人生は最期まで生きてみないとわからない
**「働く女」についてのブックレビュー⑤
佐久間裕美子著『ピンヒールははかない』**
「働く女」をテーマにしたブックレビューです。2019年の暮れも押し詰まって突然アップし出した顛末についてはこちら。
ニューヨークに住んで20年近いというライターである著者が、自由を象徴するこのまちに暮らす女性たちに、多様な女性の生き方についてインタビューした佐久間裕美子『ピンヒールははかない』(幻冬社、2017)は、小気味よいタイトルのとおり読む者に自由な風を吹かせてくれる。
最後のほうに出てくる「二度目のお別れ」とエピローグでは、著者自身が若いころに経験した結婚と離婚、そして元夫の死と元義母の死に際してのエピソードが語られる。
元義母との最後の会話はこうだ。
「Promise me not to miss out on any fun」
どんな楽しいこともやり逃さないって約束して。
佐久間裕美子著『ピンヒールははかない』(幻冬社、p152)
人生の時間は限られている。だからめいっぱい生きるのだという著者の強いメッセージだ。
住む場所や仕事、パートナー選び、あるいはシングルで生きること。女性が自分の生きる道を決めるとき、それが正しいのかどうかは誰にもわからない。だから女性は常に迷いながら選択する。そのバリエーションの厚みはさすがニューヨークとも思うが、一方でどんな国に住んでいようと、幸せは常にその瞬間のもの、「継続的な幸せ」など存在しないのだから、自分の人生の選択が正しかったかどうかを不安に思ったり、誰かに承認してもらったりする必要はないのだ、という気づきを身近な人の死というプライベートなエピソードを開陳しながら全力で読者に伝えてくれるところは白眉だ。
「女である自分について考えることから逃げ回ってきた私」という著者のスタンスや、「トムボーイ(男勝りな女の子)」気質にも親近感を覚えて読んだ。読み手によって響く箇所が大きく異なるのがそのまま、女のさまざまな生き方を映し出していると思う。
人生は、最期まで生きてみないとわからない。だからこそ、「自分を減速させるピンヒールははかない。(同書、p20)」ことを、他でもない自分自身が決めていい。#kuutooも話題になった2019年にぴったりの、働く女のための一冊。
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