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#ネタバレ 映画「バーバラと心の巨人」

「バーバラと心の巨人」
2017年作品
子どもだましでない、子ども映画
2018/10/12 22:16 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

もしかしたら、これは「ゲーム依存症の世界を描いている」のではないでしょうか。

一人の少女の中で起こっているバトルを、可視化してくれます。

ゲーム依存症は病気だから、本人は苦しんでいるし、見ている周囲の人や、われわれ観客も痛いです。

とても真面目、かつ丁寧に作られていますので、辛口。

★★★★☆

追記 ( 「ゲーム依存症」 ) 
2018/10/13 9:02 by さくらんぼ

>もしかしたら、これは「ゲーム依存症の世界を描いている」のではないでしょうか。

なぜ、そう思ったのかというと…

夕食の時間になっても、TVのコンバットゲームを止めない弟のような男子二人に、ヒロイン・バーバラがTVのコンセントを引っこ抜いて叱るシーンがあったからです。

その時のバーバラの心境は、「巨人の襲撃に、女の子の私が一人で戦っているのに、それにも気づかず、TVゲームにうつつを抜かしている男子なんて、最低(ため息)」でしょう。

しかし、この時のバーバラと男子は相似形になっていて、バーバラはTVゲームの機械こそ使っていませんが、夢想(幻覚)の中でゲームに侵されているのです。

追記Ⅱ ( 二階の部屋に ) 
2018/10/13 9:47 by さくらんぼ

実は、そこに居た女二人・男子二人の家族構成が、劇中では詳しく説明されていません。

でも、女二人は、チラシにはバーバラとその姉と書かれています。母と誤解されかねない歳の離れた姉です。男子二人は、バーバラとおなじようにTVゲームに熱中しているところを見ると、バーバラの弟だと思いますが…。そして父はおらず、母子家庭のようです。

母子家庭で、その母も、今は死に至る病で床に臥せっています。二階の部屋に。

母代わり、家長代わりの姉は、仕事に家族の面倒に、時にヒステリーを起こすほど、大変です。

まだ甘えたい盛りである子どものバーバラは、母との別れを予感して、恐怖の中にいます。逆説的ですが、だから母のそばに行くことも出来ない。見舞いも出気ないのです。

私も10年ぐらい前に母を亡くしましたが、その10年も20年も前には、なぜか母を亡くす夢を見て、涙ぐんだ経験もありますから、バーバラが感じた恐怖は分かるような気がします。

多分、その恐怖心が、母を奪う(バーバラはそう思いこんだ)巨人となって、彼女の前に現れたのでしょう。だから、バーバラは孤立無援になっても、いくら怖くても、巨人から逃げるわけにはいかなかったのです。

バーバラが頭に付けているのは、たぶんウサギの耳の飾り。ウサギはデリケートでストレスに弱い動物らしいですから、象徴として付けられたのでしょう。

だから弟たちがTVゲームに夢中になっているのも、同じ恐怖心からだと連想できます。

ゲーム依存症になるには、その種になるサムシングがあるのかもしれませんね。この映画では「母子家庭の子どもが、母を亡くす恐怖心」でした。

追記Ⅲ ( 幸せそうなファミリー ) 
2018/10/13 9:57 by さくらんぼ

バーバラの異変を感じた学校は、学校でメンタルのカウンセリングを始めました。

途中いろいろあって、バーバラがカウンセラー(女医さん)の家に行くと、そこで赤ちゃんを抱いたカウンセラーと、その夫の、幸せそうなファミリーを見るのです。

壊れかかった家族の中にいるバーバラには、それがナイフのようにに突き刺さり、彼女は逃げだしてしまいました。

追記Ⅳ ( 「★」と「黄色」 ) 
2018/10/13 10:09 by さくらんぼ

「サーカスにはピエロが必要だ」とか申しますが、この映画のピエロ的存在は、たった一人の親友になる、転校生のソフィアです。

ソフィアは別に道化をするわけではありません。いたって真面目な演技。ただ、いつも「黄色い服」(幸福カラー)を着ているのです(チラシを見ると、対するバーバラの肩には「★」マークのアップリケがあり、これは軍服の記号でしょう)。

ソフィアの黄色い服は、無意識にも観客の心を癒し、事実上の、ピエロの役目になっているのだと思います。

そして、孤独な転校生だからこそ、孤独なバーバラを選んだのです。

追記Ⅴ ( バーバラとソフィア ) 
2018/10/13 10:13 by さくらんぼ

そして、バーバラとソフィアはとても魅力的で、演技も上手です。

この二人がいたからこそ、この映画が光ったのだと思います。

追記Ⅵ ( 嵐の日には家にいる ) 
2018/10/14 10:26 by さくらんぼ

世に「引きこもり」と言われる人たちがいます。もしかしたら「ゲーム依存症」の人たちも、「心にこもる」という点では、広義の「引きこもり」に入れることが出来るのかもしれません。すると、この映画がより理解できそうです。

この映画「 バーバラと心の巨人」は、さまざまな原因で「弱った人たち」が「引きこもる」映画だったのかもしれません。

あの象徴的なウサギの耳は、ヒロインが弱っている記号であると同時に、ウサギの耳の下に「引きこもっている」記号なのでしょう。さらに、巨人に襲われた時、バーバラが電車に隠れたのもそうですし、海岸で戦うとき、ソフィアが小屋に隠れたのもそうです。そもそも、嵐の日には家に引きこもるようニュースで言っているのも、人間は弱い生きものだからですね。

そして母は、病気で心身が衰弱し、寝たきりになっていましたが、あれも「弱った人たちの、引きもりの一形態」なのでしょう。もし失恋して寝込む人がいたとしたら、その人も同じですね。

どうやら、この映画は「心」・「部屋」がキーワードのようです。「部屋は心の記号」でもあるから。

お母さんの部屋が二階なのは、「上下の移動がメンタルの変化を表している」からです。上下の移動はサスペンス映画には絶好の舞台装置で、映画の定石のようです。映画「サイコ」や、映画「汚れなき悪戯」では階段が効果的に使われていましたし、映画「仄暗い水の底から」や、映画「本能寺ホテル」ではエレベーターが使われていました。

そしてラスト。

巨人を見ても、二階の窓辺に平気でいるバーバラを見て、巨人の方が海の底へ帰って行きました。

追記Ⅶ ( 連想ゲーム ) 
2018/10/14 22:12 by さくらんぼ

映画「フィールド・オブ・ドリームス」も連想します。

現段階ではオマージュかは分かりませんが。

追記Ⅷ ( 映画「フィールド・オブ・ドリームス」 ) 
2018/10/15 8:53 by さくらんぼ

バーバラの部屋の中には、テントのような物が張ってあり(心の奥の院)、彼女はいつもカセットテープを聴いていました。

そこには、ラジオの(野球放送)らしき音声と、母とバーバラが楽しそうに話している声が入っていました。

ある日、林の中で(トウモロコシ畑で)、バーバラにしか分からないものに操られ(天の声に操られ)、彼女は罠を作ります(フィールドを作ります)。

ラスト、戦いの場は海岸でした(フィールドでした)。そこで巨人と対決するのです(キャッチボールします)。母に逢うために(父に逢うために)。

ソフィアはいつも黄色の(トウモロコシ色の)服を着ていました。チラシの、スラリと横向きに立ったバーバラの髪は、まるで(トウモロコシの髭)のよう。

巨人が来るから罠を作る(「それを作れば、彼が来る」)。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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