天空の蜂(2015年)

画像1 天空の蜂は東野圭吾原作の長編サスペンス小説を、堤幸彦監督が映画化した作品。原作者から映像化など不可能だろうと言われていた本作ですが、迫力や規模感がリアルですし、見せ方としては見事に成功していますね。
画像2 軍用巨大ヘリ(通称ビッグB)が航空自衛隊に納入されるまさに当日、何者かによってヘリの制御が奪われた。テロリストが遠隔操作によってビッグBを動かしている?
画像3 錦重工業の航空機事業本部の開発責任者である湯原(江口洋介)は、家族サービスのために妻子を小牧工場の見学に連れて来ていた。自分が設計したヘリを見てもらうためだ。しかし、目を離しているすきに息子の高彦が、同僚山下の息子恵太と共にビッグB内部に潜入し、そのままヘリは離陸。恵太は飛び降りて湯原の手で受け止められたが…。
画像4 湯原の息子である高彦は後部ハッチから飛び降りられず、取り残されてしまう!!
画像5 ヘリはそのまま福井県にある原子力発電所の高速増殖炉「新陽」を目指し、飛行を続ける。
画像6 新陽の真上でホバリングするビッグBの最大飛行可能時間はフル装填状態で8時間。日本政府へ届いた脅迫状は、現在稼動中や建設中の原発を全て破棄せよ、さもなくば巨大ヘリを「新陽」に墜落させる、ただし新陽は停止してはならないというものだった。
画像7 最初から剛くんが犯人ということが分かっているストーリー展開だが、なぜ犯行に及んだのか、犯人の人物像や動機、交友関係が徐々に紐解かれていきます。やっぱり彼はこういう影のある、訳ありのやべー奴的な若者がハマり役ですねw
画像8 ドラマの世界だけでなく、福井県敦賀市は原発銀座とも呼ばれ、日本有数の原子力発電所や関連施設が建ち並ぶエリアとして知られていますね。そこはこの映画のストーリーでは外せないポイントとなっています。
画像9 緊急事態下に現場に集められた技術者たちは、高彦くん救出およびヘリの墜落防止と原発緊急停止を始めとする安全管理対策について会議を始める。犯人との駆け引き、時間との勝負の中で、緊迫した現場の雰囲気が伝わってくる。本木雅弘演じる三島は錦重工業の原子力技術者。
画像10 仕事に忙殺されるあまり、家庭を顧みず高彦出産時も出張で不在だったり、最近では息子の授業参観日も忘れる始末で、妻から呆れられている湯原。息子が車のシートや壁を蹴るクセをうるさいと叱責する。しかし、実は息子の高彦は阪神大震災のテレビ中継で恐怖を覚えた経験から、モールス信号を勉強して完璧に覚えていて、尊敬する父親湯原に常に話しかけていたことを知る。
画像11 高彦がモールス信号を理解できると分かり、湯原は地上からビッグBに向けて信号を送る。高彦はそれに気づき、交信は成功。
画像12 自衛隊のヘリからビッグBの後部ハッチにロープを撃つ。ハラハラドキドキ…で緊迫したシーンは良いのだけど、アナウンサーの実況中継がまるでスポーツ解説みたいですごくイヤwww なんか違う。。
画像13 みんなが固唾を飲んで見守る中、3本目のロープが見事ビッグBに届いた!湧き上がる歓声はそりゃあがるだろうけど、大袈裟なアナウンサーの喋りを何とかしろ笑。高彦くん、ロープの先に付いている父からの手紙を読んで全て状況を理解。クレーンまで操作して、自衛隊の救出作戦に手を貸す。この子、めちゃくちゃ知能高いんですよwww
画像14 ものすごい風圧や上昇気流も計算しながら、雲で視界が悪くなる中、よし!高彦くん、お兄さんにつかまれ!!
画像15 その瞬間、高彦落下!!!ヒェーーーーー、怖すぎるっっっ!!!お兄さん、ちゃんと高彦に追いついて、パラシュートで救出しました!!!
画像16 なぜか技術本部長に藤井尚之が出演www エンドロールのクレジット見てたら出てきてまさか?!と思ったらホントに出てたwww
画像17 高彦救出は無事成功。しかし、安全管理対策会議は続く。犯人の要求は新陽だけは止めてはならないというものだが、万一落下するという危険に備え、新陽を止めておいたらどうか?熱を冷却した水を排水していることは犯人側にはわからないのでは?という意見が出たところで、犯人からメールが。なんとサーモグラフィーで放水口X地点と取水口Y地点の温度がチェックされていることが判明!この手は使えない…。
画像18 敦賀での反原発運動や、原発清掃作業が原因と思われる急性骨髄性白血病で亡くなった犠牲者の労災認定を求める運動を追っていた福井県警の室伏刑事(柄本明)と同捜査一課の関根刑事(落合モトキ)は、白血病で死亡した被害者の母親を取材。息子はサイガワ?サイカワ?のような名前の人物と原発清掃の仕事で知り合い、その人物からラジコン操作の楽しさを教わり、手ほどきを受けていたという情報を得る。
画像19 労災認定を求める署名から、サイガワ、サイカワの名前を探している途中、関根が「雑賀(ざっか)」と読んだ苗字。それは雑賀(さいか)と読むことから、一気に捜査は展開を見せる。とある原発清掃員への聞き込みから、雑賀は自衛隊出身者であることを突き止めた。当時錦重工業が航空自衛隊と共同で進めていたビッグBの開発プロジェクトのメンバーの中に、佐竹という男がいた。佐竹は雑賀という偽名を使っていたのだ!
画像20 自宅に追い詰めたが、爆発物を使って混乱下で逃げ出した佐竹。関根は刺されて瀕死の重傷(のちに死亡)を負いながらも、佐竹の手首に手錠をかけ、自らの手首とガッチリ繋ぐ。佐竹に引きずられるようにして行手を阻む関根、それを振り切る佐竹!この攻防がゾクゾクでめちゃくちゃ怖かった…。自らの親指を切断して手錠から手を抜いた佐竹、鬼畜そのものでした。このあと八方塞がりで諦めた佐竹は走ってきたトラックに跳ねられ即死。現場には粉々になったラジコンの遠隔操作機が。ちなみに親指切断は剛くんのアイデアで生まれたシーンだそうです。
画像21 ビッグBのプロジェクトに関わる名簿上の原口昌男という人物は、怪我で入院中であった。出社していない原口の名前を名簿に書いたのが赤嶺淳子(仲間由紀恵)である。赤嶺は三島とできていた!え?三島は事件に関与している?!少なくとも、原口の代わりに何者かがビッグBに爆発物を積んだり、細工をすることが可能であったことが分かる。
画像22 筆跡鑑定の結果、赤嶺の身元が容易に割り出される。トイレでハサミで髪をザクザク切って逃げる赤嶺淳子!
画像23 実は三島は佐竹と接点があった。佐竹は原発清掃業務を続けたおかげで体調不良に悩まされており、必要不可欠な仕事なのに忌み嫌われ、蔑ろにされる原発清掃業務や清掃員への待遇や、日本の原子力政策に日常的な憤りを感じている。急性骨髄性白血病の労災認定を求める運動の場にいた三島を脅すが…自ら原子力の技術者の身でありながら、反原発思想の子供からのイジメで息子を亡くしていた三島。複雑な胸中で、意外にも佐竹のビッグBによるテロ活動に手を貸す。ビッグBを落とすなら日本であそこしかない!と佐竹に示唆するのだった。
画像24 このままだとタイムリミットの8時間を迎えてしまう。ビッグBを新陽に墜落させることは、何としても防がなければならない。佐竹が残した遠隔操作機を解析して組み立て直し、ビッグBの下方から操作し、新陽の真上に落下しないように誘導するという極めて危険な作戦に出た湯原。とにかくやるしかない!!
画像25 身を乗り出して危険な体勢でビッグBに電波を送り続ける湯原の熱意が功を奏し、ビッグBは自衛隊機のわずか横を掠めて落下。新陽の真上の位置を外し、無事敦賀湾に落下した。ほっっっ。
画像26 時は移り、テロ事件が起きた1995年から16年が過ぎた2011年3月。そこには東日本大地震の被災地現場で働く1人の自衛隊員の姿があった。湯原の息子の高彦である。彼は幼少期の経験から、大好きな飛行機で人の命を救う仕事に就いた。原発推進派、反対派などの単純な議論ではない。日本の国防や緊急時の危機管理能力への警鐘や、今後のエネルギー政策など、真剣に考えなければならない問題が詰まった映画だと思う。原作が出版された1995年当時より、様々な震災を乗り越えながら復興を続ける今だからこそ、より一層その重さを感じる。

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