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読書記録_ 磯野真穂『なぜふつうに食べられないのか』(春秋社、2015)

哲学者の宮野真生子さんとの共著『急に具合が悪くなる』でも知られる磯野真穂さん。コロナ禍で新聞などいろいろなところでお名前を見ることが増えたお一人。博論を加筆修正したのが本書だそうです。

最近とみに磯野さんのインタビューを見聞きする機会が増えて、なんだか大事なことを言っているような気がするものの、限られた紙幅や時間ではつまるところ何を言いたいのか、今ひとつわからないなぁと思ったので読んでみた。『急に具合が〜』は貸出中だったので、本書をとりあえず。結果、「ああ、そういう観点だったのか」というのが本当によくわかった。納得した。

子どもの頃「アメリカ人は太った人を“自己管理できていない人”として軽蔑する」と知ったとき、は? なんじゃそりゃと思ったものだ。その後、自分自身がダイエットにいそしむお年頃になるなんて思ってもみなかった。今ならわかる。子どものときのあの感覚は正しかったっていうこと。この本は、あのときの率直な感覚を何周か回って肯定してくれるような本だった。

私たちは自然科学の恩恵に浴しているけれど、“客観性”を旨とする自然科学に生活の価値や判断基準の多くをかっさらわれると、人は人とつながれなくなるということ。拒食・過食の人たちの孤立は、コロナ禍のステイホームのときにみんなが感じた孤立感と、「自然科学に判断基準を明け渡した結果」という観点では通底していたんだ、というのは発見だった。

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