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イマジネーションは、恐怖にもなり生きる糧にもなり創造の源だ。ただ私達が生きているのは今ここだ。

パペットアニメーション映画「ちえりとチェリー」を浅草で観てきた。

久しぶりの浅草。外国人観光客が数年前よりずっと増えていて雨でもごった返していた。人力車の素敵なお兄さんが私みたいなおばちゃんにも目を合わせて笑ってくる。向こうにはお金にしか見えていないと解っていてもちょっと上がる。



目的地の合羽橋商店街は、トレードマークの河童が個々の店の看板にスーパーマンのように飛んで描かれている。
なぜスーパーマンなのだろうか。
河童の作者は萩原楽一氏。描く女河童は凄く色っぽい。そして全て目を閉じている。
なぜ目をあけないのだろうか。



巨大なカブトムシがベランダにとまっているビルがある。あの部屋の住人は景色の変わりに巨大なカブトムシの腹をみるというレアな体験をしている。
つらくないか。
家賃にはカブトムシ割がついているのだろうか。

気になった人は、カッパ橋商店街をあるいてみてほしい。


そんなこんなで合羽橋シアターSUPROUT に到着してビビった。

カフェ併設。おしゃれすぎる。



席に座ると星野源のドラえもんの曲が流れ、スクリーンには青いワンピースのリアルな女性2人。パンツが見えそうなことばかり気になって仕方ない。




上映はチェブラーシカ動物園に行くとちえりとチェリーの二本立て。

ちえりとチェリー


パペットゆえに醸し出される目の表情が憂いをおびていてとても印象に残っている。


お誘いしてくれたNさんは流石、背景なども良く観ていてその素晴らしさとコマ撮り映画の創造への敬意を、会場に来てくださった中村誠監督に伝えていた。

私はそこまで目がいっていない。後で背景のほこりの描き方がすごかったとN さんに言ったら「あれはたぶんC Gだよ」と教えてくれた。同じ目玉2つなのにこうも違う。



こんな質問も出た。

男の子『なんで最後、あの終わり方にしたんですか』

監督『実はあの手前で辞めようとしたんですよ、でもそれだとその先は自分で答えを出す、大人向きになっちゃうかなと思って』

男性『お父さんの声、チェリー(ちえりがいつも持っている人形)をお父さんぽくない星野さんにしたのはどうしてですか』

監督『チェリーをお父さんでもあり親友でもありっていうふうにしたかったからなんですよね』

コマどり映画は膨大な時間と労力がいる。商業的な映画作りや上映方法とは真逆の道をゆき、自分の好きをつらぬく監督に魅力を感じた。

この作品は手を上げた人が開く上映会によって製作から2年経った今でも月数回どこかで上映されているとのこと。


美しい造形と美しい物語。素晴らしい映画をありがとう。 私はちえりの「父親の死という不幸への優しくて美しい歩み寄り方」にとても心動かされました。
成長するために戦わないといけない恐ろしさは、実在している敵ではなく、自分の中にあるという点も好きです。
空想はいいもので、美しいものです。
でも空想の中に生きることで、その異世界で生き迷ったり、自分の周りにいる人を忘れることはとても危ないことです。
「ちえりとチェリー」は子どもたちに「現実の人生について考えさせる映画」として成功した作品です。
そしてこの物語を表現するために、ストップモーションアニメーションという技術を選んだことを誇りに思います。ありがとう。

クロード バラス/「ぼくの名前は、ズッキーニ」(アカデミー賞長編アニメ賞ノミネート作品)監督