スキージャンプ女子W杯ノーマルヒルの得点差は、どのように変化したか




なぜ調べようと思ったか

女子ジャンプはW杯が開催されるようになってから10年以上が経過し、当初に比べると一人の選手が大勝ちすることが減ってきたように感じています。

そこで、試合ごとの上位の選手のポイント差を見ることで、差がつまっているのか確認したいと思いました。

今回は、スキージャンプ女子W杯の2011/12シーズン、2017/18シーズン、2022/23シーズンのノーマルヒル個人戦について、FIS公式記録からポイント差を拾って調べました。
※本選が1本のみで決まる試合は、今回計算から除外しています。


1位と各順位とのポイント差

図1 1位と2~4位の選手の平均ポイント差とポイント差m換算
図1 1位と2~4位の選手の平均ポイント差とm換算

まず、2011/12と2017/18は、それほどポイント差が変わっていません。

しかし、2017/18と2022/23では、大きく差が縮まっていることがわかります。
2022/23の2位は、1位とはわずか5.5ポイントしか差がなく、飛距離に換算すると2本でたったの2.8m差しかありませんでしたし、2022/23の4位のポイント差は、2017/18の2位のポイント差よりも小さいです。

また、2011/12はサラ・ヘンドリクソンが調査した14試合で10勝(そのほか2人で3勝)、2017/18はルンビが13試合で8勝(そのほか3人で5勝)と大勝ちしたシーズンでした。

一方、2022/23はピンケルニッヒが10試合で4勝(そのほか4人で6勝)と、2011/12および2017/18と比べると、優勝は一人の選手に偏らない傾向が出てきています。


2位以下の各順位ごとのポイント差

表2 2位から4位の選手ポイント差の平均とm換算
図2 2位から4位のポイント差とm換算

2位と3位、2位と4位、3位と4位のポイント差も、縮まっています。
特に3位と4位の差は、2022/23ではわずか1.7ポイント差で、飛距離換算で0.8mと非常に小さいです。


過去と直近の同じ順位どうしは得点差が変わってきているといえるのか

表3 同じ順位の過去と直近の得点差のt検定結果

2位どうしで1位との得点差を比較すると、t検定による有意差はみられませんでしたが、3位どうし、4位どうしは有意差がみられました(過去に比べると、1位と3位、1位と4位の得点差は有意に小さくなっている)


少し考察

以上のことから、ここ10年あまりで女子ジャンプ選手の個々の実力差は非常に小さくなっていると考えられます。

そのため、飛距離を大きく伸ばしても着地でミスをして飛型点を減点されてしまうと、大きく順位が下がり、表彰台争いでは厳しくなるであろうと推測されます。

より安全に遠くまで飛び、美しく着地することが、女子W杯が始まった当初に比べ、さらに重要性を増しているのだろうと思います。


まとめ

・女子ジャンプの上位1位から4位までのポイント差は、どんどん小さくなっている。
・2022/23シーズンでは1位と2位の差は2本飛んで飛距離換算で約3m、3位と4位の差は1m未満になるなど、近年の表彰台争いは非常に熾烈になっている。
・過去と直近の3位どうし、4位どうしは、1位との得点差が有意に小さくなっている。
・優勝は一人の選手に偏らない傾向になってきている。
・より安全に遠くまで飛び、美しく着地することが、女子W杯が始まった当初に比べ、さらに重要性を増していると思われる。


参考(使用したデータなど見たい方はどうぞ)

参考表1 各順位の得点差


参考表2 統計検定の結果(5%)
参考表3 統計検定の結果(1%)

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