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同僚のホスピタリティはとどまるところを知らなかった

昨日も登場した同僚、タレケンの話である。

願いが通じたのか、今日は快晴で調査の同行もできた。
が、タレケンはまた1時間半くらい遅れて来た。彼の太鼓腹をぽよんぽよんして遊ぶという極刑に処しておいた。


午前の調査が早めに終わり、事務所に戻ろうとした時。きっかけには全く心当たりがないが、タレケンのホスピタリティスイッチが入ったらしい。

今日の地域オフィスは市場に近い。手押し車に一杯のバナナの前で彼が立ち止まった。こういうところで物を買いだすのは同僚あるあるだ。

タレケン「キロいくら?」
お兄さん「35ブル(約140円)」
「えぇっっ!!!!30ブル(約120円)だろ!!!!」

待って待ってタレケン、自国の人相手にめっちゃ理不尽やで。今バナナはキロ40ブル(約160円)だから。むしろ安いから。

宥めたけど、結局30ブルで購入。
そしてその袋を私に差し出し「はい」と。

いやいやいや貰えないよ!?

協力隊員に給料はないが生活費はある。その生活費の額は、ひょっとしたら彼の給料の倍くらいあるかもしれない。聞いたことはないけど(男性に給料、女性に歳は聞くなと若いスタッフに教わった)。交通費の数ブルだって、奢ってもらうのは物凄く気が引けるのだ。

押し問答の末、1本だけ頂いた。

もらう方が喜ばれるのに、とも思うんだけど。私、バナナは自分が選んだ好みのやつを食べたい。納得の行かないものは冷蔵庫に放置される可能性があるので、それならもらわず彼の家族に食べてもらった方がいいでしょう。

続いて「コーヒー飲む?紅茶?チマキ(フルーツジュース)?」

いいから、もう事務所帰ろうよ…と言うと「なんで!?」と悲しそうな顔をする。
バナナを断ったこともあるし、これはコーヒーくらいは頂かないと終わらないのでは?と思い直し、コーヒーをご馳走になる

よし、帰るぞ!と歩き出したのに、タレケンは裏道に入っていく。
待って待って、どこ行くの?

連れていかれたのは、綿でできたエチオピアの民族衣装やスカーフを織る工房。見たことないだろう、と連れてきてくれたのだ。
これは本当に良い体験だった。考えたことがとてもたくさんあるので、あとで別にまとめたい。


工房見学を終えたら、お昼だった。
…そういえば、ここまでずっと就業時間だったんでした。

「ミズキ!ここの料理屋は凄く美味しいおかずを出すんだよ!!」と入っていくタレケン。

かくして2人でインジェラのランチ。実は同僚とランチをしたのはこれが初めてだった。普段、皆家に帰って食べるからね。
会計は20ブル(約80円)、ホテルで食べるものの1/3の値段だ。ここは私が押しきって払った。ふー。

「そうだ!うちでコーヒーを飲もう!すぐそこだから!!」
…もう、私に彼は止められそうになかった。


タレケンの家にお邪魔してまず出てきたのは、家に行く前に「美味しい甘いものを食べさせてあげよう!」と彼がお店で買ってくれちこちら。

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ムシャバクというそうだ。
家が暗かったのもあり、正直最初は蜂の子とか幼虫系かな…?と身構えた。小麦粉の生地を揚げて蜂蜜を絡めたものでした。

エチオピアの蜂蜜は美味しい。だから味も好みだったけど、噛むとじゅわぁ…と油と蜂蜜が舌に溶けだす。…これは食べ過ぎるとヤバいヤツだ。
タレケンはひとりで写真の分くらい平らげていた。お酒を飲まないのにお腹がパンパンなのは、そういうことか。


「ミズキ!コーヒーの準備をしたことはあるかい?」

ここでいう準備は、エチオピアのコーヒーセレモニーの準備だ。

―それは…ないな…

「何だって!?よし、今日は君がコーヒーの準備をするんだ。大丈夫大丈夫、家族が手伝うから。」

そして急遽始まるコーヒーセレモニー講座

①豆の選別。黒いものは捨てる。選別したら水で洗う。

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②炒る。停電中の為、わざわざ火鉢を用意してもらったのが申し訳なかった。
黒くなってくると、もう最高にいい香り

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③豆を挽く。これもグリンダーが動かないので、すり鉢で。

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④ジャバナ(火鉢にのってる器)にコーヒーの粉とお湯を入れ、煮出す。

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⑤注いで飲む。写真はどこの家にもあるコーヒーセレモニーセット。
多分大阪のたこ焼き器みたいな存在。

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こうしている間にシロワット(インジェラ)も出てきたし、もうもてなされ具合に驚いた。

いきなり客を連れてこられて、ご家族の皆様は大分振り回されたことだろう。やれあれを準備しなさいだの、やれ写真を撮ってあげなさいだの、「すみません…」と何度も思ったけど至れり尽くせりであった。

同僚に物をねだられて困る、は想像していたし、他国の同期からグチとして聞いていた。

まさかここで、めちゃめちゃもてなされて戸惑うことがあるとは思わなかった。
本当に私は、優しい人たちと働いてるんだなぁ。

タレケンは、前任者にも同じことをしたよと笑っていた。


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