見出し画像

主人公の目は点20221225sun171

急に、甘ったるい飲み物、ファンタグレープが飲みたいと思い立ち、外に出る。天気は良い。ロードバイクで少し近隣をまわろうとペダルを踏む。

山手に走ると、重光葵(しげみつまもる)偉人資料館館が開いていた。あれ、開いていたんだ。と思い、降りる。

ガラガラ。引き戸を開ける。

三坪ほどの館内の空気は生ぬるく、中央のソファで老人が腕を組んで船を漕いでいた。壁三方には終戦時の外交官だった重光葵の額が掛けられている。

百円です。記帳してくれ。といわれ既視感を感じ、入ろうか迷った。博物館の受付。老人。ボランティア。

長野県の松代にいた頃、象山地下壕を見学した。おなじ老人がいた。老婆だったが。松代の象山地下壕は終戦間際に陸軍が山の地下に削って作った天皇の隠れ御所を併設する大本営総司令部だ。若者にはエヴァンゲリオンの新東京市の舞台で知られる。ネルフ本部になる。松代は冒頭で使徒が山あいを歩いて登場するシーンが広がる。

なぜ重光葵資料館と象山地下壕博物館の受付の老人が重なったのか。歳をとって頭が硬くなった自分への自己批判を込めて書く。

重光葵は素晴らしい人で子供に滝を浴びせて育てあげた。象山には当時、朝鮮人の徴用工も慰安婦も多くいた。日本政府は事実を隠している。

それらは個人の主張だ。前者は当時の美談でも今では幼児虐待だ。後者は個人の日本政府への不満だ。それらを、入場料を払った客にいわれても人によっては嫌悪感を抱く。

少年マンガの原作を書いている。個人の主張は引っ込めるべきだとつくづく感じた。読み手の心がどんどんと離れる。

少年ジャンプの、とくに超メガヒット作の主人公たち、そのほとんどは眼に焦点がない。わかりやすくいうとドラゴンクエストのスライムの目をしている。読者それぞれが如何様にも感情移入できるように描かれている。

脇役たちは違う。それぞれの野望や目的や夢がある。魅力的な脇役がまわりを固めると読んでいてワクワクする。
(801文字)



よろしければサポートおねがいします サポーターにはnoteにて還元をいたします