喉元

食べ物をくれる度
お前は優しいねと言われる度
尊敬してると言われる度
すきだと言われる度
恋してると言われる度
口の中で光る舐めかけの飴の輝きような
毒々しい女々しい馴れ馴れしいお前の優しさ
お前はお前でいいという
素人が作ったガラス細工を
まだ磨きもしないで
太陽に透かして見もせず
触りもせず
味わいもせず
渇いていくこころをお前のせいにも出来ず
たとえわたしの足が親指から小指
形のいい脹脛風が通う太ももも
腹も爪も頭も治らない傷も
健全な胸も首筋も肩胛骨も
三ヶ月分の細胞も
2年分の骨も
還ることがあっても
終わりはしない
なくならない
なくなったことにした卑怯者は去る
わたしははなびらをやった
お前だけに
だるまさんが転んで
わたしは走る
はじめの一歩を駆け出す
シーソーが傾いた反動で
月まで飛んだ
そこにはなにもかもがある
何を持っていこう
きみがなくしたそれと
約束を書いた水を
夢を見たよ、夢を、夢
手紙はエレベーターの隙間に置いてきた
いまごろ鼠と仲良く眠ってシワシワになって
変な虫が入らないように
必ず目を覆うこと
見えないに変わりはないね
眼を奪われることと
自ら隠すことは
んどちらが雄々しい態度だろう
(これはハムレットの科白)
みんな元気かな
(これは織姫の)
わたしさえしっかりしていれば大丈夫だと思ってた
(これはセーラー服の)
彼女に手で触って
(これは時計の)
仮面のなかは秘密
(これは愛のバルコニー)
雨音
(これはボートの上で)
ねぇ
(これは朝焼けに逃げるあなた)
なんでもない
(これは朝焼けに逃げるあなたから逃げるわたし)
そう
(これはわざとらしく目を細めるという行為)
影になってやった
(それでもなお)
横にわたしわたしわたし
(眠りやがれ小さな
綴じられることのない右側

#詩 #過去の日記より