クリスマスの気まぐれ.12

ほぼ毎日売り場で会っているけれど、私服で会うのは初めてだから少し緊張する。
白のニットにふわりとしたスカートと、ショートブーツを合わせて、コートを羽織る。

通勤は防寒対策重視だから、極厚タイツを重ねばきして、カイロも貼りまくって、手袋とマフラーも必須だけど、今日は全て封印しておしゃれ優先で頑張ろう。

待ち合わせは駅前の噴水公園。
まだお昼過ぎだから、点灯していないけれど、夜になるとイルミネーションが煌々と輝いているはず。

「ナズナちゃん。」

むこうから近づいてくる、村田さんの姿を見つけて駆け寄る。

「お誘いありがとうございます。」

「いえいえ、こちらこそ。」

村田さんは、デニムパンツに黒のセーターを着て、暖かそうなジャケットを羽織っている。
そういえば、時計やアクセサリーはつけないタイプなのかな。
仕事中も時計はしていなかったような…。

そうそう、カンナは初任給を全部使って、時計を買ったって言ってたなぁ。
そんなに高いのを買わなくても!?
なんて驚いたけれど、

“この時計が似合うように、がんばります!”

なんて言ってたっけ。
って!
今カンナのことなんて、考えていないで、しっかりこのデートを遂行せねば!

「行こうか?」

「はい。」

にっこり笑って答える。
寒気で背筋がブルリと震えた。

そういえば、待ち合わせて映画を見に行くなんて、いつ振りだろう。
嬉しくて、この状況をかみ締めるように楽しみたい。

歩いていると、時々すれ違う人の声が聞こえる。

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