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KAIZENのチカラ

配属先や私の周りのエチオピアの人々によく知られている日本語に「KAIZEN」がある。

あのトヨタのカイゼンだ。

エチオピアでは2009年からJICAがカイゼンプロジェクトを行っていて、エチオピア カイゼン機構(ETI: Ethiopia KAIZEN Institute)もある。プロジェクト開始からまだ10年くらいなのに、とても広まっているようだ。

今までにも、誰かが事務所を片付けたら「ほら、KAIZENだ」と自慢げに微笑まれたものだが、今回はいきなり事務所のレイアウトが始まった。

大規模小売店で販売員をしていたとき、レイアウトと言えばおおごとだった。担当責任者は図面を引くためにいなくなるし、夜出の人が変えた、と思ったら店幹部からダメ出しが出て手直しが日中に入ったり。

ここでは事前の計画なんてない。ある午後、突然机を動かし始める。多分、事務所のちょっと高圧的なおっちゃんの思いつきだ。それに巻き込まれていく他の同僚たち。飛び交うアムハラ語が分からず、唖然とする私。

ただ突っ立っている私の元へ、そのおっちゃんが英語で話しかけてきた。

「日本はKAIZENの本場だろ?何かアドバイスはないか?」
え…とね、まずレイアウトの目的は?
「訪問者と、働くスタッフが使いやすい並びにする。」
じゃあ、動線の確保が最優先。入口から、訪問者が多い会計セクションと2人のサブヘッドの部屋まではアクセスを良くする必要があると思う。

結果、ビフォーアフターはこんな感じ。

回遊性(巡りやすさ)はちょっと減ってしまったかもしれないが、訪問者と話しやすい机の並びが意識されているからこれも良さそう。

私のアイディアを採用してもらった為か、入口前に机どーんっ!!!!と置かれたのは解消してもらえた。良かった。

皆口々に「KAIZENだ」「KAIZENだな」と満足そうだ。

今回印象的だったのは次の2つ。

1つ目は、彼らにしてみればまだ若く見えるよそ者の私の意見をちゃんと聞いて採り入れてくれたこと。

ずっこけたくなることも突っ込みたくなることも多いけど、私は本当に恵まれた配属先にいる。

2つ目は、自分達で訪問者のことを考えながら半日で完遂していたこと。

普段皆で協力して何かをしているところを見たことがなかったのだけど、やるときはやるんだな、と。だからこそコメントを求められたら、ポイントを1つか2つに絞って答える方がいいなと学んだ。

つい経験のあることは色々口出ししたくなる性分なのだが、彼らのオフィスについては彼らの方が当たり前によく分かっているんだ。今回の並び、私は絶対思い付かなかっただろうなぁ。

そしてこんな日本から遠く離れたところでKAIZENを聞けて、実践されているところを見られて嬉しい。


…ところでぐっちゃぐちゃになった席、どこに座ろう?

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