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映画『プリズン・サークル』覚え書き01

先日、龍谷大学で行われた『プリズン・サークル』上映会。


アフタートークで、坂上香監督が話してくれたエピソードにこんなものがあった。

取材を始めた頃、入所して間もない受刑者で、TC(回復共同体)プログラムに参加し始めたばかりの若い人が、参加者同士が自身の過去(生育歴など)について語り合う姿を見て、「暗い話っすよね」(←青山のうろ覚え)みたいな感じで冷笑を浮かべるような態度を取っていた姿を目にした。

一年後、坂上監督が島根あさひ社会復帰促進センターのTC棟を訪れたとき、一人の若い受刑者が声を殺して泣いていた姿がふと目に留まる。
それが一年前、冷笑を浮かべていた彼であることに気づいた、と。

TCのプログラムは、参加することで人を変える。
そんなエピソードとして流れのなかで語られた話でした。

こ話をするときに、坂上監督が補足説明してくれたことも強く印象に残っている。

映画を見ているとわかるけど、島根あさひはTCを実践するほど「開かれた(という言葉が的確かはわらかない)」刑務所で、でも、当然のことながら厳格なルールがある。

なんとなく知っていた気もするけど、映像で目にすると改めて驚くほど。

一つひとつの動作のすべてに許可を求めることが必要で、禁止されていることが、とてつもなく多い。

「大声を上げる」ことは、一般社会でもあんまり是とされないが、刑務所では強めの禁止項目のようだ。

確かに、危険を知らせる以外の場で、不意に大きな声を出すことは周囲への「暴力」ともなる。
当然のことかもしれない。

刑務所では、「大きな声を上げて泣く」ことも禁止されていると、坂上監督が話していた。

「泣く」ことに規制があるようには感じなかったけれど、そこに「大きな声」がつくことは認められない、ということかもしれない。

「号泣」が禁じられているので、受刑者は声を押し殺して泣くのだという。

映画でも目にし、耳にした、くっくっくっという嗚咽。それは声というより、抑えた声から漏れる「音」に近いように感じた。

「音」をあげて泣く人の、初めて抑制が外れたときに止めることができず流れ出す涙と、同時にあふれ出す涙を抑えるような行為。
同時に立ち上がる時に、その隙間から漏れる、胸が引き裂かれるような「音」。

耳の奥から離れない。