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ひとり日和 青山七恵

高校を出た埼玉の女の子が笹塚の駅のホームが見える古家でお婆さんと一緒に暮らす約一年間の話。物語を支えるのはこの娘の在り方。少し暗く拗ねていて図々しくダラダラと内向し、他人の些細な物を軽く盗んでコレクションしているようなところがある。熱のないような恋愛もする。一緒に暮らしている遠い親戚にあたるお婆さんはダンスで知り合った老人の男とゆるく付き合っている。母は中国の大学へ学びに行きたまに帰ってくる。歳をとることの中での出来事の大変さをこの娘はぼんやりと恐れている。だから大変さに立ち向かう熱も力もなく、老婆を眺めるように暮らしている。翌春、好きな男と別れたことでアルバイトに入った会社で正社員となる。寮へ入るために老婆と別れて古家を離れる。ごくわずかな歳をとるということへの歩み。前を向くことのない女の心中には正直同情も湧かない。そういうひねたような生き方をしている女の子も結構いるのか、いや、偽善的にでも前向きにならなければ生きていけない現代の青春を取り巻く環境はこんなことなのかもしれないと突き放すように感じた。

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