親友だと思っている。
僕は彼の存在を覚えていた。
「おいおい、なんだよこんな時に。ってか久しぶりじゃん。」
彼は隠れたところから、恥ずかしそうにそっと片手をあげた。
「いつから気づいてた? ばれてないと思ったんだけどな?」
「ん・・ほんの30分前かな。懐かしいなお前。」
「ってかまだ生きてたのかよ。とっくに死んだと思ってたし。」
「なかなかしぶといだろ?俺らって保育園の時から一緒じゃん?」
「そう簡単に離れる訳ないだろ?」
「辛い時こそ、俺らいつも一緒だったよな・・・。」
「辛い時?バカ言ってんじゃねーし。お前がいるから辛いんだろ笑」
「お前さえいなきゃさ。もっと楽しいことあったし・・。」
「あれ?意外と元気じゃん」
「全然元気じゃないし笑。見りゃわかんだろ。…ほら39.3度。」
「あ、ほんとだ。やっぱりね。だからここまでこうやって出てきたんだけどね。」
「運命の再会?ってやつ?」
「分かったから早くあっち行けって。」
「やだよ。せっかく久しぶりに出てきたんだから。」
「こんなにちゃんと話するのって何年ぶり?もう10年は経つじゃん?」
「薬変えたからだよ。シングレアってのが効いてんの!」
「それから調子良かったんだよ・・・。」
「それな!ほんといい薬だよな。」
「俺の立場ないもん。俺はそいつ嫌いだね。」
「俺はお前に恨みしかねーよ!」
「もういいだろ?十分話したろ?使うぞ。いいな?」
枕元にある白いL字の吸入薬を持ち上げる。
「わ!バカバカ!待てって!」
「それはダメだって。」
「もーうるさいなー。あっち行け。」
「これもしばらく使ってなかったのに・・・。」
「落ち着けって!それ、使いすぎは良くないし!」
「な? 俺なんか一瞬で消し飛ぶよ?? 残酷じゃね?」
「残酷じゃね? じゃねーよ」
「お前がいると呼吸がしんどいんだからさ。あっち行っててくんない?」
「明日仕事行かなきゃだからさー。」
「仕事? そういえばお前、消防士なんだって?」
「お前が?ちょーウケる。散々苦しめてやったのに。」
「俺らはさ、お前に体力つけられたら困るわけ。だから運動のたびにお前の呼吸をあーして、こーしてだな・・・。」
「うん。知ってるって。」
「でもさ、俺、消防士なれたよ。」
「おかげで俺は、ちっともこっちに出てこれなくなったけどな・・。」
「そうだな。これからも、出てこなくていいよ。」
「まあ。あれだ。」
「その、無理すんなよ。」
「お前が言うなって。」
「もう出てくんなよ。」
「お前が無理したから出てくるしかなかったんだよ。」
「う・る・さ・い。」
「そろそろ使うぞ。」
「ああ。」
「それじゃあまたな。」
「おう。またな。」
白い霧を思い切り吸い込むと、
彼は「じゃあな。」とニコニコ手を挙げて、何処かたもなく見えなくなってしまった。
僕はそいつのことを恨んでいるし、嫌いだし、これからも好きにはなれないだろう。
でも僕は、彼のことを
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