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人を動かすに足る「ビジョン」の考え方


自社の存在意義を言語化したり、Purpose(パーパス)を新たに策定する企業が増えています。存在意義は「Who we are ?」「Why ?」を言語化したものであり、ビジョンにかなり近い概念と言っても良いでしょう。

そこで今回は自社や自分たちの部署で新たにビジョンを策定する際にヒントになるようなことをお伝えできればと思います。



ビジョンとは何か?


まず、ビジョンとは何か。ビジョンとは自分たちの「在りたい姿」≒「なぜやるのか?」≒「目指す状態」を言語化したものです。(要素1)

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いいビジョンは、これ以外に2つの要素を持っています。

第2の要素は「実現困難であること」です。普通に頑張れば実現できそうなものであれば半期や四半期の目標でかまいません。ビジョンというのは何年も時間をかけてでも追うべき価値があると感じられるものとなります。

第3の要素は「win-winであること」です。「業界シェアNo.1を目指す!」はビジョンではありません。内向けの目標です。いいビジョンというのは、自分たちの組織外(世の中や社会、各種ステークホルダー)の役に立つ要素を含みます。


似ているものと何が違うのか?


ビジョンに似ているものとしては「ミッション」「バリュー」があります。これらは時に混同されがちです。以下のように整理しておくと良いでしょう。


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ちなみに、これらをちゃんと連結・整理できている企業の1つにアマゾンがあります。見てみましょう。


アマゾンのビジョン
(Who we are ?)


Earth’s most customer centric company
地球上で最もお客様を大切にする企業

先ほどの3要素「在りたい姿」であり「実現困難」であり「win-win」となるビジョンとなっています。さすがです。


アマゾンのミッション
(What we do ?)


customer obsession rather than competitor focus
競合他社を意識するのではなく、お客様にこだわる
passion for invention
発明への情熱
commitment to operational excellence
オペレーショナル・エクセレンスへのコミット
long-term thinking
長期的な視野で考える

※日本語は私の意訳です

それでは、地球上で最もお客様を大切にする企業になるためには、何をするか。アマゾンではこれらの4つのアプローチを掲げています。What we do?に対して、「オンラインストア事業で成功する」ではなく、「どの事業であれこの4つを実現させる(この4本柱があれば実現できる)」としているのがアマゾンの強みなのかもしれません。


アマゾンのバリュー
(How we do?)


Leadership Principles
https://www.amazon.jobs/jp/principles

1. Customer Obsession
2. Ownership
3. Invent and Simplify
4. Are Right, A Lot
5. Learn and Be Curious
6. Hire and Develop the Best
7. Insist on the Highest Standards
8. Think Big
9. Bias for Action
10. Frugality
11. Earn Trust
12. Dive Deep
13. Have Backbone; Disagree and Commit
14. Deliver Results

地球上で最もお客様を大切にする企業になるために、従業員個々人はどのように考え、取り組むか(≒行動規範・価値基準)。アマゾンではこれら14項目を「Leadership Principles」として掲げ、採用時や入社後の評価項目にも用いています。


ちなみに、ビジョンとミッションについては、けんすうさんのこの解釈も分かりやすくて参考になると思います。解釈や定義はさまざまあって良く、要は関係者間でズレがないように共通認識が得られていればいいのかなと思います。


ビジョンは何のために存在するのか?


最後に、ビジョンはなぜ必要なのでしょうか?そもそもビジョンは必要なのでしょうか?

私の個人的な考えとしては、必要性を感じていないうちは、または事業の方向性自体がまだ定まっていない状態であれば急いで作らなくてもよいかと思います。ただ、いいビジョンがあり、そして浸透することで、以下のような効用が期待できます。

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そう、ビジョンというのは「動かす」ためにあります。

1.「上に・前に」動かす

いいビジョンには、組織のメンバーを現在の姿に満足させず、さらなる高みを目指させる力があります。価値を感じられる実現困難なビジョンを掲げていれば、「ここまで来れたらいいんじゃないか」という思考にはなりづらいのではないでしょうか。

2.「強く」動かす

いいビジョンには、メンバー個々人の意欲や情熱・エネルギーを最大限にまで引き出す力があります。もちろん、仕事をゲーム感覚・クエストクリア感覚で進めていける人もいますが、目的や目標を大切にする人にとっては「Why」が原動力になります。

3.「自ら」動かす

いいビジョンには、実現のためにメンバーが「自分は何をすべきか」考え、自律的に動かす力があります。目指すべきものが不明確な状態では「私の仕事は上司に言われたこと」となりがちですが、目指すものが明確だと「そのために自分は何ができるだろう、こうしよう」という思考が生まれます。

4.「くじけず」動かす

人は「何のために頑張っているのか分からない状態で激務」だと病みやすくなるのではないでしょうか。いいビジョンには、自分は何のために頑張っているかをメンバーが自覚し、くじけずに動かしていく力があります。


そして、卓越したビジョンは人を惹きつけるので、採用にも大きな効果を発揮します。自分の生きている時間を何のために使うかについて、共感を得られる会社が選ばれる、その流れが今後も加速することを個人的には期待しています。

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