見出し画像

子どもショートステイ協力家庭メンバーへのインタビュー〈みかんちゃん編〉

西新宿にある一軒家「れもんハウス」
あなたでアルこと、ともにイルこと。
そんなテーマを持って、いろいろな人たちが集う場です。
れもんハウスでは、新宿区の子どもショートステイの受け入れ拠点としても活動を行っています。

子どもショートステイとは、保護者の方の入院や出張、育児疲れがある時に、生後60日~18歳のお子さんを、施設や協力家庭で預かり養育する制度です(子どもショートステイの詳細については、こちらの記事をご覧ください!)。

子どもショートステイにおいて、お子さんと一緒に過ごす存在が協力家庭のメンバーです。れもんハウスでは、協力家庭として登録しているメンバーでシフトを組み、何人かで交代しながら、ともに生活をします。れもんハウスでは、年齢や所属、バックグラウンドも様々な約30名がショートステイの協力家庭として活動しています。今回は、協力家庭メンバーの生の声を聴くことにより、ショートステイがどのようなものなのか、深めていくインタビューを行いました。

今回の話し手は、「みかんちゃん」こと林実香さん。最近まで組織コンサルの会社で新規事業開発をしていました。聴き手は、同じくショートステイ協力家庭メンバーの西角綾夏が行いました。

玄関でお出迎えのみかんちゃん

もともと子どもに関わるボランティアをしていた

ーみかんちゃんは協力家庭になる前もれもんハウスに遊びに来てくれていたけれど、そういえばショートステイに関わったきっかけは何かあったの?

林実香(以下、みかん):琴子さん(れもんハウス運営の青草の原代表)に「やってみる?」と言われて。もともと、子どもがいる家庭に訪問して家事や育児のサポートをするボランティアをやっていたので、それをやっていると(協力家庭になるための)研修が座学だけで済むということも聞いて、やってみようと思いました。

ーなるほど。みかんちゃんはそのボランティア以外にも、子どもとかかわる活動やボランティアにもいろいろ関わっているじゃない?それでも、また協力家庭として子どもと関わるということに負担とかは感じなかったの?

みかん:そうですね。今までやっていた家事育児サポートのボランティアは、関わる枠がカッチリしているんです。ひとりで家庭に訪問するのと、れもんハウスという場があってそこで受け入れをするのではだいぶ違うなと。でも、最初はそこまで深く考えずに面白そうだなというくらいで始めました。

おうちで一緒に生活している感覚

ーそうだったんだね。実際にやってみてどうだった?

みかん:すごくいいなあと思いますね。なんていうんですかね、一応時間は決まっているけど、意外と曖昧で自分のシフトが終わった後もれもんハウスでゆっくりしたり。場所がれもんハウスだからというのもあるけれど、子どもを付きっきりで見るというのではなく、一緒に生活しているという感じなのがすごくいいなと思う。今まで関わってきたものよりも、一番自然なかたちで接することができるなと。私にとってもひとつの帰る場所として思っています。

ここ数日は昼間は仕事やイベントで外に出ていて、夜になったられもんハウスに帰ってきて、という生活を続けていました。朝になったらまた出発して、また帰ってくる、居場所のような感じに思っています。

ーたしかに、それはおうちだね。

みかん:そうですよね。本当におうちという感覚で、れもんハウスにはショートステイの子だけじゃなくて、いろんな子が来るじゃないですか。それもすごくいいなと思うんです。「この週はショートステイの受け入れ中だから誰も来ないで!」とかがなくて、他の人も自由に出入りしている感じ。住人メンバーがご飯を食べていたり、協力家庭ではない人がショートステイとは関係なく遊びに来たり、そこもショートステイに来ている子に気を遣いすぎないというのがいいなと思う。

行政の委託事業として子どもを預かっているというと、どうしても何かあってはいけない、と大事にするあまり、子どもに付きっきりだったり、すごく気を遣ったりというので、お互い疲れてしまう。それがないのがいいなと思っていて、でもみんなその子をよく見ていて、「これに困っていそう」とか、サポートもそれぞれしている。れもんハウスにはそんなさりげない関わりが上手な人が多いというのもあるかもしれないけど、やっぱりショートステイに入っていない人もれもんハウスに来ているということで、特別感が出過ぎないということなのかなと。

大人2人で子どもを見る安心感

ーそうだね。いろんな人が普段から出入りしているから、お互いに交ざり合っている感じだよね。

みかん:そうなんですよね。子どもを一人預かるというのはやっぱり精神的にも大変だと思うんですよね。でもれもんハウスでのショートステイでは、最低でも大人2人がシフトに入っているし、プラスで、協力家庭ではなく役割がない人もその場にいてくれている。他にこういう場はなかなかないなと。

ーたしかに。「子どもを預かっている」という感覚はあんまりないよね。

みかん:そうなんです!それがすごく不思議で、だから私も「ただおうちに帰ってきて一緒に過ごしている」という感じなんです。「その子のために」というのが強いわけではないけれど、その子がいるからこそみんなが集まっているというのもあるし、その子に関係がない人も来ているし、その重なりみたいなのがすごくいいなあと。

ショートステイがある日のスケジュール

ーそうだよね。みかんちゃんが普段シフトに入るときはどんなスケジュールが多いの?夜だけ入るって感じ?

みかん:そうですね。子どもを迎えに行く16時とか17時とかに入ることもあるし、夜に予定がある日は22時くらいに来てます。(協力家庭メンバーでその日に)泊まれる人がいないというのもけっこうあるので、22時から入って朝までというのが多いですかね。平日が多いです。

ーたしかに、平日泊まれる人ってあんまり多くないよね。

みかん:そうですね。わたしは、22時からでもシフトに入れる、というのがけっこういいなと思っていて。夜に予定がある日もシフトに入れるので、ショートステイのために無理して予定をあけなくても、予定が終わり次第22時頃に行けるのがいいなと。

拠点を複数持つことは、大人にとっても大事

ーなるほどなるほど。ただ帰る家がいつもと違って、今日はこっち(れもんハウス)という感覚?

みかん:ほんとに今日はこっち(れもんハウス)という感じです。これは今住んでいる場所がれもんハウスと近いというのもあるかもしれないですけど。すごく助けられているんです。これがなかったら、普通に仕事をして帰るか、仕事をして会食みたいなパターンだけど、そこにもうひとつ選択肢があるという。1日のなかにそれ(ショートステイ)があるというのが、すごくいい。

ー仕事と家の往復だけじゃないということ?

みかん:そうですそうです。子どもはよく学校と家の往復だって言うけど、大人も結局仕事。仕事だけじゃないとしても、同じようなコミュニティというか、同じような人や場所と関わるだけで1日が終わってしまうので。そうではなく、しかも土日とかガッツリ1日使わなくても、違う環境に行けるというのは、自分にとってもすごく救い。

ーそれはあるかも。仕事と家の往復になっちゃうのは嫌だからなにか新しいことを始めようとすると、「休み調整しなきゃ」とか「他の予定も調整しなきゃ」となってしまうけど、帰る家を変えるだけというのは面白いよね。

みかん:それだけで変わる。無理せず、パッと人のつながりが広がるのは素敵だなと。

生活を共にすれば、自然と距離は縮まる

ーそうだね、無理せずだよね。でもショートステイは毎回違う子どもが来るけれど、そこに対して戸惑いとかはないの?

みかん:うーん。たしかに毎回違うけど、大人もいつも違うし、あんまり気にしたことがないかもしれない。大人と違って、初対面だからまず自己紹介しなきゃとかがないじゃないですか。大人同士だと軽くと思っても、意外と長々自己紹介しなければいけなかったり、会話のなかでもこの人の何かを聞きだそうとなってしまうけど、そういうのが子どもとだとあんまりない。

無理して自己紹介をするのではなく、その子が何かやっていたら一緒にその世界に入っていくという感じ。生活していく中で必要であれば、「そういえば名前なんだっけ?」とか聞いたり聞かれたりして、生活するなかで自然と距離が近くなって一緒にいるなと感じられるのは不思議というか、なかなかない感覚。

ーそうだよね。みかんちゃんにとって、ショートステイがめちゃめちゃ自然なことで、ただ子どもと一緒にいたり、だらだらしたりというのが、暮らしの一部になっているんだね。

みかん:ほんとにそんな感じで、生活の一部になってますね。

「おかえり」と「いってらっしゃい」ってすごく嬉しい

ーきっとそうだよね。それってめちゃめちゃいいね。みかんちゃんみたいな感覚で、もっといろんな人が協力家庭として関わってもらえたらと思うんだけど、これからショートを始める人とか興味をもった人に向けて伝えておきたいことってなにかあるかな?

みかん:わたしも自分で話していてめちゃめちゃいいなあと。興味をもった人に伝えることは…難しいですね…。それこそ預かるとかではなく、自分の生活の一部にこういう空間とか時間がスキマにちょっと入るだけで、充実感というかなんだろう。生活の一部になっていくので、「協力家庭になる!」というより、帰る場所が増えるんだという感覚というか、頑張る必要はないのかなと。

れもんハウスで、子どもたちやみんなから「おかえり」とか「いってらっしゃい」って言ってもらえるのもすごく嬉しい。自分が子どもや他のメンバーを「いってらっしゃい」と言って送り出すこともあるし、自分が出迎えてもらうこともある。そこが固定されていないというのは、シフトをつくってチームでやっているからこその良さだなあと。1人で全部やるとなると、「全部自分がやらなきゃ」と思ってしまうこともあるので。

ほんのちょっとの時間でも、この活動に関わることで、みんなが一緒にご飯を食べたりとかソファでくつろいだり、それだけですごく豊かになっていくなと思っています。

〈編集後記〉

いつも朗らかなみかんちゃん。最近のれもんハウスのショートステイはほぼ毎回みかんちゃんが入っていくれているので、義務とか責任を感じてないかな?とちょっと気になっていました。ただ、インタビューではそんな私の気持ちを払拭させるほど、生き生きと目を輝かせながら、ありのままの気持ちをお話してくれました。
みかんちゃんは、れもんハウスに行くこと、ショートステイを表すことについて、何度も何度も「おうちに帰る」と繰り返していたのが印象的です。みかんちゃん自身の安心感や自然体な様子が、ショートステイ中に共に過ごす子どもたちにも伝わり、彼らにとっても、れもんハウスでのショートステイは「おうちが増えた」というようなホーム感につながっているんだろうなと感じられて、じんわりあたたかな気持ちが広がりました。

話し手:林実香
聴き手&執筆:西角綾夏

子どもショートステイ協力家庭について
〈協力家庭になることに関心のある方〉
・新宿区にお住まいの方は、「新宿区子ども総合センター」のショートステイ担当にお問い合わせください。
・他自治体の方は、ご自身のお住まいの自治体名「〇〇市(区) 子どもショートステイ」と検索し、担当の係にお問い合わせください。
・里親登録されている方も子どもショートステイを受けることができます。
〈子どもショートステイを利用されたい方〉
・お住まいの自治体名「〇〇市(区) 子どもショートステイ」と検索し、担当の係にお問い合わせください。自治体によって対象者の条件が違うことなどがあります。