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【2020年版】台湾の政治・選挙事情

こんにちは!台湾で applemint という会社の代表を務める佐藤です。

applemint は台湾にあるデジタルマーケティング会社なので、当然ながら台湾の政治の影響を受けます。
与党が移民政策をタイトにし、外資企業に不利な制度にすればその余波は applemint まで及びます。

また、現在コロナウイルスが全世界で猛威を振るう中、台湾だけが感染者数を抑えています。
これは紛れもなく現与党民進党の影響と思われます。

2020年には 1/11 には台湾の総統選挙が実施され、蔡英文という台湾独立派与党のリーダーが再選を果たしました。
2020年の5月20日には就任式が控えています。

今回のコロナウイルスの影響で多くの方が台湾の政治や政党に興味を持ったと思います。
そこでこのブログでは、改めて台湾の政党を簡単に紹介をした上で、過去の統計からざっくりした地域別の政党支持基盤をご紹介し、過去の台湾の選挙結果や投票率をご紹介したいと思います。

台湾の政党

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まずは台湾の政党をご紹介しようと思うのですが、とにかく政党の数が多いので今回は 5つに絞ってご紹介をしたいと思います。
ちなみに、台湾の全政党を知りたいという方は以下の wikipedia から確認してみてください。

参考:台湾の政党一覧

中国国民党 (国民党)

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写真参考:http://www.kmt.org.tw/

元々は中国で孫文が始めた政党です。
孫文は中華民国の礎を築いた人です。
その後蒋介石がトップになった時に、中国で内戦が起こり内戦に破れた国民党は台湾に渡りました。

中国や台湾の歴史については池上彰さんがわかりやすい解説をしているのでよかったら以下ビデオをご覧ください。

参考:池上彰の現代史講義 第04回 「中国と台湾の対立」

ビデオの中で池上さんが語っていますが、蒋介石は台湾に渡った当初は現在の中国は中華民国のものであるという主張をして中国の奪還を考えていたようです。しかしその後奪還が難しくなると、現状維持という現実路線を歩むことになりました。

2020年1月5日現在、国民党は台湾では野党で、総統は民進党の蔡英文という女性の方が務めています。

中国寄りというイメージが強いのですが、僕のイメージだと中国との統一というよりはどちらかというと現状を維持して中国と仲良くしたいと思っている印象を受けます。
また、国民党を支持している全ての方が中国と台湾の統一を望んでいるという訳ではなく、現実的に世界経済の主権は中国にシフトしているし、自分たちの経済のためにも仲良くしようと考えている人がいる印象を受けます。

参考:中国国民党 (wikipedia)

民主進歩党 (民進党)

民進党

写真参考:https://www.dpp.org.tw/

台湾初の野党であり、2020年4月12日現在台湾 (中華民国) における与党です。
以前台湾は国民党一党で、言論や政党結成が厳しく管理されていましたが、1987年に政党結成が解禁になった時に民進党は初めてできました。
現在の台湾において国民党と並ぶ2大政党の一つです。

中国国民党がどちらかというと中国と仲良くしていきたいのに対して、民進党はどちらかというと台湾独立や、中国とは距離をおきたいと考えている政党と言えます。

参考:「総統選は中国との戦い」 台湾・蔡氏、リード保つ

台湾では国民党 = 中国寄り、民進党 = 台湾独立、と分かりやすいのが高い投票率なのではないかなと思います。

親民党

親民黨

写真参考:https://www.pfp.org.tw:8443/TW/home/

元々国民党にいた宋楚瑜氏が結成した党です。
宋楚瑜氏が国民党に在籍していた際、当時の総統だった李登輝氏の政策に賛同できずに自身で政党を立ち上げました。基本的には国民党と同じ考えをもち、中国寄りと言われています。

2020年の総統選で国民党から立候補するトップを決める争いに破れたフォックスコンの創業者、郭台銘 (テリー・ゴウ) 氏は 2020年の総統選で親民党から立候補する宋楚瑜氏の支持をしています。
理由は単純に自分を選ばなかった国民党を支持したくないからと思われます(苦笑)

参考:郭台銘傾向支持親民黨 老虎軍團:郭、宋開會訂決策 (中国語)

親民党の宋楚瑜氏は 2000年から繰り返し総統選に出馬しているものの、2020年現在に到るまで当選の実績はありません。

時代力量党

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写真参考:https://www.newpowerparty.tw/

2014年ひまわり学生運動をきっかけに2015年に生まれた党です。
ひまわり運動は主に台湾と中国の間の市場開放を目指した貿易協定で、一部の人は台湾が中国に飲み込まれると考えこの貿易協定に反対したことから起きた運動です。

時代力量はひまわり運動で活動をしていたメンバーが中心となって始まった政党です。そのため思想や考えは民進党と近く、当初は良好な関係だったようですが、今は良好というほどではないようです。

また、内部でいざこざがあったためか、主要メンバーの離党が相次ぎ、2020年1月5日現在は求心力が以前より低下したと言われています。

台灣基進党

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友人から聞いた政党です。
台灣基進黨のトップ (主席) は陳奕齊という方で、この方も時代力量の党の方同様にひまわり運動に影響を受けた人です。
つまりは、どちらかというと台湾独立のような思考を持っている方と言えると思います。

また、台灣基進黨の主要メンバーの一人である、陳柏惟(チェン・ボーウェイ)氏は1/11総統選とは別に行われた立法院委員の選挙で台中の国民党支持基盤が強い地区で当選を果たし話題となりました。
山本太郎氏のようにどこか人を引き付ける演説が魅力の方だそうです。

地域別支持基盤

台湾の主な政党がわかったところで次に台湾のどの地域がどの政党を支持しているか書きたいと思います。

以前僕がPinterest に載せたインフォグラフィックを転用したいと思います。
2018年のものですが、基本的に南部の支持基盤は民進党、東海岸や北部は国民党のような構図は現在もあまり変わりません。

台湾_政党map656

ちなみに BBC のサイトには総統選ごとの地域別政党支持基盤のマップがあったので、そちらの方が参考になるかもしれません。
参考:https://www.bbc.com/zhongwen/trad/chinese-news-50743343

上記表を作った2018年時点では高雄市は民進党の支持基盤が強かったのですが、その後 2019年の市長選で高雄市の市長に初めて国民党の候補者が当選するということが起き、歴史的に民進党の支持基盤が強かった高雄が揺らぎました。
しかし2020年1月の総統選では高雄における民進党の得票率はマジョリティーだったようです。

参考記事:總統票倉解密韓粉英粉在哪裡?

また、総統選ごとの地域別等の得票率を見ると、どうやら花蓮と台東は一貫して国民党の支持基盤が強いようです。そして、民進党の基盤が強いのは台湾南部のようです。
アメリカのカリフォルニア州は民主党の基盤が強いように、台湾は台湾で南部は民進党の支持基盤が強いと言われています。

過去の総統選、選挙結果

2020年1月11日の総統選は与党民進党代表の蔡英文氏が勝利しました。
蔡英文氏の一年前の同じ時期の支持率が極端に低かったことを考えると大逆転の勝利と言えると思います。

支持率

写真参考:https://news.ltn.com.tw/news/politics/paper/1345614

緑の線が蔡氏なのですが、ご覧のようにちょっと1年前は支持率が40%程度でしたが、選挙前に一気に支持率を上げました。
ご存知の方も多いと思いますが、香港の暴動が蔡氏に有利に働いたと言われています。

ちなみにこの4年に1度行われる台湾の総統選ですが、実は民衆が直接選挙に参加できるようになったのはつい最近の1996年です。それまでは国民党の一党政治でした。

その後1990年代初頭、李登輝氏が民主化の動きに合わせ、総統選直接選挙に向けて行動を始め、1996年ついに民衆の選挙参加によって台湾のトップが決まることになりました。

この1996年の選挙で総統に選ばれたのは李登輝氏です。なので、今からご紹介するのは 1996年以降の総統選の結果です。
また、ご紹介する資料は wikipedia にあった Sleepingstar という方の情報を参考にいたしました。

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これを見ると 2000年以外、基本的に緑と青が目立つと思います。
緑は民進党を表し、青は国民党を表します。2000年のオレンジは無党を表します。

この無党は後に親民黨になります。2000年は無党の主席宋楚瑜氏が勝ったように見えますが、結果は緑の民進党が僅差で勝利しました。
20004年も続けて民進党が僅差で国民党に勝利をしたものの、2008年2012年は続けて国民党が勝利しました。

そして迎えた2016年の総統選ですが、その前の2014年にひまわり学生運動と呼ばれる、中国との貿易協定に反対するデモが起こり国民党の支持率は一気に低下します。
その結果 2016年の総統選は民進党が勝利しました。2020年は香港の暴動の影響で民進党が勝利したと言われています。

過去の投票率

2020年の台湾総統選は香港のデモの影響からか、かなりの盛り上がりを見せました。その結果、投票率は 74.9% と、前回2016年の66.27%から大幅なアップとなりました。
以下、1996年から今回の2020年の総統選までの投票率の推移を貼り付けます。

投票率656

写真参考:https://www.cna.com.tw/news/firstnews/202001120154.aspx

ほとんどの年で 70%以上の投票率って改めてすごいですよね。
2020年は2016年と比べて何が原因でこんなに投票率がアップしたのでしょうか?まずは今回2020年総統選の年齢別の投票数を下に貼り付けます。

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写真参考:https://www.cna.com.tw/news/firstnews/202001120154.aspx

具体的にどこの層の投票率が上がったのか結構2時間ぐらいかけて各新聞を見て回ったのですが、具体的な数字を見つけることが出来ませんでした。すみません。ただし、いくつか発見がありました。

まず、今回の投票で一番投票率が高かったのは 65歳以上でなんと80%以上あったそうです。
また、ある記事では 2016年の総統選の全体の投票率は66.2% で、20-39歳の投票率がたったの 57.73% だったのが、今回の選挙では全体の投票率が 74.9% だったことから20-39歳の層が伸びたのではないかと指摘しています。

記事参考:https://www.cheers.com.tw/article/article.action?id=5096064&page=2

まとめ

台湾は国連からは国として認められておらず、多くの国とも正常な国交を結んでいませんが、台湾で生まれた育った台湾の人は中華民国のパスポートを持つ非常に interesting な国です。

ちなみに先日中国が新規コロナウイルスの感染者数を 0 と発表したのですが、同日台湾は複数の感染者が報告されました。つまり、中国は台湾を中国の一部と見なしながら台湾を国と認めるかのような報告を行い、ネットで話題になりました(笑)

台湾では近年若者の政治への関心低下が叫ばれていましたが、2020年の総統選は多くの若い人が選挙に参加したものと思われます。

日本に住む僕の知り合いは日本から選挙のために台湾に一時帰国しました。
僕が選挙の日に見たある記事では、オランダ在住の台湾人がアムステルダムから選挙のためにアムステルダム-台湾の直行便で戻ろうとしたらその日に限って飛行機のトラブルが発生し、仕方なくパリ経由で帰ろうとしましたが、パリ経由で帰っても選挙に間に合わないことがわかり空港で泣いたという話がありました。

台湾の人は選挙時、法律で戸籍のある住所にわざわざ戻って投票しなければいけないため、人によっては何時間もかけて戻ります。
日本人は期日前投票の制度があって、国外からも投票しようと思えば出来るという非常に恵まれた環境であるにも関わらず投票率はいつも高くありません。

今回コロナウイルスで日本の現与党が結構批判されているようですが、それらの与党の方達を選んだのは紛れもなく日本の国民の人です。日本の人が選挙を台湾の人のように自分ごとと捉え政治に積極参加する日が来るといいなと思っています。

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