スナック 夕子 ①ママ
元カノの後釜でアルバイトを始めた。
まだわからないことだらけだ。
僕はあまり酒が飲めないし、客としてスナックに入ったこともなかったから言われたことをやるだけであまり役に立っている気がしない。
でも、それでいいらしい。
気だるいような雰囲気は居酒屋なんかとはえらい違いで同じ酒を飲む場所なのにどうしてこんなにゆるいのか。
元カノから連絡が来たとき、ほんのり期待したのになぜか未だ乳すら揉めず僕はここにいる。
どうしてこんな代わり映えしないメニューで飽きもせず客が来るのか。
どうして「ママ」が男性なのか。
どうして「ママ」は夕子じゃないのか。
「あんた、ありがとね。あたし背が低いからそこ届かないのよ。ほんと助かるわ~。」
「ママ、夕子って誰なんですか?」
「ああ、オーナーよ。知らない?アオミユウコ?」
「知らないです。有名な人なんですか?」
「あー、あんたの年じゃ知らないわね。まあ、いいわ。彼女が始めた店なのよ。あたしは後釜。まあ、ほとんどあたしの店みたいになってるけど。」
「・・・そうですか。」
「昔っからの知り合いなのよ。前はたまに顔見せたけどね。ま、そんな感じ。」
「ママが夕子じゃないんですよね。」
「そ。」
「ママはなんていうんですか?」
「は?名前?いーのよ、【ママ】で❗」
「はあ・・・。」
まだわからないことだらけだ。
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