ARIAという光

Kalafina プレミアムライブ ビルボード東京
に行って来た.

(もう一ヶ月くらい前の話だけれど)


単独ファンクラブが設立して初めてのイベント。
9年間ずっと梶浦由記のファンクラブだった彼女たちが、ついに独立をした
9年もかかったのか。
いや、梶浦さんのファンクラブだったことには何の不満もないし、大手を振って歓迎しているわけでもないけれど
でも純粋に、嬉しいと思う。
単独ファンクラブの設立は、彼女たちが積み上げてきたものの成果だと思うから。

まあ、それはいいんです。
大切なのはライブの中身。

ライブにしては高いチケットを買ってくるのなんて、本当に筋金入りのファンくらいなわけで。
それに見合った最高の、濃い公演だった。
どの曲も素晴らしかったけれど個人的には、というかあの場にいた誰もが強烈に印象に残ったのはHikaruが歌い上げたARIAだと思う。


もともと今回の公演私自身はKeikoの「風の街へ」を楽しみにしていた。
初めて、お小遣いを貯めてCD屋さんに行って買ったCD。当時ツバサ・クロニクルが大好きで買ったサウンドトラック集。
その中に入っていたのが「風の街へ」だった。
大学生になって、バイトをするようになって、初めて行った梶浦さんのライブで聴いたのも「風の街へ」だった。
だから、他の曲も楽しみつつ「風の街へ」を心待ちにしていた。

でもその前に、HikaruのARIAに滅多刺しにされた。
ずっと「前みたいな声が出なくなった」って言われていたHikaru
力強さの代わりに、初期の金管楽器のような歌声が出にくくなっている……
きっと本人もずっと気にしていたこと。だからMCで「もうあの頃の声が出ない」と遠回しに言った時本当に胸が痛かった。
でも、確かに彼女はKalafinaとしてこの9年間を積み上げてきて。
喪ったものもあるけど、たくさんのものも得ていて。
「そういうものを、全部込めて歌う」って、初めての単独ファンクラブライブで、ソロで歌うって
そう言う彼女の、ピアノの前に立つ姿が少しだけ震えて見えて。
それでも彼女は光の中でマイクを手に取った。

私は、あの瞬間のことをきっと忘れない。
伸びやかな高音はないけれど、その分増した声量と情感
ARIAの意味は「独唱」
式が織を失くし、喪った半身を嘆き伽藍堂の自分だけを抱いて起き上がる歌。
それを、今の自分の表現を証明するかのように歌うHikaru
櫻田さんの激しいピアノとHikaruの力強い歌声が、物理的にも精神的にも揺さぶってくる。

あまりにも歌詞とシンクロしすぎていて
何よりもHikaruの叫びのような歌声が苦しくて、あまりにも綺麗で涙が止まらない。

持っていたはずの夢や、抱えていたはずの決意。

いつの間にか手の中はすかすかで、本当は何がしたかったのか、どこに行きたかったのかもわからなくなって
でも、ふと足元を見ると不格好でも自分の足で歩いてきた道がある。

スポットライトの中で、嘆きと決意で紡がれる旋律を聴きながら
マイクを持って凛と立つ彼女を見つめながら

よたよたと歩いてきた自分の二十数年間を、私も無駄にしたくない。
そんな風に思い、虚空に融けていく音を噛み締めた。





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