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「Black Box 」を読んで

この法治国家で、逮捕状が出て準備が整い、逮捕直前でそれが取り止めになる。

そんなことがあるのかと思った。

おまけにこの事件に関してや著者の会見の報道はTVではほぼされていなかった。準強姦というsensitiveな内容ではあるが、それにしてもだ。

何が起こっているのだろう。
私がこの本を手にとった理由である。

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以前東京の捜査三課で働いていた、とある彼に、

「ねぇねぇ、踊る大捜査線みたいにさ、上から圧がかかるってことあるの?ドラマと現実ってどのくらい違うの?」

と好奇心からくる軽い気持ちで聞いた事がある。守秘義務の範囲内で彼から聞く仕事の話はオレオレ詐欺だったり、窃盗だったりしたから、上からの圧力などはあんまり関係なさそうだった。だからあれはドラマだよ~というライトな返しがくるかと思ったけど、

「まぁ、まぁ、まぁ、でも警察も大部変わってきてはいるよ」

とボソッと放った言葉に、彼が大きな組織にいることと、強い正義感もあるが出世願望もある彼がそこに居続けるためには、もしかしたらこの先自分の一番大事な部分を殺すこともあるのかも知れないと少し不安に思った。

けれど、変わってきていると彼は言った。
この情報社会で圧力や揉み消しや情報操作も限界があるのだろうなとその時は思った。

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全然変わってない。
というか、これでも変わってきているなら昔はどんなだったんだ。
縦社会の弊害だけでなく、被害者に対しての対応も。

この本を読んでそう思った。

著者が事件からこの本を出版するまで、この本にかかれた自身の言葉から想像する以上の葛藤、苦しさが秘められていると思う。
著者だけでなく、家族も同じだ。

出版してからもだ。

それでも身を呈して誠心誠意これを世に出した著者に対して、敬意とか感謝とか言葉を使って表したいのだけれど、そんな2文字では全然軽くなってしまう気がして自分の今の気持ちを表現する言葉が見当たらない。

今更ながら立法、司法、行政、報道、改めて全然分立していないことを思う。

そして、この本により救われたり、社会通念により自分に非があると認識している女性にも風穴をあけるように思う。

またこの本では女性に対しての医療や制度についての問題提起もされている。

少しずつ良い方向に変わっていけるように、選挙に行くとか、感心をもつとか、小さなこと、諦めないで今自分ができることをする、それしかないなと改めて認識する。