あおいゆの

はじめまして! ドキドキ☆キュンとするような小説を書いています。 日常にありそうな恋物語をご覧ください☆

過去との遭遇・6・今までとこれからの

今なら自信を持って彼女にいうだろう。
「なんてバカなんだ」って。

あの夏休みがきっかけで、ぼくは散々からかわれたけれど、彼女の方がずっとずっと嫌な思いをしただろう。
ぼくは噂には慣れていたし、そのままにしておいたってそれほど困ることはなかったんだ。
なのに。

きっと彼女はぼくをかばってくれたのだろう。
彼女は「自分がぼくを誘った」といったという。
この地域が窮屈で、噂がどれほどの脅威か知りすぎ

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過去との遭遇・5・思い出の本

やっときた車内販売で、ホットコーヒーを買った。
通路側の席に座る、隣の人の前に何度も腕を伸ばすのは申し訳なくて謝ると、目が合った。

心臓が止まりそうだった。

…彼だ。

彼はわたしに気づいているのだろうか。
わたしを恨んでいるのだろうか。

ホットコーヒーのカップは熱いはずなのに、わたしの指先は熱さを感じないほどに冷えていた。

わたしは、彼を傷つけた。

夏休みに彼と神社で会った。
わたしが

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過去との遭遇・4・夏休み

彼女に本を貸した。
数日後には読み終えたと言われた。
続きが気になると言われたけれど、もう夏休みになってしまう。
きっと彼女は、ぼくと話しをしていることも、他の人には知られたくないのだと思う。

だから、提案をしたんだ。
橋を渡った川の向こうの神社で待ち合わせをするのはどうか、って。

3時に待ち合わせをした。

川の向こうに神社があることは、なんとなく知っていたけれど、どんなところなのかわからな

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過去との遭遇・3・秘密の約束

図書室で遭遇した彼は、不意につぶやくような声を発した。

「それ…。」

初めて聞いた彼の声、いや、初めてわたしに向けられた彼の声は穏やかで、なんとなく緊張した。
でも、緊張している自分が恥ずかしくて、なんともないようなフリをする。

「なあに?」

ぶっきらぼうに聞こえなかっただろうか。
声がうまくでないような気持ちになる。

「ぼくが今読んでいる本の続編なんだ。」

本の背表紙に指を伸ばしなが

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過去との遭遇・2・不機嫌な彼女

同窓会の案内が届いた時には、正直驚いた。
間違いかと思った。

中2の夏に、父と母が離婚した。
ぼくは、母と一緒に母の実家に住むことになった。

そこは、おそろしく閉鎖された世界だった。

母は、「ここから逃げ出したかったのに、また戻ってくるなんて」そう呟いたのは、忘れられない。

街からそれほど離れているわけではない。
街まで通勤している人がほとんどだ。

通えない距離ではないことで、ずっとここ

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