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京都大学理学部特色入試(2021年度) 大問1 を解くだけ


問題

 n を 3 以上の自然数,λ を実数とする.次の条件 (i),(ii) を満たす空間ベクトル v1,v2,…,vn が存在するための,n と λ が満たすべき条件を求めよ.
(i) v1,v2,…,vn は相異なる長さ 1 の空間ベクトルである.
(ii) i≠j のときベクトル vi と vj の内積は λ に等しい.

京都大学理学部特色入試(2021年度) 大問1

予想

 要は、単位ベクトルを n 本用意して、その中から任意に 2 つのベクトルを取ったとき、その間の角度の余弦が等しくなるようなことであり、則ち間の角度が等しくなるようなことである。
 さらに言い換えれば、単位球面上に n 点を取って、その中から任意に 2 点を取ったとき、その距離が等しくなるようなことである。。。

 n=3 のときは、概ね正三角形状に 3 点を取ればよろしい。
 n=4 のとき、2 点の各距離が等しくなるようなことは、正四面体状に 4 点を取らない限り起こらなそうである。
 n≥5 のとき、n=4 にさらに 1 点を付加しなければならないことを考えると、題意を満たすベクトルはないと予想される。

解答

 v1,v2,…,vn の始点を原点にすると、その終点は全て単位球面上に乗る。以下、これら n 点について考察する。
 これら n 点は、どの 2 点を取ってもその距離は一定である。(※)

<n=3 のとき>
 3 点は正三角形を成す。このときの λ の条件を求める。
 正三角形の一辺の長さを d とすると、d の変域は 0<d≤√3 である。
 余弦定理より d²=2-2λ、則ち λ=1-(d²/2) なので、λ の条件は -1/2≤λ<1 。

<n=4のとき>
 4 点は正四面体を成す。このときの λ の条件を求める。
 正四面体の一辺の長さを d とすると、d=2√6/3 が分かる。(要証明)
 余弦定理より d²=2-2λ、則ち λ=1-(d²/2) なので、λ の条件は λ=-1/3 。

<n≥5のとき>
 n 点の中から 4 点を取ったとき、それらは正四面体を成す。こういった正四面体を 2 つ取ったとき、特に 3 点を共有しているようなものを取ったとき、残りの 2 点はその 3 点によって定まる平面と対称な位置にあるはずである。しかしこれでは、片方の正四面体は n=4 のときの正四面体だとして、もう片方の正四面体は単位球面上にない点を含む。
 よって n≥5 では題意を満たし得ない。

 以上より、求める条件は
「n=3かつ-1/2≤λ<1」または「n=4かつλ=-1/3」

(※)
 vi と vj の間の角を 0≤θ(i,j)≤π とすると、vi·vj=|vi|·|vj|cosθ(i,j)=cosθ(i,j)=λ であるので、i≠j のとき cosθ(i,j) は λ と等しくなり、また 0≤θ≤π において cosθ は単射であるから、i≠j のとき vi と vj の間の角はある定数になる。
 よって、原点と 2 終点によって成される三角形を考えると、二辺夾角相当故考え得る三角形は全て合同となるから、どの 2 点を取ってもその距離は一定であることを得る。

以上

評価

 n=4 の際の λ の値に辿り着くまでの手順や、用いるべき事実の証明などについて、細かい計算や証明をいかに簡略に済ませるかという部分はあれど、本質的に難しい部分は無かったと推察する。
 実際、予想は簡単に立つし、結果もその通りである上、筋道も明確であるこの問題は、京大特色の中だと比較的易しい部類だと感じた。

告知

 最近 note に触れていなかったので、ちょっと触ろうと思ってこれを書きました。人様の役に立てようといったものではないですが、何か与えられたなら幸いです。ぜひ以前の記事は読まないでください。
 解いて欲しい問題があったら何でも言ってください。解けないものは解けませんよ、言いましたからね。


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