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 ねぇ、ホテルいこうよ。シュンくん、エッチしたいんでしょ? 歩きながらハルカが突然そう言って、まだすこし寝ぼけていたオレは一気に目が覚めた。オレはあと数ヶ月で十七歳になろうとしてた十六歳で、ハルカは二十四歳で、初めて付き合った彼女だった。その頃、オレは学校には行かずに毎日バイトばかりしていて、とにかく退屈だった。そんな中で、突然、ハルカと付き合うことになった。好きな子がいたことはそれまでにもたくさんあったし、女の子にはいつだって興味があったが、誰かと付き合うのは初めてのことだった。とにかく、オレは童貞で、そして、十六歳だった。付き合って一ヶ月くらいが経とうとしていたが、オレは自分がハルカのことが好きなのかどうか、よくわからなかった。ハルカはどういうわけか、オレを自分よりも少し年上の二十五歳くらいだと思って、オレのことを好きになったらしい。実際のオレはそれよりも十歳近く若かったのだが、それでも好きになってしまったものは仕方がないから付き合って欲しい、と言われて、十六歳で童貞だったオレは、バイト先のいま思うとどこか頼りない先輩たちに相談したりして、それで、オレはハルカと付き合うことになった。ハルカとは共通の話題も特になかったし、後でわかったのだが、オレに自分を知られて嫌われたり飽きられたりするのが怖かったらしく、ハルカは殆ど自分のこととか自分の好きなこととかを話そうとしなかった。だからいつもオレが一方的にその時好きだった音楽のことを話したりするくらいしか話すことがなくて、デートはいつも退屈だった。オレはまだ免許も車も持っていなくて、ハルカの住んでいたマンションはオレの家から自転車で十分くらいの距離だったが、だからいつもデートは歩きとか電車とかだった。その日は確か、用もなくお台場に二人で行った帰りだった。駅の近くのカラオケとか居酒屋とかで過ごすのにも飽きて、どこか海にでも行こうということになって、山手線で新橋まで出て、ゆりかもめでお台場に行った。お台場をウロウロあるいて、ビーチから夜景を見たりして、笑笑という居酒屋にふたりで入った。電車賃も飲食費もすべてハルカが出してくれて、オレは全く主体性を発揮することなくいつもデートは進んだ。その居酒屋に入ったのも、二人共とにかくお腹が空いていて、どこか飲めるところにしよう、というだけの理由でその店に決まった。居酒屋にいる時もオレは退屈していて、職場の人にヤフオクで代わりにギターを落としてもらうためのメールのやりとりをしていた。結局そのギターは落とせなかったのだが、そんなことを覚えているくらいには退屈な気持ちでその居酒屋にオレはいた。帰りの電車では酔いのせいもあってオレはずっとウトウト寝ていたし、いま思うと恥ずかしいが、信じられないことに手を繋いで電車に乗っていたので、目黒駅について、その手を引っ張られてオレは目を覚ました。誰かと付き合っているということの実感もなかったし、誰かと付き合う、ということがどういうことなのかもオレはよくわからなくなっていた。十六歳で童貞だったので、もちろんセックスに対する興味はあったし、おそらく、人並み以上の興味を持ってはいたと思う。でも、もうセックスもしないでこのまま別れてもいいかな、といつしか思うようになっていた。そこまでしてセックスをしたいとは思わないし、いつか好きな人としたほうがいいような気がする、などという、純情な気持ちがまだ十六のオレにはあったりした。それが、突然、ホテルに行こう、エッチしよう、と言われてオレは混乱した。近いうちにハルカとはもう会うのを辞めようと胸の裡で思うようになっていた矢先だったので、どうしたらいいのかわからなかったが、繋いでいた手を通して伝わってくるハルカの体温、歩くペースに合わせて身体が揺れて漂うハルカの匂い、そういうものとセックス、という行為が急激に脳内で結合して、オレは歩きながら勃起した。数日後、バイト先の人に相談して、五百円くらいで数個が入ったコンドームを買った。どぎつくないデザインの水色の箱に入っていて、女の子にやさしい潤いたっぷりタイプ、みたいなことが書いてあった。ラブホにはコンドームが置いてある、というのを聞いたことはあったが、本当にあるのか不安で、とりあえずオレはコンドームを用意した。その話になった時、普段はなんでも自分で買っておいてくれるハルカが、買うのが恥ずかしいからシュンくんが買ってきて欲しいと言ったので、オレが買うことになった。ホントだったのかどうかは知らないが、ハルカは処女だと言っていて、自分だって童貞のくせにオレがリードしなければならないという不思議な使命感をオレは感じたりして、セックスという共同でのイベントに向けてふたりの間に妙はな一体感のようなものが漂うようになっていて、オレは別れようと思っていたことなどとっくに忘れかけていた。当日は、まるで遠足にいくような感じで、途中のコンビニでビールとチューハイと煙草を買って、目黒駅の近くのラブホまで手を繋いで歩いた。当時おれはセブンスターライトという、全国販売されたばかりのタール値が7mgの煙草を吸っていた。その前に何を吸っていたのかは覚えていないが、セブンスターというブランドは好きだったが、14mgの普通のセブンスターは少しきつく感じたので、新発売の7mgにすぐに飛びついた。ちょうどその日に寄ったコンビニにはおまけのライターが付属したパッケージが売られていて、ハルカはそれを二パック買ってくれた。どうやってセックスを始めればいいのかわからなくて、とりあえず意味もなくオレたちはカラオケをした。ハルカは缶チューハイを飲んで、オレはビールを飲んだ。すぐに射精してしまうことが怖かったこともあってオレは酒を飲んだ。アルコールを飲むと、感度が下がってなかなかいけなくなってしまうこともあるが、繰り返すが、十六歳で童貞だったオレは、挿れてすぐにいってしまうことが怖かったし、初めてのセックスを前にもちろん緊張していて、リラックスしたくてとりあえず酒を飲んだ。ビールを二缶くらい飲んだあたりで、それなりに酔いが回ったし、ラブホに入って一時間以上が経っていて、まるでそろそろご飯にしようか、というようなノリで、オレたちはセックスをすることになった。ラブホには浴衣の出来損ないみたいな前合わせで丈が短いださいよくあるパジャマが備え付けられていて、ハルカはピンク色のほうのそれを持ってバスルームに消えた。部屋に残されたオレは手持ち無沙汰で、とりあえず水色のほうのそのテラテラした素材のパジャマに着替えて、ジーパンのポケットに入れてあったコンドームを包装をあけて枕元に用意してから、また煙草を吸った。吸い終わったその煙草を灰皿のなかで消していると、ちょうど着替え終わったハルカが戻ってきた。丈の短さのせいで膝上くらいまでむき出しになったハルカの脚を見てオレは勃起した。ハルカは恥ずかしがって、滑り込むようにしてベッドの中に入ってしまって、はやく電気を消して、とオレにせがんだ。オレは少しだけ部屋の照明を落としたが、ハルカはもっと暗くして欲しいと言ってふとんをかぶってしまって、仕方がないのでオレもベッドに潜り込んだ。とりあえずハルカの下着に手を入れようとしたが、ハルカは恥ずかしがってオレのほうを向いてくれなくて、背中から手をまわして、テロテロのパジャマをめくって、ハルカのショーツの中に手を差し入れた。毛をかきわけて辿ると、ヌルヌルになっている場所があって、オレは初めて女性器に触れているといういま状況に自分がいるという事実に、妙な感動を覚えそうになった。しばらくそのままハルカの性器を触っていたが、液体の量はどんどん増えていったがハルカは何も言わなかった。ブラを外そうとしたが、ハルカはなぜかホックの無いブラをしていて、うまく外せなかった。両手で持ってブラを脱がそうとしたが、ハルカは頑なに拒んで、胸は小さいから見られたくない、このままする、というようなことを言った。ブラをしたままセックスをする、というのが何か間違ったことのように思えて、オレはなんとしてもブラを外してセックスをしなければいけないような気がして、電気をもっと消すこと条件にハルカはブラを外すことになった。オレはとっくにギンギンに勃起していて、はやくハルカに挿れたかった。ラブホの枕元にはコンドームが備え付けられていたが、持参したほうのコンドームをオレは自分につけた。流石に、つける練習をしたりはしていなかったが、思ったよりもあっさりつけることができて、そのコンドームは商品名の通り、外側がぬるぬると潤っていた。バンザイをさせてハルカのブラを取って、暗がりの中で、オレはハルカの身体に穿たれた穴に、ペニスを挿し入れた。するり、とは入らなかったし、挿れるときにハルカはすこしだけうなるような声をだしたが、思っていよりも滑らか入った。女の身体にあるヌルヌルになった穴に、硬くなった自分の身体の一部が入っているのをオレはまじまじと実感して、その事実に、オレはまた感動しそうになった。ハルカはオレの脇腹を片手で掴み、もう片手ではシーツを握りしめていた。おそるおそるオレは腰を動かしてみたが、期待していたほどの快感はなかったし、ハルカは何も言わずただ目をつむって上を向いてた。どうしたらいいのかわからなかったし、ハルカは全く身体を動かさなくて、ハルカが気持ちいいのかどうかもわからなくて、オレは少し不安になったが、そのままでいいとハルカが言ったので、おれはそのまま身体を動かし続けて、ハルカの粘膜にコンドーム越しにペニスを擦りつけた。酒のせいもあったのか、事前の杞憂とは裏腹に、オレはなかなかイケなくて、オナニーのほうが気持ちいいのかもしれないと少し思ったが、目をつむってオレの身体を受け入れいているハルカの姿をみていたら、ハルカのことが急になんだか愛おしく思えてきて、ハルカの爪が脇腹の皮膚に食い込む痛みでオレは突然、射精した。ペニスがドクドクと脈打っていて、オレは目の奥が痺れたみたいな感じになってなんだか意識がぼんやりとしていたし、ハルカは肩を上下させて息を荒くしていた。しばらくして、ヌルヌルとしたハルカの粘膜からオレはペニスを引き抜いて、萎え始めたペニスからコンドームを抜き取った。血は出ていなかったが、ハルカは少しだけ痛がっていた。コンドームに溜まった精液は、指で触れるとたぷんと揺れて、洗面所から漏れてくる明かりに透かしてオレはそれをぼんやりと眺めた。口を縛ったコンドームをソファの横にあったゴミ箱に捨ててベッドに戻ると、ハルカはもう既にブラを付けていて、それがなんだかしおらしく思えて、オレは小さく笑った。ヌルヌルになったハルカの粘膜の感触を思い出して、オレは自分がなにか、とても残酷なことをしてしまったようにな気持ちになった。それからベッドの中に並んで横になって、痺れた頭で少しだけオレは考え事をした。でもやっぱり、好きなのかどうかとか、愛がなんなのかとかは、全くわからなかった。ハルカとはそれからしばらくして、夏が来る前に別れた。別れてからもいろいろとあって、きっぱりと別れるのはそんなに簡単ではなかったが、最後に連絡を取ったのは十年以上も前のことだ。ハルカとセックスした数年後、オレが初めてのセックスを経験したそのラブホの隣には気がついたら新しいラブホが建っていて、いまはラブホが二軒並ぶ形になっている。いまでも良く近くを通るし、目黒という街はオレにとって、日常のなかにある、ありふれた街の一つでしかないが、ふとたまに、駅からそのラブホに向かう道の方に見える、夜になろうとしている街の姿とかに、ハルカとラブホで過ごした夜のことを思い出したりする。ふたりともラブホのシステムをよく知らなくて、宿泊ではなくて休憩で入ってしまったのにダラダラと過ごしてしまったせいで、チェックアウトするときの精算は思っていたよりも高額だった。客室の精算機にハルカが紙幣を差しいれるのを、十六歳の、童貞ではなくなったオレは、後ろからぼんやりと眺めていた。目黒の近くでセックスをする機会は何度かあったが、どういうわけか、オレはそのラブホテルには、その日から一度も入ったことがない。(2018/02/04/07:36)

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Aki

aoyorimoaoiao

習作、1段落で完結する物語、性描写等が苦手な方は #エロくない やつをどうぞ。Follow me, please! フィクションです。実在の人物や団体、出来事などとは一切無関係です。
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