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Foojin'Z HIGH ROLLER 103ML

宇津木です。5代目Foojin’Zの開発を着手しはじめた頃、社内では呼称をFoojin’ADにしたいという意見があった。Foojin’ADは10年間続いたシリーズで、ADからアピアを知ったという人も多いだろう。そこでアピアのレジェンドプロ3人の意見も聞いてみることにした。

濱本さん「どっちも有りやなぁ。強いて言えばADかな。でもゼータも愛着あるしな。」
RED「ゼータ。フラッグシップモデルを作るんならゼータでしょ。」
村岡さん「フラッグシップならゼータですね。」
村岡さんはそのあとこう続けた

「フラッグシップにはゼータがあるのに、自分にはADって謎のシリーズだったんですよ。」

この発言にはアピア社員全員が腰を抜かした。
さすが村岡さんの発言は、一味も二味も違うぜ。

Foojin'Z HIGH ROLLER 103MLとは?

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Length:10’3” Lure:7-45g Line:MAX PE#2 標準自重:160g 
Material:TORAYCA M40X/T1100G/M46J/M40J
Guide:チタンフレームTORZITE & SiC-S
Joint:印籠継(NANO JOINT)
Reel Seat:Down Rock
Flex *******   Sharp (7)
Light*****     Heavy (5)

初代Foojin’ADで初リリースしたハイローラーは、プロスタッフ村岡昌憲の相棒として10年にわたり活躍してきた。そして今作で3代目となるハイローラーはシーバスロッドというカテゴリー全体から見ても、屈指の長距離砲となって生まれ変わっている。飛距離を格段に伸ばせた理由はブランクの素材構成にある。ハイローラーに使用している46tカーボンは極めて弾き性能は高いが、柔軟性がなくピーキーになりやすく、折れやすい欠点もある。だがTORAYCA第3世代カーボンのM40XとT1100Gの登場で、46tの弾き性能をそのままに、柔軟性を保持しつつ、爆発的な飛距離を弾き出すブランクが誕生した。
だがこのブランクの凄いところは飛距離だけではない。全9機種中しなやかで曲がる部類に入るハイローラーだが、ティップ部にM40Xを、そして46tの補助もあり、キャスト後のブレがほぼ皆無となっている。10ftを越すロングロッドにもかかわらず、ピンスポットシューティングの性能が非常に高く、村岡さんをもってしても「自分がさらに上手くなったように感じる」と言わせたほどだ。

現在彼のシーバス 釣りはハイローラーが主流となっており、体の一部といっていい存在となっている。当然前作のFoojin’ADハイローラーがすっかり馴染んでいるので、Foojin’Zハイローラーはすべてのファクターを超えることが絶対条件となる。

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MLであってMLではないハイローラー

ハイローラーは今回の5代目ゼータの中で、一番初めに開発に着手したモデルであるが、ハイローラーの開発は難航した。数回のサンプルアップを経て、T1100GとM40Xの特性が5代目ゼータのプロトタイプにマッチし始め、俺的には”コレだ!”と思えるハイローラーのプロトタイプは何度かできた。とてもシャープで軽く、バランスも抜群だったが村岡さんには全く響かない。響かないどころか、特性を詳しく説明しても興味さえも示さなかった。フィールドテストの場に上がることもなく、相変わらず村岡さんは実践の場ではADハイローラーを使い続けた。

他のモデルが続々と開発の着地を迎え始めたが、正直ハイローラーは煮詰まっていた。
ある日、ADハイローラーと徹底的に比較をするため、新しいプロトタイプを携えていつものように投げ込みにいった時に、ふとあることに気付いた。その当時のプロトタイプは社内でも絶賛だったので、欠点がほとんど感じられないと俺も思っていた。だが村岡さんが求めているのは俺が完璧だと思っていたそれではなかった。
村岡さんが求めているのは10’3”のミディアムライトパワーのシーバスロッドではなく、ハイローラーと呼ぶにふさわしいロッドだったのだ。
ハイローラーは便宜上ミディアムライトパワーとしているが、他社の表記ではMLMとなるだろう。バットパワーは明らかにMLクラスではなく、ミディアムパワーは優にある。村岡さんが「ハイローラーで獲れないシーバスはいない」と断言し、どの遠征にも連れて行くほど信頼できるロッドでなくてはならないのだ。

それから開発の方向性は大きく変わった。それまでのプロトタイプに最も欠けていた、ブランク全体の力強さとバットパワーを上げていくため、質量を上げていきながら全体のバランスをとっていく。質量をあげると当然重量が増えていくが、ここは外せない。軽いロッドを作るのはさほど難しくはない。それまでのプロトタイプは103MLで140g台だった。しかし村岡さんが求めているもの、ゼータが目指しているものはそこではない。
バットパワーを上げる理由は、リフティングパワーを上げることだけが目的ではない。ロッドにおいて飛距離を生み出すエンジンの役割を果たすのはバットパワーである。バットから生み出されたエネルギーが、先端に向かって放出されるので、ベリー〜ティップ部は列車で言えばいわばレールのようなものだ。このセクションはバットから生み出されたエネルギーを落とさぬよう、いかにブレずに収束させられるかにかかっている。

ハイローラーを名乗る資格

昨年末、村岡さんが求めているであろうハイローラーのプロトタイプを持って東京へ出向いた。急なアポだったので村岡さんはブルーブルーの動画撮影中で、しかもバトルの真っ最中だった。あるポイントで合流し、村岡さんにハイローラーを渡した。ちなみにこの模様はブルーブルーチームが撮影しており、ご好意でゼータのCMで使わせていただいた。(01:13あたり)
そして、とうとう俺が待ち望んだ言葉が村岡さんから発せられた。

「なんですかコレ?」

「めちゃくちゃ飛ぶんですけど!」

「新モデルでここまで急激に進化するなんて。ひょっとして他のモデルもこんなに進化したんですか?」

長い道のりだったが、ようやく5代目ゼータに興味を持ったようだ。それからはバトル中にも関わらず今回のプロトタイプの詳細を説明をし、村岡さんは満面の笑みで様々なルアーを投げ続けた。

「このハイローラーでしばらく釣り込んでみます。」

おそらく村岡さんは意識していないと思うが、今までのプロトタイプは素っ気なく「プロト」としか呼んでいなかったが、今回は「ハイローラー」と呼んだ。村岡さんの中で、ハイローラーと名乗るロッドは資格がいるのかもしれない。

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19年前のデジャヴ?

村岡さんと知り合って19年になるが、ここまで驚いた顔を見たのは初めてだ。いや、もしかしたら俺が見ていないだけで、昔一度あったのかもしれない。
村岡さんをサポートするきっかけとなったのは、19年前にREDが「会ったことはないけど、最近すごい釣るやつが東京にいるよ」と教えてくれた。その後ある人を介して紹介してもらった。その時村岡さんは
「自分が使ってみて、いいものだと思ったらテスターを引き受ける。いいと思わないものは他人に勧められない。」との回答だった。

その後「このロッド(初代Foojin’go)すごい飛びますね。飛距離を把握しているはずのルアーが、簡単に対岸まで飛んでいくんです!」と驚いた感想とともに、「アピアのテスターを引き受けます。」と電話口でそう言った。
ひょっとしたらこの時も同じような驚き方だったのだろうか?ふとそんな昔のことを思い出した。

Foojin'Z 5th Generation
https://www.apiajapan.com/product/rod/foojin-z/

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