震えている。
さて話を戻そう。
このチクングニア熱に罹っている副市長の元に皆でお見舞いに行くと言う。
チクングニア熱を媒介するのは昼行性の蚊である。
…
お見舞いの席に蚊も同席しちゃったら感染するんじゃないか???
しかしもう車は家の前に着いてるし、皆は私も連れていく気満々だし、上手い断りの文句を私は探せなかった。腹を括る。
副市長は立って皆を出迎え、話が出来るくらいには元気だった。話すときには蚊帳の中にいたけれど、穴はあいているし、私たちが訓練所で頂いた殺虫剤が織り込まれたタイプでもないだろう。
会話の中で、副市長から「こんなに発疹出たんだよ~」と動画を見せられた。
「うわ~、こんなに!?」という上司。そして笑顔で「ミズキも見てごらん」と差し出してくる。
私はもう、この部屋にいるだけでも感染リスクが上がっているように感じてしまう。こうしているせいで、近い将来その発疹が出るかもしれないのでそんな悠長に笑えない。
上司は英語が出来るし、最初に流行が分かった時点でWikipediaなども調べていたので、感染経路は知っているはずだ。
それでもお見舞いが大事なんだな、と私は感じた。ここでは皆が気軽に移動できる範囲内に住んでいて、人の繋がりが日本に比べて濃い。
そんな彼らには感染防止<人との繋がりなんじゃないか。私は感染防止を最優先するけど。会わなくても、メッセか電話でよいのではと思ってしまう。多分そこは私と彼らの優先順位の違いだろう。
彼らに「なんでわざわざ感染しそうなところに行くの?」とはちょっと流石に聞けなかった。
でもそこにはオフィスの管理職が(3人中)2人と仕事が出来そうな同僚。皆感染して倒れたら、オフィスの機能止まるよね。
興味深かったのは、皆が皆副市長と話していなかったところだ。
一番ひたすら副市長と話していたのは私の上司である。彼の属性はオロモ人×ムスリム。話に参加していた若者代表のお兄さんも恐らく同じ属性。
同席していたけどほとんど副市長との会話に参加しなかった別の上司はティグライ人×クリスチャン。同僚も民族が分からないがクリスチャンだ。
副市長は家と着ているものから察するに、ムスリム。
少なくとも、ムスリム同士で盛り上がっていたらしい。人付き合いと属性の関係もよく分かった訪問だった。
もしかしたら話にあまり参加していなかった2人は、私と同じことを考えていたかもしれない。
それにしても、これ私用じゃないかな。
色々観察はできたけど、ツッコミに疲れた。
だから今日のトップ画は、レストランに現れる可愛い猫さん。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?