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敬天愛人

NHK の西郷どん。
私が抱いてきたイメージと随分異なりとても魅了されたのでここにメモ。
影響されやすい私は早速鈴木亮平氏がタイプになってしまった。

大河ドラマは全く観ないのだが、西郷どんだけは最後までみてしまった。



生涯ずっとずっと、民のためにこの国のために、駆け回ってきた西郷どん。

共に命をすり減らしながら同じ想いを夢を持って生きてきた幼なじみで親友、いや恐らくそれ以上だった大久保利通とやっと成し遂げた明治維新後、二人は仲違いし西郷は明治政府を去る。


西郷は、故郷に戻り農業をし、維新後に路頭に迷うサムライ(士族)が生きていけるよう学校を作る。
明治政府内で、相当卑怯な仕打ちを大久保に受けたにも関わらず故郷に戻った西郷は、自分とは異なった大久保のやり方をそれでも見守り遠くで応援しながら、自分に出来ることをしようとする生きざまがある。
そこに怒りはない。
腐敗にまみれた新政府に絶望したとしても、それでも大久保の国作りの力を信じた。


しかし、明治政府に不満をもつ西郷の学校に通う血気盛んな士族が起こした事件と、彼らからの人望の厚さより、新政府の的になってしまい、最終的に西郷は新政府に刃を向けざるおえない状況になる。


新政府の大久保は西郷軍に圧倒的な攻撃を仕掛け、ぎりぎりのところで西郷の投降を呼び掛ける。投降すれば西郷だけは助ける、しなければ明朝に総攻撃をするという。それは天皇に背むいた国賊として汚名の死を意味する。あれだけ民と天皇にも尽くした西郷がだ。

電文をみて西郷どんは、悲しげに穏やかにつぶやく
「甘かとは、おはんだ一蔵どん(大久保)、おいに情をかければ自分で自分の首を絞めることになっど、こげな情けは受けられん」

少数になった西郷軍の部下が投降を西郷に願う(なら、最初からもうちょい血気を押さえてくれよ~士族達~!!)
西郷はそこでも


「ありがとな~じゃっどん、ここは死なせてくれりゃい。こん国から戦をなくすために俺は死なぬとならんとじゃ、おいが死ねば、日本国中の士族たちがようやく別の生き方を見つけようとすっじゃろう、おいが死とともに新しか日本が生まれっとじゃ」

それにみんなをおいて、自分だけが助かれるはずがなかろうと大久保からの電文を薩摩の山で破る。

今まで、顔色一つ変えず冷淡な命令のみを下していた大久保の慟哭が東京に響く。


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私は西郷どんは、ずっと新政府への不満から士族を従え西南戦争を起こしたのだと思ってきた。

本当の本当のことはわからないけれど、事実に近い描かれ方なのではないかと思う。
無念の最後ではなく、すべて自分の運命を悟りながら、民と大久保と士族への愛のある最後。

目指すところは同じだったはずなのに、そこにたどり着く考えが違うだけで、二人は敵になる。

林真理子さん原作のこのドラマは、西郷と大久保の交差する気持ちと愛と苦しみが痛々しく表現されていて、すっかり心を捕まれてしまった。同士の切なすぎる離別


どうしてこんなに薩摩藩士に心を奪われてしまうのかわからないが、時代ゆえに、荒波に揉まれたこの愛と葛藤と希望と野心の熱量にどうしようもなく惹かれてしまうのだ。


欧米列強に同じ方法で追い付き、各国に負けない国を作ろうとした大久保。政府の汚職や腐敗を嫌い、日本のよさを残しながら農業を大事にしながら強い国を作ろうとした西郷どん。二人共に政府に残っていたらまた少し違ったのだろうか。

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西田敏行演じる、西南戦争で片足を失った京都市長の言葉がまたしみる。


京都市長室

秘書「西郷先生はどんな気持ちで亡くなられたのでしょうか」

市長「うん、私もそれを考えてきました。
新しい時代が大きなうねりとなって押し寄せて来た時、どうしてもその波に乗りきれない人がいるものです。父、西郷隆盛はあの大きな体で、厚い心でご維新から取り残されたサムライ達を、抱きしめ、のみこみ、連れ去りました」

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敬天愛人

何となく見聞きしていた言葉だか、このドラマを見た後、自分の中で随分と重みがました。