見たかった景色_note

エピソードⅡ|見たかった景色 (前編)

 夢はどうやって見つけるんだろう?

  HONAMI(ほなみ)は、夢を追いかけている友達が羨ましかった。私は取り柄がないから夢なんて− そう思っていた。好きなことはあった。踊ること。野球好きの父親と観た楽天イーグルスの試合で公式チアリーダー「東北ゴールデンエンジェルス」に惹かれた。チアダンスって素敵だな。 憧れだった。まだ、夢ではなかった。

 オーディションを受けてみたらどうだ? ある日、父親に言われた。青森にプロバスケットボールチームができる。チアダンスチームのディレクターは八戸出身でエンジェルスの人だ。エンジェルス!胸が高鳴った。受からなくてもいい。エンジェルスの人にひと目会いたい。そう思って受けたオーディションにHONAMIは合格した。友達が電話してきた。すごいね、チアやってみたいって言ったの実現したね。そうか、私そんなこと言ってたんだ。HONAMIは夢を見つけていた。私はチアをやりたい。

 県初のプロスポーツクラブとして誕生した「青森ワッツ」。そのチアダンスチーム「ブルーリングス」の一員となったHONAMIは必死だった。踊るのは好きでも、学んだ経験はない。経験のあるメンバーに教わり、追いつこうとした。チアディレクターの岩舘千歩はエンジェルスと掛け持ちだった。月に一度仙台から来て指導する。表情、姿勢、歩き方。女性の模範になりなさい。ダンス以上に立ち居振る舞いを徹底した。気の緩みはすぐに見抜かれる。エンジェルスを見てきたHONAMIはそれが理解できた。間違いない。千歩さんは私をエンジェルスにしてくれる。千歩さんのようになりたい。岩舘が灯す夢への道筋を信じた。2年目の終わり、その岩舘が翌シーズンからプレーヤーとしてブルーリングスに加わることが決まった。

 千歩さんが一緒に踊る。嬉しいはずだった。でも、自分たちは力不足と言われているようにも思えた。すぐに違いを見せつけられた。開幕戦。隣で踊る岩舘は別人だった。みんなが見ているのは千歩さんだ。誰も私を見ていない。雰囲気でわかる。動画で見直したHONAMIの目にも岩舘しか映らなかった。同じコートの上で千歩さんは何を見ているんだろう。千歩さんはエンジェルスで何を見てきたんだろう。近づいたと思った夢はまだ遠かった。もともと悪かった膝の痛みもある。3年が経とうとしていた。そろそろ潮時かな。そう考えていたHONAMIに、岩舘が声をかけた。
 bjリーグファイナルズに出てほしい。

 bjリーグのチャンピオンシップ「TKbjリーグファイナルズ」には、全チームからチアが1名ずつ参加し、大会に華を添える。HONAMIは自分が選ばれたことが不思議だった。なぜ私なんだろう? もっと上手いメンバーがいるのに。そう思いながら有明コロシアムのコートに立っていた。すり鉢状のスタンドを埋める1万人の観客。秋田ノーザンハピネッツ対富山グラウジーズ。オープニング、照明が落ちた。その時だった。ブースターの灯すペンライトの光がスタンドを一斉に覆った。両チームカラーのピンクと赤の輝きが、最上段まで揺れていた。HONAMIは光の底で震えた。なんて綺麗なんだろう。エンジェルスを夢見た私が今、チアリーダーとしてこの舞台にいる。千歩さん、私はブルーリングスでこの景色を見たい。


 HONAMIはブルーリングスを続けた。Bリーグ元年の2016-17シーズン、メンバーは10人に増えていた。設立時のメンバーはHONAMIひとり。エンジェルスに憧れ、岩舘から教わったことを、 HONAMIはブルーリングスのリーダーとして後輩に伝えていた。ブルーリングスに憧れ、夢を抱いて加入してきた後輩たちに。こんな素敵なチームはない。たくさんの夢が叶った。しかし、 HONAMIの膝にはドクターストップがかかった。今年が最後。岩舘はもう何も言わなかった。

 ホーム最終戦はマエダアリーナだった。2000人以上の来場者。シーズンの感謝を込めて、オープニングにはブルーリングス・スペシャルパフォーマンスを披露する。照明の落ちたコートの中央、チアスピリットを共有するメンバーと円陣を組んだ。私たちはブルーリングス。さあ、いこう! 外を向いた刹那、HONAMIは震えた。アリーナを埋めるブースターの灯す青い光が、 HONAMIたちを包みこむように揺れていた。1年前、有明で見たいと願った景色があった。ありがとう、千歩さん。ありがとう、ブルーリングス。最後にもうひとつ、こんな素敵な夢を叶えてくれた。

 青く輝く光の輪に抱かれて、HONAMIは踊った。


PROFILE
HONAMI(ほなみ)  青森県五戸町出身。青森ワッツチアダンスチーム「ブルーリングス」に、2013-14シーズンから2016-17シーズンまで4シーズン在籍。4シーズン目はチームリーダーを務める。2018年11月17日のホームゲームで催された「ブルーリングス OG day」では、岩舘千歩チアディレクターや設立時のチームメートと一夜限りの共演を果たした。

ブルーリングス
青森を愛し、青森から輝く女性像を発信する。チーム名には、青く燃える情熱の炎が凛と輝いて輪(リング)となり、和を広げるという思いが込められる。Bリーグで戦う青森ワッツを鼓舞するパフォーマンスはダイナミックかつキュート。岩舘千歩ディレクターが「青森らしさ」にこだわったチアは、清潔感とエレガンスにあふれ、子供たちや県外ブースターからも人気を集める。Bリーグ発足前年のTKbjリーグではチアグループのベストパフォーマー賞も受賞。チアスクール生で構成されるブルーリングスジュニアチームとともに、青森ワッツのホームゲームを青く彩る。

episodeⅡ | text&photo: Hiroki Nakamura | photo: Shinji Narita

エピソードⅡ(前編)は、2018年12月4日付陸奥新報、デーリー東北別刷「chouchou(シュシュ)」に掲載されました。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

青森を「スキ」になっていただければ嬉しいです。ありがとうございます!
7
-美しい青森から美しく− Bリーグ「青森ワッツ」のチアダンスチーム「ブルーリングス」、美容成分「あおもりPG(プロテオグリカン)」配合、青森発の基礎化粧品ブランド「ラヴィプレシューズ」、弘前市の新聞「陸奥新報」のコラボレーションによる"青森美人ストーリー"。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。