激越__プロ野球県聞録_C_

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 そして「プロ野球再編問題」に揺れたその年、ペナントレース閉幕後の十月下旬、奇しくも日本シリーズ開催中に、新潟県中越地方を震源とするマグニチュード6.8、最大震度7という大地震が当地を襲ったのである。

 しかし鉄道が鉄道であるかぎり、遠隔地のファンを決戦地へと送りこむ電車及び気動車が、どこかできっと運行されているはずなのだ(鉄道とはそういうものではあるまいか……?)。それは希望か欲望か感謝の念か、様々な思いを乗せて運ぶ特別な鉄道車両となるにちがいない。

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「タラッタラン……、タラッタラン……、タラッタラン……」
先へ、先へ、(明日の日本シリーズ第七戦を観戦するため)まだ見ぬシャチホコ目指して夜の日本海側を進むしかない。当日移動でも遅いと判断し前夜に出立した二十三時台の夜行である。車窓には星空も漁り火も見えているか、柏崎から先は本当に線路が長々と海沿いを走っている。

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 たとえどんな性格の、いかなる役割を担うものだったのであれ、狭軌(国鉄標準軌)という同じレール幅の鉄道であるかぎり、まともに電力が供給されずともいつでもそこに帰ってくることはあるのだ――送電ストップも非電化もものともしない、忘れ去られた石炭火力と蒸気力によってピストンを動かし動輪を回し列車を牽引して走る、黒々とした煙吐き出す蒸気機関車の迫力ある姿、そして耳か頭か腹の底まで響かせるあの轟音が。(本編第2章より抜粋)

 これではもはや小説×都道府県×鉄道なのではあるまいか……ともあれプロ野球列島を行くその「希望という名の電車」や幻の夜行列車、しゃべる機関車(さすらいの鉄道マン)は、名前も顔ももたない一ファンを乗せ、いつか勝利の待つ目的地の駅にたどり着けるのか……ああそして、いつになったら本州日本海側最大都市の新潟が「プロ野球県」に?

プロ野球隠密小説
『激越!!プロ野球県聞録』

そこが道かと思えば道ではない。ただならぬ事態にようやく気がつく。どこで道を踏み外したのだったか、路上は路上でも鉄道線路上なのだ。東京都内某所、高架線。しかも自分はあるプロ野球チームのユニフォームを着てそこにいる。もちろん追われる身なのである。だから逃げる、だから走る。そう簡単にアウトにされてたまるものか――。(本編第3章より)

(当作品は「すばる」掲載の中篇に倍増以上となる大幅加筆をした長篇小説です。原稿用紙約500枚。ちなみにこのデジタル新企画、第一弾は純文学×プロ野球×テレビゲームなんだとか……いったい何のことなのか? 第一弾企画『プロ野Qさつじん事件』は「すばる」掲載中篇+スピンオフ4短篇。メイキングエッセイ「配信前夜のエッセイ」1~5もnote公開中です!)