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【激動の台湾起業1年目を振り返って】台湾スタートアップ実録

こんにちは、台湾で applemint という会社の代表を務める佐藤と申します。
僕は2017年の9月に起業し早3年が経とうとしていますが、その間自社の HP にずっとブログを書いていきました。
今後はその内容を note にも共有できればと思います。

僕の note を通じて、台湾の日常生活のこと、ビジネスや起業のこと、デジタルマーケティングのことに触れてもらえれば幸いです。

1回目の今回は台湾起業 1年目で僕がどんなことを体験したのか時系列で書きたいと思います。

其の一:会社を始める (2017年8-9月)

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僕は2016年に台湾の日系会社に転職をし、その1年後会社を辞めました。
結構衝動的に辞めてしまったため、どうしたらいいかわかりませんでしたがとりあえず30までに起業したいと思っていたので、いい機会と思い台湾で起業することにしました。
と言っても内心アホみたいにビビっていたのを今でも覚えています。

前職で知り合った優秀な台湾人エリックが僕と一緒に起業という船に乗ってくれるということで、二人で起業をすることにしました。

会社名
会社名はapplemint です。
よくどうして applemint にしたかと聞かれますが、正直あまり覚えていません。
しかしベースとなるロジックはちゃんとあって、「1度聞いてクールなイメージ」「中立的」な名前を意識しました。
applemint という名前は僕がつけた訳ですが、僕はある日何かの記事を見て apple mint という草が気になったので調べたところ、applemint は雑草だけど冬も枯れず根が強くて何なら他の雑草を駆逐してしまうという説明がありました。
中立的で、クールで(mint が含まれるため)、ハングリー精神を表していいなと思い、applemint に決まりました。

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会社の代表者

台湾で起業をするにあたって、会社の代表者を台湾人に据えた方が容易に物事が進むのは想像できると思います。
僕と僕のビジネスパートナーも同じ考えで、初めは僕のビジネスパートナーの台湾人を代表者にしようと思っていました。
でも最終的には僕が代表者になりました。

なぜか?僕が始めた会社なので僕が社長なのは当たり前なのですがそれよりも給与がポイントになりました。

台湾では代表者は会社で一番高い給与をもらっていないといけないようで(有限会社も株式会社も一律適用かは不明)台湾人のビジネスパートナーを代表者にした場合、外国人の僕より高い給与をもらうためには彼の給与が 48,000NT以上 (日本円で約17万円)となります。
なぜ 48,000NTか?

実は台湾では台湾の政府が「外国人は台湾で生活をしていくために 約48,000NT の給与所得が必要」と決めており、外国人の給与は最低でも 48,000NT が必要とされています。
正確には台湾にくる外国人は専門性があり、48,000NTの所得が妥当みたいな理由です。

そのため、外国人に対して労働許可を発行する場合、多くの外国人の給与は48,000NT 〜となります。

結果として創業して間もない時期に儲けがほとんどないのに二人の合計給与がいきなり毎月約35万円近くある状況は非常にまずかったのと、登記上は僕の台湾人のパートナーが代表者なのに、実際の最終意思決定者が僕という状態も混乱を招くため最後は僕が代表で落ち着きました。

其の二:ビジネスを決める (2017年9-10月)

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起業前のビジネスアイデアを考える時は楽しかったです。
その当時は真剣に例えば「廃棄野菜問題を解決する」「日本の過疎化した田舎を助ける」など色々考えたものです。
別にこれらのアイデアが悪い訳ではありません。
実際に僕は一時期農業に従事していた時、捨てられる C 級の野菜を見て何かできないか考えたものです。

しかし出資を受けているわけでもなかった僕らにはどう考えてもこれらのミッションを達成するための具体的なアイデアがなく、仮にあったとして投資家から出資を募ったところで 「なぜこの問題を解決するのが applemint ではないとダメか?」という質問に答えられる気がしませんでした。

最終的にまずは目の前に見えている自分たちが解決できる問題点を解決して、いくらか時間がかかってからでも自分たちがしたいことすることをすればいいと思いました。
僕が台湾で就業していた時問題だと思ったのはECサイト内のものすごく低い購入率 (CVR) でした。
広告を打っても打っても購入に繋がらない問題点を解決しようと思いました。

そこで僕とパートナーはウェブサイトを異常なまで分析して、ボトルネックを探すことで 顧客のサイト内購入率をあげることをビジネスにしようと考えました。
しかしこのビジネスはなかなかうまく行きませんでした....

其の三:ビジネスのシフトと副業 (2017年10月-11月)

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自分たちの経験をもとに、台湾の ECサイトで問題なのは低い購入率(CVR)だ!と決めつけ、会う人に「ウェブサイトを改善して購入率上げます!」と言いましたが全然刺さりません。

本当にウケが悪く、このままではどうしようもないと思い、自分たちが売るものを考え直しました。

顧客が問題と感じているのは自社のウェブサイトだけでなく広告運用や広告を含めた"デジタル・マーケティング"であり、弊社もそれらの問題点に対して包括的な解決策を提供しようと思いました。

そこでまずはサービスをわかりやすく3つに分けました。
1. ウェブサイト制作、2. 広告運用、3. SEO という具合です。

そしてグロースハックとかよくわからない言葉を使っていましたがシンプルに「ウェブマーケティング」「デジタルマーケティング」「デジタル広告運用」「検索ランキング改善」をしていると人に言い始めました。
これにより、少しずつウェブサイトの制作や SEO、広告運用といった案件が個別に入るようになりました。

しかし、できたばかりの企業にすぐにお金を落としてくれるような顧客は多くありません....そこで生き延びるために僕が以前からやっていた報酬単価が高い「日→英」、「英→日」の翻訳もしました。
ある月は翻訳だけで 10万NT(日本円で約35万円)ぐらいの収入もありました。

その時は3週間 1日6-7時間フルに翻訳をして本業は全て土日や終業後していたため、めちゃくちゃ疲れました...もうしたくありません(泣)...
と言ってもその当時は本業がほとんどなかったので土日と平日の終業後で済ませられました....(苦笑)

其の四:顧客を探す (2017年11月-12月)、無理やりビジネスにする

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MBA のクラスや図書館ではターゲティングなんてどうにでも定義できました。しかし現実はみなさん財布の紐がかたくてシビアです。仮にめちゃくちゃ市場分析をしてこれしかないというターゲットの選定をしても行動が伴わなければ無意味です。

僕らのターゲティングは非常に簡単なものでした。
僕たちは今も当時も台湾では明らかに多くの日系の広告代理店の質に問題があると思っています。
そしてそれらの日系広告代理店の顧客は日系です。

実際、台湾で日系の広告代理店に対して不満を持っている顧客がいることはしっていました。
そこで顧客が広義のターゲットは日系の企業としました。(もちろん全ての日系代理店の質が悪いとは思っていません)

狭義のターゲットは中小のローカライズした、現地に決定権がある日系企業にしました。理由は3点あります。

1.  大企業は経験上レギュレーションが多く、applemint のリソースでは恐らく対応が難しいこと
2. 大企業はそもそも予算が大きすぎてキャッシュアウトのタイミングを一歩間違えればリアルに黒字倒産とかあり得たため
3.  中小の方が現地に決定権がある傾向があり、applemint のような創業したてで信頼のない小さい会社でも信頼を勝ち取れば仕事を委託してくれる可能性が高かったこと

以上を踏まえて、「日系」「中小」、「ローカライズ」、「B to C」というターゲットを意識していました。
ターゲットを日系にしたもう一つの理由はローカルの台湾の広告代理店との競争を避けるためなのと、日本人としての僕の特性が活かせるためです。

次に上記で定めたターゲットはどんな所にいるか考えた結果、まずは台湾の日本人の「飲み会」を考えました。
そこで内向的な自分を忘れて、苦手だった外付き合いを少しずつ始めました。(今でもものすごく苦手と思っていますが...)
また、飲み会の顔出しと並行してサイト内に SEO 目的でブログを強化しました。

今では「台湾デジタルマーケ」、「台湾 SEO」 、「台湾広告代理店」などで検索をすればそれなりに上位表示されます。この時期、台湾で知り合った日本人の方を通じて某クライアントより広告運用のご相談をいただきました。

そのクライアントが欲している広告は動画広告だったのですが動画広告なんて作ったことありません...
動画広告を他社に外注することもできましたが創業したての小さな会社は 1NT でも自分たちの懐に入れたいのです。

僕はフリーランスとしてデザインの仕事をしてましたし、Adobe のソフトはそれなりに使えるためとりあえずできるかなと思い、この案件を受けて 1週間徹底的に動画制作を学び、それなりのものが作れるようになりました。

動画制作はディテールや繋ぎ、一つ一つの素材の質がまだまだ未熟で日々精進中ですがこの時無理矢理受けていたことで動画制作はその後弊社のサービスの一つとなりました。
ガムシャラだったから動画広告をやろうと思い、それが収入の一つになりました。

できないことをできると言ってクライアントに迷惑をかけるのは最悪ですが、できます!と言うと自分に危機感が生まれ無理矢理やった分かなり成長する気がします。

其の五:キャッシュがやばくなる (2017年12月-2018年3月)

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ビジネスをデジタルマーケティングにしてからクライアントは少し増えました。しかし運転コストとは恐ろしいもので人件費や仕入れコスト、オフィスの家賃は容赦無くすぐに請求が来ます。

所謂黒字倒産のような運転状態になり、粗利は出ていますが人件費や仕入れコスト、オフィス家賃の流動(キャッシュアウト)が早く、この時期はキャッシュが20万NT(日本円約70万円) とかになりました。

仕入れコストや販管費を入れたら35万円以上はあったので、破滅へのカウントダウンを自虐的にしてました(苦笑)
現在の顧客が逃げたらあと半年で僕ら死ぬかもしれないみたいなことをパートナーと話していました。

もしこの時融資や出資の話が来ていたら自社のシェアを少し分けて飛びついていたかもしれません。
生意気かもしれませんが、僕は自分で起業したことで投資に対するいくつかの概念を持つことができたと思っています。
其の一つがタイミングです。

どんな投資/ビジネスでも安く仕入れて高く売るのは基本だと思います。
もしこの時の僕らみたいに本当にキャッシュがやばい状態にあるけどここでキャッシュを入れればかなり回復する見込みがあるスタートアップがあれば投資対象先としてどうでしょうか?

僕はこういう時にこそ出資をするべきではないかと思いました。
投資家は銀行と違い、本当にポテンシャルのある会社には晴れの日に傘を貸さないで雨の日に傘を貸すべきと思いました。

其の六:蘇生・顧客が来る (2018年4月-6月)

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SEO でブログを書いていた影響もあり4-5月にGoogle 検索から弊社へ問い合わせが増えました。
また、キャッシュがやばくなった時期に、弊社のターゲティングぴったりの顧客が現れ、其の後何回かのヒアリングを通して受注に成功し、安定した収入を得られるようになり始めました。

この時期から初めて営業利益でそれなりのプラスが出るようになり、キャッシュを貯めることできるようになり始めました。
僕を知る人の中には起業時に顧客がいたのだろうと思いの方もいますがほぼいませんでした。

0 ではありませんでしたが大きな受注に至るケースはほとんどなく、知り合いが本当にクライアントになるまでのハードルが高いことを実感しました。

また、同時期に起業当初からサービスを提供していた顧客に違う方を紹介していただき、本当に人に助けられました。
いろんな意見はあると思いますが新規開拓よりも目の前のクライアントに全力を尽くす方が新規に繋がるのではないかと思い始めた頃です。

同時期にインターンの問い合わせが来るようになったため、インターンを入れるため将来の雇用を考えて少しずつ内部のガバナンスとかに目を向けるようになりました。

最後に

いかがでしたでしょうか?
書き忘れましたが、1年目で最も印象に残っていることを一つ挙げろと言われたら、なけなしの10万円を使って日本に契約をクローズしに行ったことです。
本当にお金がなかったので台湾夜10時発の LCC で東京に行って、空港で寝た後に朝商談へ向かい、商談の次の日の深夜便で台湾に帰りました。
理由はホテル代の節約です。
朝は空港の騒音で3時間ほどしか寝れず、夜は友人と会食した後空港までの終電を逃し、蒲田で下車しました。
タクシーなんて使う余裕はないので、蒲田から羽田空港まで1.5時間歩きました。
着いた頃には寝やすいベンチは全部取られていました。
でも前日3時間の睡眠と、1.5時間の歩きで疲労は限界に達しておりスーツ姿で床に寝ました。
たった2-3時間の睡眠でしたが、熟睡できたのを覚えています。

また、この時期はビジネスがまだ軌道に乗っておらずビジネスパートナーのエリックと仲が悪かったです。
その後僕がビジネスを軌道に乗せたらエリックとの関係も再び軌道に乗り始めた (笑)

今後も台湾の起業の話やビジネスの話とか書いていきたいと思います。

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