漫才エッセイ【朝市】

青瓜:はいどうも、よろしくお願い致します。
   まあ漫才エッセイなんですけども。

空也:急に漫才エッセイじゃぁないんだよ。
   コミックエッセイのフリして木陰から顔を出すなよ。

青瓜:そうそう、コミックエッセイ。
   コミックエッセイって読みやすいですよね、絵があるから。
   それに対抗すべく、私は漫才エッセイを書きます。

空也:漫才は書くものじゃないだろ。
   漫才はどちらかと言えば聴くモノだろ。

青瓜:でも文字にしてあると自分のペースで読めますから。
   あくまでエッセイなんで。

空也:漫才形式のエッセイって読みやすいのかな?

青瓜:まあ読めるお方は読んでください。よろしくお願い致します。

空也:そうなりますか。
   では、こちらからもよろしくお願いします。

青瓜:これは私が朝市に行った時のエピソードなんですけども。

空也:勿論、実話だよね?

青瓜:そうです、私が実際に体験したエピソードです。
   2021年の10月頃だったと思います。

空也:最近は冬になるギリギリまで暖かいので寒くは無さそうだね。

青瓜:そうですね、歩いていれば全然寒く無かったですね。
   確か。

空也:確かって……うろ覚えの発露じゃぁないんだよ。

青瓜:2年前になってくると、いよいよですよね。

空也:忘れていくことを”いよいよ”と呼ぶな。
   楽しげな祭りじゃぁないんだよ。

青瓜:当時はコロナ禍だったので、マスク生活だったんですが、
   まあ田舎の朝市なのであんまりマスクしている人がいなくてですね。

空也:田舎が理由なのか。

青瓜:もう買う側も売る側もお年寄りしかない、
   寂れに寂れてしまった、とある朝市を散歩している時の話です。

空也:何でスタートみたいなフリをもう一回入れたんだよ。
   既に始まっていたけどね。

青瓜:声のデカい手作りのお菓子屋さんがあって、
   そこの店主がマスクをアゴにかけているという
   無意味をやってらっしゃって。

空也:マスクが装飾品になってるお方ね。

青瓜:まあお菓子が好きなので寄ってみると、元気良くその店主は、
   「この大福を食べないか?」とか
   「このゴボウまんじゅうを食べてみないか?」
   など、まあアゴマスクでよく喋る喋る。

空也:でも気さくでいいじゃないか。

青瓜:私はオススメされた品は断って
   ”パイの実”というお菓子を買いました。

空也:何でだよ、急にLOTTEの登板じゃぁないんだよ。

青瓜:道の駅でゴボウまんじゅう買ったばっかりだったんで。

空也:ゴボウまんじゅう買ったばっかりのヤツなんているんだ。

青瓜:同じタイトルの有名商品がありますが、
   まあ多分パイ生地にあんこが入っているような
   商品なんでしょうね、パイの実は。
   和菓子屋さんだったので。

空也:パイ生地であんこのヤツって結構美味しいよね。

青瓜:他の大福などは
   トレイにラップで蓋をしていたんですが、それらとは違い、
   TEA TIMEと書かれている紙袋に入っていたので、
   見た目は分かりませんが、多分そうだと思います。

空也:勝手に食べ時を指定されてるじゃん。ゆうげみたいな。

青瓜:買って帰ろうとすると店主に呼び止められて、
   何だろうと思っていると、どうやらおまけをくれるようでした。
   一品しか買っていないのに悪いなぁ、と思いました。

空也:めっちゃ良い店じゃん。

青瓜:先に結果だけ言うと保冷剤代わりの
   凍ったヤクルトのようなモノがもらえたのですが、
   何故かそれが見当たらない、と。

空也:全部配り終えたのかな? 数の確認してなくて。

青瓜:すると突然店主が「チクショウ!」と叫びました。
   何だろうと思っていると、その店主は天を仰ぎながら、
   「あのさっきの客! 全部持っていきやがった!」
   と声を荒らげました。
   どうやら一個渡す予定のモノを全部盗まれたようです。

空也:スラム街かよ。

青瓜:結局、クーラーボックスの中から新しいパックを取り出して
   ヤクルトのバッタモンみたいなヤツを一個頂きました。

空也:ヤクルトのバッタモンって種類いっぱいあるよな。

青瓜:その中でも特に知らないメーカーのヤツ。

空也:バッタモンのメーカーって、
   器の形を発注する時に
   「ヤクルトのヤツで!」ってハッキリ言うのかな?

青瓜:私は、もうマンキンの、恥ずかしさゼロで言うと思います。

空也:まあそこ恥じらったら、日和っていると思われるもんな。

青瓜:そんなバッタモン受注記録はいいとして、
   私はおまけをもらったし、
   帰ろうとしたその時、店主は笑顔でこう言いました。
   「次来る時まで死ぬなよ!」
   いやこの朝市はお年寄りが多いところですが、
   私はまだ当時34歳ですし。
   どちらかと言えば若く見られることが多いですし。
   多分反射的にお客全員へ言ってるんでしょうね。

空也:パブロフの犬かよ。失礼ジョークだし。
   カセットテープ店主じゃぁないんだよ。

青瓜:ある程度散歩を楽しんだら家へ戻り、
   早速買ってきたパイの実というお菓子を食べることにしました。

空也:それは楽しみだな。

青瓜:TEA TIMEと書かれた紙袋の裏面をなんとなく見てみると、
   『このティタイムは紅茶に合うケーキです』
   と書かれていて、これ店ではパイの実と書かれていたけども、
   ティタイムという手作りお菓子だったんだと思いつつ、開けました。

空也:できるだけ伸ばさない教育を受けているじゃん。
   ティータイムだろ、普通は。

青瓜:開けると、
   銀袋が見えてきて、LOTTEのカスタードケーキでした。

空也:パイの実のフリして木陰から顔を出すなよ。
   もういいよ。

頂いたサポートは活動費に使わせて頂きます。