バーチャルという存在と歌という命の実在性(約1800文字)

バーチャルYouTuber(以下Vtuberと呼ぶ)。世間的にはそう呼ばれる存在はこの1、2年で爆発的なブームとなり、彼ら彼女らは今日日単なるYouTuberなだけではなく様々な場所で活躍の幅を広げつつある。
私もまた、“Vtuberファン”から「四天王」と呼ばれていたキズナアイを始めとする5人のVtuberの名前をたまたまTwitterのフォロワーが話題にしていて、本当にたまたたその動画をみたところからこの世界に飛び込むことになった。それこそいままでYouTubeなんてろくに見たこともなかったのに。

企画動画や実況配信を楽しそうに遊び、語り動き回るキャラクターたち。バーチャルという世界では現実世界ではなれない自分になれる。出来ないことが出来る。バ美肉(敢えて現実とは異なる性別の姿をとって活動する)できる。時に突拍子もない行動をとったりする彼らにアニメキャラクターとは異なる新鮮さを感じたのだと思う。
そして私はときのそらという少女に出会った。
彼女もまた配信を主体に活動するVtuberだった。彼女を見つけたのも本当にたまたまでしかなかった。彼女はひたすらに純朴で、真摯で、弱くて、それでいて強い芯をもって活動に取り組んでいた。そんな姿に自分は心を打たれたというか、尊敬みたいな思いを感じたのかもしれない。
バーチャル(仮想)という存在に命(実在)を感じたのかもしれない。

ときのそらは自身の夢のために音楽活動を始める…奇しくもVtuberシーンもまた、沢山のアーティストやクリエイターがバーチャルという新たな生命と新たな活動の場を得て動き始める、そんな転換期に。

そしてAZKiが誕生した。AZKiは先に挙げたときのそらと同じ事務所に所属する“後輩”にあたる。そんな経緯で活動初期から彼女と走り続けてきて、AZKiの音楽活動、そしてここまで3回に及んで開催されたライブを通して私は音楽の世界に引き込まれた。彼女たちの織りなす音楽、空間、時間はたしかに生きていて、動いていて、進化していた。

そんな彼女が満を持して送り出したのが「without U」である。
外っ面だけをみたら小さな一歩かもしれない。ただ、この音楽はたしかに生きている。
正直な話自分は語彙力もある方ではないし、小中学生の頃にピアノを少しやっていたけれどそれ以降は特に音楽に触れることはなかった。友人とカラオケに行くのは好きだったし、アニソンは結構聴いていた。UVERworldが好きだったので彼らの曲はよく聴いたけれど、別にライブに行くほどでもない、人並み程度だと思う。
ただそれでもwithout Uのこの音楽が生きて、叫んで、全ての想いと心と可能性が溢れてくるのを感じることはできる。
音楽は世界を変えられるのではないか?

収録曲13曲は携わったクリエイターがそれぞれ違っていて、当然曲調も異なっている。その13曲を歌いこなすAZKiは間違いなく歌姫のそれである。もちろん持って生まれた才能だけじゃなく、自分たち聴く側には想像出来ないような努力や苦悩があったことだろうが、それはまた別の話。

とにかくwithout Uを流すと13曲全てが終わるまで聴き入ってしまう。そしてまた再生ボタンに手が伸びる。
1曲めの表題曲である「withoutU」からロック調の曲が続き、「虹を駆け抜けて」から穏やかな、静かな曲に移り変わる。それらはアニソンのアルバムみたいなものでしょ?というこちらのバイアスをぶち壊して、整地して、作り変えてくれる。Vtuberの音楽なんでしょ?という認識すらももはや必要ない。

Vtuberの世界を通してAZKiが見てきた光と闇、希望と絶望。そしてそれぞれのクリエイターが見るAZKiの姿、伝えたい想い。それらの全てが13曲に込められている。それは仮想の存在ではなく、命をもち実在するものだと言える。AZKiを好きな人や、ホロライブが好きな人、Vtuberが好きな人はもちろん、そしてむしろ音楽が好きな人にこそ聴いて彼女という存在の生きてきた軌跡とこの先の歩みを見て欲しいのである。

正直な話、Vtuberはもはや“Vtuber”という型に嵌められている時代は終わったと思っている。花譜が所属するKAMITSUBAKI STUDIOは自身らの活動の宣言とともにこう述べた。「新たな枠組みをつくり、それが形骸化したらそれを壊してしまう」と。
今こそVtuberという枠を壊して正しく音楽の世界を開拓していくときなのだと、VtuberではなくVirtualDIVAを名乗るAZKiとこのwithout Uにはきっとそれが出来るし、他ならないあなた(YOU)という存在があってこそこのアルバムは完成する。

ぜひ一度このアルバムを手にとって、確かに実在するAZKiという命の存在を感じてみて欲しい。
まだ見ぬ未来に出会う開拓者への感謝をこめて。乱筆乱文にて失礼いたしました。

AZKiとは

「AZKi(あずき)」はカバー株式会社の運営するバーチャルタレント事務所「ホロライブ」に所属するアーティスト・バーチャルYouTuberである。
2018年11月より活動を開始し、YouTubeにおいては「歌ってみた」や自身のオリジナル楽曲動画の投稿、生放送や他のVtuberとのコラボ企画などの活動をしている。
また、デビュー直後に「オリジナル楽曲8ヶ月連続リリース」企画を打ち出し、2019年8月ですべての楽曲が配信済みである。
バーチャルの身でありながらAR・VR技術を活用した現実世界でのライブイベントも精力的に参加・開催して(今回の「レペゼンエンタス」がAZKi単独ライブの3回目である)おり、バーチャル・リアル問わずアーティストやバーチャルYouTuberをゲストに招きトークを行う「AZラジ(あずらじ)」など様々な新しい取り組みも行っている。
11月12日に自身初となる全国流通1stフルアルバム「without U」を発売した。また12月29日には池袋harevutaiにて4thライブ「REPEAT THiS LiFE WiTH U (AZ輪廻)」が開催される。チケットの一般販売は11月15日より開始され、最も安価なチケットは1,000円となっている(別途ドリンク代あり)ので、興味のある方は下部にあるAZKiのTwitterをチェックしていただきたい。

●AZKi Twitter 


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