ヘブンズ・フラワー The Legend of ARCANA(2011年)

画像1 ヘブンズ・フラワーはTBSの深夜連続ドラマFriday Break枠で放送された。2060年という近未来を舞台としたミステリー小説が題材となっている。全11回だったが、ちょうど東日本大震災が起きた2011年3月11日の夜の放送予定だった第9回以降が延期され、同年8月にまた第1回から全回を再放送するという異例の対応となった。
画像2 ストーリーは西暦2080年に砂漠を一人旅する南田ハルという青年(EXILE 松本利夫)が、過去の体験を振り返りながら、約20年前に出会った1人の少女にまつわる出来事ついて語るスタイルで展開する。ハルが10歳の頃、突然現れた星龍という中国系マフィアに両親を惨殺される。父からある秘密が書かれた手帳を渡されたハルは、家族で1人だけ生き残る。その時星龍一味を撃ち殺し、ハルを助けたのが件の少女アイであった。
画像3 星龍を始末したその少女、冷酷非道な暗殺者として育ったアイ(川島海荷)は、ラストガーデンという養護施設で仲間の子供たちと共同生活を送っている。星龍が引き起こした惨殺事件と、その息子ハルの行方を新人刑事の真中(荒木宏文)が追っている。自分を星龍の手から救ってくれたアイを追いかけ、ハルもラストガーデンで生活することになった。そしてハルは両親の仇を取るため、アイに殺しを教えて欲しいと請う。
画像4 ラストガーデンがある第七地区は、過去にある実験で発生した大事故の影響で生物が育たない不毛の地となった。深刻な食糧危機を解決する鍵となる「アルカナの種」をめぐり、中国の貿易商、マフィア、日本食糧庁などの組織が巨万の富を狙って争い合う。第七地区を取り仕切るのは片桐薫(三田佳子)。ラストガーデンで育ったナルキ(中野裕太)も片桐からの信頼は厚く、子ども達のサポート役としても大きな存在となっている。ある日、ナルキは片桐からある司令を言い渡される。
画像5 剛くんはナルキやアイと同じくラストガーデンで育ち、片桐の優秀な右腕として働く青年シオンを演じています。幼い頃に親と別れ、暗殺者として疑いや憎しみの中で育てられたアイ。しかし、正義感と愛情に溢れた真中に会って以来、アイは今までに感じたことのない温かな感情に触れ、動揺する。アイが幼い頃から共に過ごしてきたシオンは、アイが真中の愛情に絆されることを危惧し、真中に近づけまいとする。
画像6 片桐から星龍のボスである厳小剛(イム・シャオガン=本田博太郎)暗殺の司令が下る。シオンの指示を仰ぎながらシャオガンの下に歩みを進めるアイ。しかし、そこにはかつてラストガーデンで共に育ったラン(竹富聖花)がいた。ランは星龍に寝返ったのか?アイは駆けつけた真中と共に捕らえられ、冷凍庫に閉じ込められた。シオンとナルキはアイを救出するために動き出す。星龍を次々と倒したシオンはついにシャオガンと対峙する。
画像7 しかし、シオンはかつてシャオガンの慰み者として囲われていた過去があった。シオンの背中には、イム家の紋章である星の刺青が刻まれていた。片桐の庇護を受けながらも、シャオガンとの消せない苦しみを背負うシオンには、シャオガンを討ち取ることなどできない。そしていつの間にかランのみならず、ナルキまで星龍に寝返った?一体何が起こっているのか。シオンはイムに底知れぬ恐怖を感じながら、アイと真中が捕らえられた冷凍庫へ向かった。
画像8 冷凍庫から間一髪でシオンに救出されたアイと真中。真中は字の読めないアイに漢字を教える約束をする。アイは漢字で書くと愛。愛という字とその意味を初めて知ったアイは、心の奥に痛むような違和感を意識し始める。真中といると沸き起こるこの複雑な感情は何だろう?真中と共に過ごすうちに、アイの中で何かが変わろうとしていた。そんな折、片桐はついにアイに真中を暗殺しろと司令を下す。
画像9 真中が好きだという自分の気持ちに気づいたアイは任務を遂行できずにいた。そればかりかシオンの目を盗み、毎日字を教わるために隠れて真中と会った。シオン、アイが居ぬ間に星龍がラストガーデンを襲撃し、ハルは手帳を奪われてしまう。一方、日本食糧庁と中国系の貿易商の九星商社の間では、食糧の独占輸入契約の締結が進められていた。九星商社のバックには星龍がいたが、両者の目的はもちろんアルカナの種。その食糧輸入契約は日本に不利な形であったため、片桐はアイに九星商社のスン・ジーシンと、食糧庁長官の兵藤眞理を殺害せよと告げる。
画像10 アイは片桐の司令どおりスン・ジーシンを仕留めるが、真中は「これ以上人を殺さないで」とアイに懇願する。真中のことは信頼しているが、自分を育ててくれた片桐を失望させたくない。シオンの「思考回路をカットしろ」という言葉で我に帰ったアイは兵藤長官を狙うが、真中への気持ちで思いとどまった。自分の過去や2047事件の真実を知りたがるアイに、真中はアイの実の父親は草壁という研究者であることを告げる。アイは自分がワン・チュンメイという中国人で、両親は幼い頃に殺されたと聞いていたので驚いたが、真実を知るために父と再会する。
画像11 父親と再会したアイは、自身や家族の秘密を知る。同じ研究所で働いていた両親はそこでワン・チュンメイという名の中国人女性と出会い、親しくしていたことが分かったが、アイは自分がワン・チュンメイだと嘘を教えられてきたことも知ってしまう。しかし、一体なぜ?
画像12 ラストガーデンを制圧しようとする星龍と戦うため、アイたちはシャオガンの下へ向かう。シャオガンに寝返ったと思われたランやナルキは、ラストガーデンへの攻撃を逃れるために手帳をわざと手渡し、星龍の内部を偵察するために協力していた。ランとナルキが撃たれて命を落とす。憎しみで憎しみを裁くことはもうやめる。アイは仲間たちの死を背負い、平和な世界を取り戻すために生きていく決意をする。それこそが自分の真実だと気づいた。
画像13 ナルキを失ったシオンも深い悲しみに打ちひしがれていた。仲間たちと過ごした楽しい時間を思い出しながらナルキは死んだ。もう我慢ならない。シオンは過去のトラウマから今までどうしても討ち倒すことができなかったシャオガンを刺し、ついに息の音を止めた。
画像14 片桐はアイを誘き寄せ、アルカナの種の保管庫を開けさせようとした。保管庫の鍵を開けるコードネーム「ヘブンズ・フラワー」はただの暗号ではなく、アイ自身だと知っていたからだ。しかし、急にアイの記憶がフラッシュバックする。口論の末、母親を殺したのは片桐だった。片桐は2047爆発事件の最大の被害者であり、事故責任者として罪を着せられる代わりに第七地区を手にした。そして自分を利用し、裏切った者への復讐に燃えた。アイに自分の分身としてワン・チュンメイの名を与えたのは、復讐の道具として使うためだった。
画像15 草壁はアイだけでなく片桐にも鍵を設定していた。片桐のことを信じていたからだ。保管庫には時限爆弾が仕掛けてある。片桐は自らその中へ入り、一握りのアルカナの種をアイに託した。そしてアイと真中を逃し、シオンも保管庫の中へ。母親代わりになって自分たちを育ててくれた片桐と共に最後の時を迎えた。
画像16 再び保管庫の爆発は起きた。のちにフロリゲンを含んだ恵みの雨が降り、アルカナの種は発芽して花を咲かせた。チープな深夜枠ドラマかと思いきや、壮大でシリアスな物語で見応えありました。悲しい物語だけれど、ラストは希望の光が見えて良かった…。

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