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俺は演劇リボルバーSeason2【3】マーダーバラッド

マーダーバラッド。

このチラシを引いてからというもの、私の胸にずっと重くのしかかっていたことがある。

チケット料金 全席指定 10,800円

たっ

っっ

っっ

かっ

っっ

っい!!!!

演劇リボルバー始まって以来の大台超えである。

今までのシアターコクーンは中二階立ち見席という裏技を使うことができた。

しかし、当日券の状況を調べてみる限り限り、立見は出ていない様子。

禁断のチケットキャンプか……とサイトを見てみる。

見事な値崩れ。

ポチッ!

と、速攻で押したくなったのだが、俺は演劇リボルバー。不当な行為は美学に反する。ということで、ギリギリのモラルで我慢しました。

あー10000円か……。重い足取りで劇場に向かう。駅ではあしなが育英会の募金活動をしていた。
支援を求める若者の声が改札口に鳴り響くのを背中に聞きながら、今から払うチケット代金分を寄付したほうが世のためになるのではないのだろうか……と葛藤しつつ、向かったのは天王洲銀河劇場THE GALAXY THEATRE。

閑散としている当日券売り場に向かい、「当日券一枚ください」というと「10800円です」とご丁寧なお返事。今空いている席が、と示されたのは前から3列目、2階席など。

「2階でも同じ値段ですか?」

「はい。どこでも観やすい劇場なので料金は同じです」

と、笑顔で返される。もうね、リボルバー肚をくくりました。じゃあ、ってんで前から3列目をチョイス。財布から万札を取り出して受付に差し出してやったぜ。さようなら、一万円札……。

ホワイエに向かう階段を登っていく途中にはロビー花のリストや出演者のポスターが貼られていて、何だか華やかな雰囲気。いつもと違うアウェー感が漂います。

さらに、ホワイエにはキャストのパネルが設置。無駄に多いグッズの数といい、アイドルのライブ会場と行った様相である。

すでにスモークでぼやけている客席を見渡すと、ほぼ女子、女子、女子。舞台上の席にも妙齢の女子。たまにいるおっさんが目立つ!
そんな中、巨大なスピーカーが目の前にある3列目のかぶりつきの席に陣取った。

さて、マーダーバラッド。お話はこんな感じです。

サラがかつての恋人トムと不倫。それを知った夫のマイケルが激昂して修羅場。

……一言でいうつもりもないのに一言で事足りてしまった。

冒頭、作品のテーマとなるマーダーバラッド(殺人者のバラード)をバックに、誰かの葬儀のシーンから始まります。誰が殺され誰が殺すのか……。というサスペンス感高まるオープニング。

中川晃教(トム)、平野綾(サラ)、橋本さとし(マイケル)、濱田めぐみ(ナレーター)という、粒ぞろいの四人の役者が、硬質のギターロックの生演奏をバックに全編歌いっぱなし、1時間半ノンストップのロックミュージカルです。

オフ・ブロードウェイで好評を博したというだけあって、楽曲を聴くだけでも結構いい。Spotifyで全曲聴けるので、気になる方はどうぞ。
例えるならば、スクールウォーズのオープニングのような疾走感を感じます。

日本語版の訳詞は森雪之丞。森雪之丞といえば、キン肉マンGo Fight!(キン肉マン)、CHA-LA HEAD-CHA-LA(ドラゴンボールZ)、お料理行進曲(キテレツ大百科)、学問のスズメ(おれは直角)、ガンモ・ドキッ!(Gu-Guガンモ)など、我々の世代にとってはもはやDNAレベルで刷り込まれているアニメ主題歌の作詞家である。七五調のリズムがなぜかしっくりくるように、森雪之丞の言葉がなぜかしっくりくるのも不思議ではない。

ミュージカルはほとんど観たことがなかったので、ミュージカル独特の文法のようなものに驚かされた。
例えばサラとマイケルのなれそめのシーン。
サラがマイケルと路上でぶつかるという典型的な偶然の出会いから2分ほどのなれそめソングをデュエットした後、ナレーターが「サラとマイケルは結婚♪」とナレ死ならぬナレ結婚して、2分ほどで子宝に恵まれます。

この展開の速さ。これがミュージカルかー、と感心しているのも束の間。あっという間にサラとマイケルの夫婦仲が冷え切ってしまい、サラはかつての恋人トムと不倫。それがマイケルに見つかってさあ大変。トムの働いているバーで修羅場が繰り広げられます。マイケルが怒りに任せてトムをぶっ殺す!かと思いきや、思いとどまってサラを連れて帰ります。

あれ? 誰も殺されないじゃん、と思ったのも束の間、物語の語り部だったナレーターがいきなりブチ切れて後ろからトムに襲いかかり、トムは金属バットで凄惨に嬲り殺しにされてしまいました。流れてくる殺人者のバラード。かわいそうなトム。暗転。場内に鳴り響く拍手。

え???

おしまい???

あまりの唐突さについていけず、呆気にとられていると、舞台上が明るくなり、カーテンコールと思いきや、もう一曲、今までとは全く違うノリノリの曲が流れてきます。

何事もなかったように飛び跳ねるトム、いや中川晃教にうながされるがままに観客総立ち。リボルバーもなんだかよくわかんないけど総立ち。

ラ・ラ・ラ・ララ・ラ・ラ・ラ・ララ・ラ・ラ・ララ・ラ♪
ザッツ・エンタテインメント!!

音楽に合わせてキャストがタオルを振る。後ろを振り返ってみると、客席もみんながタオルを振っている。

こ、この光景! これは、等々力競技場の風景! 私の愛する川崎フロンターレがゴールを決めた時のサポーター席そのままではないか!

何だかよくわからないけど血が騒ぎます。俺も振れるぞ、タオル振るの、慣れないと結構難しいんだ。手首の返しが大事。そうすれば手に巻きつくことなくブンブン振れて気分が上がるんだぜ!ほら、こんな風にね!

と、気づいたら手持ちのマフラーをブンブンに振り回していたリボルバー。こんなことなら開演前にフェイスタオルをグッズ屋で買っとけばよかったと後悔しました。

左腕の心地よい疲れとともに、曲が終わると、そのままキャスト4人のアフタートークに突入。

観客の皆様のおかげで千秋楽を迎えられました!と強調するキャストの皆様。何だかすごく応援したくなりました。

なるほど、この感覚! ブンブンタオルに大合唱。ミュージカルの公演では、劇場はスタジアムに、観客はサポーターになるのか、ということに思い至った瞬間、いろんなことが腑に落ちました。

ミュージカルで特に多い出待ち。するする、フロンターレの試合終わった後、選手の出待ちするわ。チケット代が高いのも納得。応援したいんだったら買うことは決まっているから別にチケット代いくらだろうが関係はない。

終演後のロビーに出ると、妙齢の女子たちが皆、顔を綻ばせておりました。1時間半、殺人のお話だったけど、最後のカーテンコールで全部覆してみんな笑顔で帰らせるって力技、凄いわ。

イメージカクテルで一杯やりながら語らうもよし。

等身大パネルと記念撮影もよし。

なんと、サイン入りパネルプレゼントも。リボルバーは一番応援したくなった平野綾さんに投じて参りました。

今回の観劇で私が得たものは大きい。まず、ミュージカルをサッカー観戦と捉えることで色々なことが腑に落ちたこと、そして、観たくもない芝居に10000円を投じた経験により、チケット代のK点越えを果たしたこと。

しかし、なんでしょうか。この観劇後の爽快感。浄化されたという感じ。温泉にでも入ったかのような爽快さです。チケット代が高かったことも忘れて、鼻歌交じりに銀河劇場を後にしたリボルバー。

頭カラッポの方が夢詰め込める♪

頭に鳴り響いていたのは、森雪之丞作詞のドラゴンボールZの歌でした。

That's Entertainment!


ということで、チラシ引きの儀。立会人はワイングラス片手にかなりゴキゲンな3人です。

(会場協力:イタリアンバルUOKIN)

今回は、机に鍵盤のように並べられたチラシの中から引き当てる方式です。

ちなみに、遠くから見るとこんな感じ。完全に変質者です。

上原ひろみばりの超絶テク!
そして、引き当てたチラシはコレだ!!

ヘンリー四世@新国立劇場

よっしゃー! ミュージカル地獄に陥らずに済んだ! と、喜んだのも束の間。これ、第一部と第二部ってあるんですけど……。

まあそんな細かいことは気にすんなリボルバー! がんばれリボルバー!! それいけリボルバー!!!

ということで、何となく今まで積極的に求めておりませんでしたが、今回のチケット代の出費がマジでやばいので、投げ銭おねだりしてみます。

何もないのもなんなので、どこにも発表するあてもないのに勢いで書いてしまった維新派の『アマハラ』の感想を置いておきますのでご笑覧遊ばせ。

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