クリスマスの気まぐれ.5

茶化してカンナの肩をバシバシ叩いてみるけれど、誰も惑わされたりしない。

「ナズナー、白状しなさぁい?」

目が合ったら石になってしまうかもしれないくらい、スミレさんの迫力はすさまじい。

「…わかりましたよー。」

運ばれてきたビールをゴクリと飲み、ゆっくりと思い出すことにした。

あれは今月に入ってすぐのことだった。
私の担当の地下お菓子売り場に、クリスマスコーナーを設置する時期になって、新しいお菓子を入荷することになった。
今回たまたま主任が不在で、私が担当することになった。

「初めまして。村田です。
よろしくお願いします。」

キラキラ輝くような笑顔で、挨拶をされた。
きっと平均的な身長ではあるけれど、ストライプの織りのスーツに、チェック柄の個性的なネクタイが印象に残る。
営業さんにしては、ちょっと長めかもしれないけれど、ゆるふわな茶色い髪の毛。
整った目鼻立ち。
久々に、イケメンを見た。

「よ、よろしくお願いします。」

頭を下げながら、ちょっとドギマギした。
お店には、たくさんのお客様が来るけれど、そこで出会いなんてない。

強く結婚したいと思っているわけではないけれど、子供のころ当たり前のことのように
”結婚している“
とぼんやり思い描いていた年齢は、そろそろ追い越してしまいそうだ。

せめて、恋人くらいは…。
いやいや、恋愛はしていたいのになぁ。

村田さんとは、事前に何度もディスプレイの打ち合わせをした。
今日の作業は売り場の人にも手伝ってもらって、閉店後に一気に終わらせる。

作業中に、ワイシャツを腕まくりした姿に、ついドキリとしてしまう…
と、思ったらなにか違う。
よく見ると、村田さんじゃなくて、

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