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小説家、人生初めて人様のサイン会に行く。

有り難いご縁によって過去数回にわたってサイン会を開いて頂いた小説家だが、実は人様のサイン会に行ったことがなかった。何なら、書店員をしていた時も、サイン会のイベント運営スタッフになるのを避けていた。
後者はめちゃくちゃ大変だということを知っていたのでさておき、どうして人様のサイン会に行ったことがなかったのか。
理由は、「自分が好きな方がサイン会をしない」か「本人とコンテンツを切り離して考えたい」か、「そもそも、関係者としてサインを頂く機会がある」かである。この職業をしていると3番目の機会が意外と多く、サイン会に行くというアクションを起こさないのだ。

そんな私が、人生ウン十年にして初めてサイン会に行くことになった。
相手はあの、「ゾゾゾ」である。

私自身、昨年から動画を視聴し始めたゾゾゾ歴の浅い俄かだ。
それでも、サブチャンネルまで余すことなく視聴し尽くし、書籍も購入した。『家賃の安い部屋』は毎週欠かさずに見ている。

とにかく動画が素晴らしい。
飛ばすところが一つもない研ぎ澄まされた構成だし、登場される方々の見た目も中身もキャラが立っているのが凄い。

私は元々、未知なるものを解明しようとするコンテンツが好きだ。
それは読書の趣向にも色濃く反映されていて、ジュール・ヴェルヌを筆頭とする冒険小説が最も好むところだ。因みに、ラヴクラフトが紡ぐ怪奇小説の一部も、冒険小説の一種だと私は思っている。
未知なるものへ一歩踏み込みつつも、謎という名の余白を残す。その余白を彼是と自分で考察するのが楽しいし、それは最大の贅沢だと感じている。

ゾゾゾの動画は踏み込みつつも考察をし過ぎない構成なので、とてもいい塩梅なのだ。

私が最も興味深いのは、『下田富士屋ホテル』の動画だ。
落合さんがソロ突撃時に遭遇した異音。存在感があからさまなのに再現性がなく、動画内での言及が少ないという謎めいたものだ。
あまりにも気になって他の方のチャンネルの検証動画を拝見したのだが、この異音が再現されているものが見つからない。
落合さんがあの場に居続けていたら、一体何と遭遇したのだろうか……。

激しく余談だが、私は『長尾くん』推しだ。
厳つい見た目に反して礼儀正しく、物腰が柔らかいというギャップがいい。
対応は冷静なのに、案外怖がりというギャップも素晴らしい。
私はギャップ萌えしてしまう人間なのだ。

そんなゾゾゾがコミカライズした。
大変良質なコミカライズだったため、単行本をどこの書店さんで買おうか悩んでいた矢先に、ブックファースト新宿店さんでサイン会の告知があった。
告知の中に長尾くんの名前を見つけた瞬間からの記憶がない。
気づいた時には、ブックファースト新宿店さんに予約の電話をし終わっていた。

さて、当日。
私は仕事の合間を縫っていそいそと新宿へ向かった。
待機列に並んでいる最中はファンの方々と少しだけ交流ができて、和気藹々とした雰囲気だった。

緊張しますね。何を喋ろうか迷います。3ショットが撮れるなんて感激。
そんな他愛のない話をして緊張をほぐしながら順番を待つ。
そうか、サイン会の参加者さんたちはこんな気持ちだったのか。
私はとても新鮮な気持ちを味わっていた。関係者でもなんでもないただのファンとして、他のファンの方と交流しながら待つのも心地よい。

そんな気分に浸っていると、あっという間に順番が来た。
ゾゾゾの落合さんと長尾さんは、温かく一ファンの私を迎えてくれた。
落合さんは気さくな方だったし、長尾さんは緊張してしまっている私に上手く話を振ってくれた。流石は接客業。生の雰囲気は大変柔らかく、見た目の厳つさは全く気にならない(あんなに厳ついのに)。

ゾゾゾが面白くて一気見したという旨と、自分もホラーに多少携わっている旨を伝えたような気がするけど(落合さんに「同業」と表現して頂いたが、あまりにも畏れ多すぎる。私は安全な場所でテキストを生み出すのみで、身体を張っていないのだ)、緊張のあまり、あとはほとんど覚えていない。別チャンネルでの落合さんの辛い物チャレンジ動画が癒しなので、もっと辛い物を食べて欲しいという無茶ぶりをしたような気がするが夢だったかもしれない。
久々の新作が近日アップされる予定なので、それが楽しみだと伝えるのは失念していた。でもきっと、私以外から一億回くらい言われるだろう。多くの人が、彼らの冒険に夢中になっているのだから。

やったぜ!

ご厚意で3ショットも撮って頂けた。
記事の見出し画像がそれだ。切り取ってしまったが、この画像の下に浮かれたオタクが写っている。
惜しむらくは、お二人が背後でゾゾゾな顔芸をしてくださっているのに気づけなかったことだ。せっかくだから、私も顔芸をしたかった。

一ファンとしてサイン会に参加してみて、サイン会に参加する側の気持ちを味わえて有意義だった。
そして、サイン本を読むのはもったいないから複数冊買うという方の気持ちもよく分かった。私も帰宅後に、持ち歩き用として電子書籍版を買ってしまった。

貴重な機会をくださったゾゾゾのお二方、そして、幻冬舎さんとブックファースト新宿店さんに心から感謝を申し上げたい。
本当に学びが多い一日だった。
この学びを活かす機会が来ることを祈りつつ、ゾゾゾの新作動画を待とうと思う(既存動画をヘビロテしながら)。




蒼月海里のホラー小説


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