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【ネタバレ有】ロッキーリナ語り:KGF2の嵐の日の翌朝のシーンが皇帝でも姫でもない若い恋人同士が一緒にいる空気感があり素晴らしい

 映画『K.G.F:CHAPTER2』で起こる嵐の日の翌朝、ようやく訪れたその朝にロッキーとリナが部屋に二人でいるあのシーンの空気感が私はとにかく好きで好きで大好きだ。

 映画ではアディーラの銃弾を受けたロッキーが屋敷に運び込まれたその日の夜が嵐のように描写される。そして、KGFに朝が訪れる。
 眠っていたロッキーは目覚め、彼は自分の手を握るリナに気づく。
 リナは眠っている。ロッキーは自分の手にペンダントが握らされているのを見る。彼がリナに預けた、母からもらった彼のお守りのペンダントだ。
 そして、リナが目覚める。
 目が覚めたリナはロッキーの目が覚めた事を知っても驚かない。ただ目が覚め朝が来たという事を見たという雰囲気だ。

 そのリナの様子に、私はそこに描かれていない話を想像する。

 リナが眠りに落ちたのは、激しくうなされていたロッキーの震えが治まり彼が眠りに落ちたことを確認した後だったのではないだろうか。それを確認してリナは気が緩んで眠り込んでしまったのではないだろうか。そして、ロッキーの手を握ったまま眠ってしまったのではないだろうか。

 想像することはもう一つある。
 
 ロッキーのペンダントをリナがずっと持っていたであろうことだ。おそらく肌身離さずに。KGFに連れてこられたときには手荷物らしい手荷物をリナは持っていなかったのだから。そしてKGFに来た後もリナはずっと常に持ち続けていたのではないだろうか。

 ロッキーのことを「彼は私の恋人」と言ったリナの気持ちはKGFの皇帝となったロッキーの言葉により離れたかのように見えた。だがリナは心の奥底ではロッキーの本意を理解していて、彼女の気持ちはずっと変わらずに彼に残ったままでいて、嵐が来たことにより隠すことの理由を失ったその奥底の気持ちが現れてきたのではないだろうか。
 まるで離れたことなどなかったように当たり前のように存在するリナの気持ちが本当に愛おしい。

 二人だけしかいない静かな部屋で、リナはロッキーの世話をする。彼女の雰囲気はどこか気だるく、自分自身の身体の重さを感じていることが伝わってくる。横たわり世話をされているロッキーにもいつもの眼光の鋭さはなく、身体にずっしりとした重さがのしかかっている雰囲気がある。

 二人が同様の重さを感じている空気感がこのシーンの中における私の最大の推しだ。重さを感じていることは、ロッキーとリナが人であることを示していると思うからだ。

 重さは嵐で負った傷と疲れだ。スーツを身にまとい無敵の強さで敵をなぎ倒す皇帝と美しい服を身にまとい力のある瞳を持つ姫であったのなら存在しない傷と疲れとその重さがこのシーンのロッキーとリナにある。それが二人を人である若い男女にしている。

 撃たれたロッキーは彼を信じる人たちの信頼を打ち砕く為に生かされ戻された。アディーラにお前の無様を晒せと言われたも同然の状況だ。そしてリナは最愛の父が殺され、それのみならず、自らを囮にされた結果ロッキーが目の前で撃たれ生死の境をさまようような大怪我を負うことになり、泣き崩れた。
 二人同じく嵐を経験し、その夜をくぐり抜けて、同じように重さを感じながら共にいる。
 その空気感が煙るような朝日が差し込む静かな部屋全体を覆っていてひたすらに素晴らしい。

 そして電話が鳴る。
 ここからのシーンはそこまで深い場所で繋がりながらすれ違いをする若い恋人同士の話になってゆく。
 
 電話の主はシェッティだ。シェッティはロッキーに対して一方的な嘲りを始める。シェッティは言う。
「女がいるな。美人らしいな」

 シェッティの言葉により、リナは『ロッキーの女』として知れ渡り始めていることがわかる。KGF幹部との会合の際、ロッキーは「なぜここに連れてきたのか」と問うたリナに「KGFの安全を守るため」と言った。KGFの幹部をけん制するための人質という意味にもとれる言葉だが、それを隠れ蓑にして本来の意味を隠そうとしていたとも考えられるではないだろうか。だが、いずれにせよ結局はリナはもう本来通りの『ロッキーが大事にしている女』としてボンベイのシェッティのもとにまでその存在が伝わってしまっている。

 感情を浮かべずにシェッティの嘲りを聞いていたロッキーが、シェッティの言葉に視線をリナに向けるのがすごくいい。シェッティの声を聞きながらリナはうなだれる。シェッティの言う『女』とはどういう存在なのか。その『女』とは戦利品だ。

「一緒に連れて来いよ」
 お前の戦利品を持ってこいというようなその言葉に「忘れるなよ」と追加してシェッティの電話は切れる。リナは伏せていた目を上げる。その表情はうなだれていた時とは変わっている。瞳と口元に宿る彼女の意思がいい。リナはロッキーに言う。
「あなたのお友達も娯楽が必要みたいね」

 あなたのお友達も、という言葉でリナはシェッティもロッキーも一括りにする。この言葉は、この作品中で最も強力で痛烈なロッキーへの皮肉だと思う。リナのことを「君は俺の娯楽だ」と言ったのはロッキーだ。男の都合に振り回されていたリナがここで矜持を取り戻す。リナの低い声が最高に最高に素晴らしい。ロッキーはリナを見る。そしてリナは言うのだ。
「行くわ」

 リナもロッキーもお互いの目を見ている。この横からの二人のショットがものすごく好きだ。ロッキーの瞳は気だるげな表情のままでリナの言葉に対して何を思い考えたのかが見えないところが最高に良くて最高に想像の余地を生む。ほんの少し手を伸ばしてしまえばリナの手を掴むことが可能なほど近い距離にいるのにロッキーはそれをしない。そしてリナはベッドを降りて部屋を出てゆく。ロッキーの視線は彼女を追って、余韻を残したままシーンは終わる。

 ロッキーはリナの言葉に何を思い、何を考えたのだろう。

 一つ思うのはロッキーにとってのリナの存在については本当は公道で初めて出会ったその最初から最後までまったくブレていないということだ。全編を通して一つ一つのシーンを重ねるとそれがわかる。
 ロッキーにとってリナは「心臓を奪う女」で「腹の底から愛を感じる」存在で、「同伴者」だ。
 リナに対して訂正や言い訳をしないのは、そもそもリナを最初からまったく戦利品扱いなどしていないからという理由ではないだろうか。最初からロッキーはリナに「すでに殺されている」
 
 そして、ロッキーは行動する。
 アディーラを倒し、地面に這いつくばるように倒れたジョンの腕を掴みあげ、全員の前に引き出して、その腕を切り落とす。ボンベイのシェッティの元を訪れ、もう別にどうなろうとも関心などない男であるシェッティを至近距離から撃ち殺す。
 ジョンの腕を切り落とす前にロッキーは言う。
「最も大切なのは誰を相棒に選ぶかだ。俺の女に触りやがって」
 『大切な相棒』である『俺の女』であるリナへの危害の罪を償わせたのだ。

 そして、本当はつながっているのに距離を持つ二人の関係はその微妙な距離をお互い縮めないまま続く。

 すれ違いから生まれている若い恋人同士の二人の距離がもどかしくもどかしく、そして私はその距離を生んでいる2人の強情や幼さをとても愛しく思う。それがこの朝のシーンに凝縮されているようで私はこのシーンが大好きだ。



ふせったーに投稿した記事を再録しました。
文中の映画から引用した台詞はうろ覚えです。映画本編でご確認をお願いいたします。

2024.3.4 文章を一部修正しました

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